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第4章 集大成・ウィンターカップ
第259話 崩れなかった
しおりを挟むチーム メンバープロフィール
菊田 陽介
豊誠学園高校1年
206㎝125kg
誕生日:1/21
血液型:O
特徴:坊主頭の、不気味ささえ感じる強面な風貌が特徴。身長も体重も日本の高校生…どころか日本人としては既に規格外であり、テクニックこそ荒削りだが見た目通りの凄まじいパワー、そしてその巨漢に似つかわしくない反応速度とスピードを併せ持つ。唯一の弱点はフリースローの成功率(50%後半から60%程)。
既にゴール下での1対1で菊田を完璧にストップできる選手は高校どころか大学にも存在せず、既にいくつものトップリーグのチーム、大学が争奪戦に動いており、日本代表入りも既に検討され始めているという噂もある。
尚、性格は至って真面目で成績もまずまず。
特技:なんでも握りつぶす事(握力90kg)
趣味:特にない
得意教科:特にない
苦手教科:特にない
得意なプレイ:ポストプレー、ブロックショット
バスケを始めたきっかけ:中学入学時になんとなく
密かな悩み:自分の事を周囲が怖がって、話す時におずおずと話しかけられる
-----------------------------
前半終了
星垓 47
紅泉 46
山下「前半終わって互角…これは…どっちのペースのゲームなんでしょう…」
中嶋「難しいところですね…両チーム共にシュートは好調でしたし…かなりハイスコアなゲームになっている。ですが真田君が負傷離脱した事を考えれば1点でもリードで前半を終われたのは星垓としてはいいんじゃないんですかね」
村上「いや、そうとも限らんさ」
山下「と、言いますと…?」
村上「紅泉は自分達の本来のディフェンシブなスタイルではなく、あえて走りあいを挑んでハイペースな展開に持っていった。インサイドでは紅泉がやや優勢であったとはいえ、北条や新城の個人技を止めきれていなかった。個の力が強いチームはディフェンシブな展開の方が強いもんなんだ。いざという時に無理矢理打開できるからな」
山下「なるほど…」
中嶋「あえてハイペースかつ点の取り合いであれば、そこらへんは誤魔化される…僅かにリードを許したとはいえ紅泉のペースではあったと」
村上「うむ…」
(だが、何か引っかかる。星垓の唐沢監督ならばこの紅泉の狙いに気づいているだろう。それをあえて受けて立ったような…)
長谷川『前半、ご覧になってどうでしたか?』
カニンガム『まあ、いいゲームだ、というところだな』
(だから言ったのだ。何が世代最高の選手だ。確かにこれからの成長度を考えればアメリカでも通用するだろうが所詮、この程度だと)
ドノバン『しかし気になる所ですね、あの白の10番』
長谷川『と言いますと?』
ドノバン『彼は、あれが100%の力なのでしょうか?』
カニンガム『見たところ、先程の試合で見た14番と変わりは無いように見えたが…』
ドノバン『似ていませんか?NBAにおける1部のスーパースターの戦い方と。前半も力を見せるが、その選手としては当たり障りなく仕事をこなす。そして…勝負所で一気にギアをあげて試合を支配し、勝負を決める…』
カニンガム『あの選手が同じだと?』
ドノバン『長くスカウトをしてると感じるんですよ。同じ匂いの選手って物を』
長谷川『後半、果たしてその通りになるのか見物ですね』
(私としては、ミスタードノバンと同意見ですしね)
-ハーフタイム、紅泉ロッカールーム-
柳澤「ほぼ狙い通り僅差で前半終わりましたね」
2年生の柳澤、涼しい顔で橋本へ話しかける。
橋本「…」
橋本、厳しい表情。
森島「何黙ってんだよ、試合前に言ってた通りハイスコアでしっかり着いていってるじゃねえか」
3年の森島も橋本の顔を見て苦笑いしつつ宥めるように話す。
佐藤「そうだぜ橋本。ファウルこそ少し多くなったがそうでなきゃここまでついていけてないぜ?」
葛山「見かけ上はな」
佐藤も狙い通りのゲーム展開で前半を折り返したせいか、汗はかきつつもリラックスしている。
だが、葛山がそれを制す。
橋本「確かに狙い通りの展開には持ち込めた。フィジカルで相手の体力を削り、インサイドでは優位に立っていた」
雨宮「だからそう言ってるだろうよ」
橋本「だが、勢いで見ればもう10点差位付けていてもおかしくない勢いと流れだったのに実際はリードを許してるんだ」
葛山「現に、第2Q最初で一旦リードしたが、直ぐにリード奪い返されてそこから1度もリードできてねえんだ」
橋本と葛山の言葉通り、第2Q最初に若干のリードを奪って以来、攻勢を強めた星垓を前にリードを許していた。
インサイドを中心に1点差、あるいは同点に詰め寄るシーンもあった。
だが、全て弾き返された。
雨宮「んじゃあ、後半はどうすんだよ」
橋本「…決まってるだろ」
橋本、肩にかけていたタオルを手に取り、立ち上がる。
橋本「いつもの紅泉のバスケを、するだけだ」
雨宮「…成程?」
雨宮、ニヤリと笑う。
柳澤「あの北条のヤロー…後半はどうやってフロアに叩きつけてやろうか」
佐藤「腕が鳴るぜ」
橋本「ほどほどにしとけよ、お前ら2人が1番ファウル多いんだぞ」
※前半で佐藤、柳澤は3つ、雨宮も2つのファウルをおかしていた。ちなみに葛山、橋本は1回ずつである。
葛山「…」
(どうも引っかかる…北条…)
葛山、会話に少し入ったきり考え込む。
葛山(現時点でも手に負えないプレイヤーだが…どこかゆったり構えているというか、余裕があるというか)
-ハーフタイム、星垓ベンチ-
須川「真田、大丈夫か?」
真田「ああ…血は止まったし目も洗ったけど病院に行くほどじゃなかったよ」
そんな真田の右目の上には大きくガーゼが貼られている。
唐沢「さて、真田君も大丈夫そうなところで後半の話をしましょうか」
一同「「「はい!!」」」
唐沢「まず、1点差と油断できない点差とはいえ、ハイペースな展開できっちりリードを保てた事は大きい。スタメンはもちろんのこと、途中から入った中澤君、須川君はよくゲームを作ってくれました。
だが相手は前半、普段のディフェンシブで重い展開を捨て撃ち合いを挑んできました。どういう事だと思いますか?」
賢(え…?わかる?)
大樹(んな訳ないじゃん…)
武蔵(俺もわかんねぇ…)
涼真「うちを同格以上と見てのスタイル変更だと思います。ディフェンシブな展開だと個々の打開力の差が出やすいので、得点力も低くない紅泉は走り合い撃ち合いに持ち込んでそこの差を埋めようとしたのかと」
唐沢「その通りです。私は当初…紅泉はいつも通りディフェンシブでスローなロースコアゲームを狙ってくると思っていました。ですが紅泉は自分達のスタイルを捨ててまで走ってきた。その結果が今のスコアです。なので途中タイムアウトを取ってスローな展開を指示する事も考えました」
新城「でも…」
唐沢「はい。やめました」
中澤「どうしてですか?」
唐沢「ハイペースな展開で僅差のゲームが続くと、それを仕掛けられたチームは得てして崩れがちになる。第1Q終わりに言った『場合によっては2桁リードを奪われるかもしれない』と言ったのはその為です。ところが実際は全く崩れず、むしろリードして折り返した。相手が勢いに乗っており雰囲気的には負けているゲームでもおかしくないのに、です」
矢島「確かに…リードされてる気がしていたのに実際は…」
唐沢「皆さんはハイペースな中でも安定したプレイを続け、全く崩れないどころかリードすら許さなかった。全国屈指の強豪・紅泉を相手にしているのに、です」
一同「「「……」」」
一同、黙って聞いている。
唐沢「では、後半はこちらから仕掛けましょうか」
-会場-
ブーッ!!!!
後半開始まで残り5分となり、両チームの選手達がロッカールームからコートに戻ってくる。
両チーム、思い思いにアップ。
スパァッ!
怪我が懸念されている真田も、スリーを綺麗に射抜く。
福島「お、問題なさそうだな」
真田「目が見えない訳じゃないしな。まあ後半はベンチスタートだけど」
福島「で、あっちは何やってんだ…?」
涼真はというと、シュートを打つでもなくドリブルハンドリングをするでもなく、慎太郎とキャッチボールよろしくパス練習。
ビッ!
バシッ!
両者とも、片手でパスをして片手でキャッチするパス交換。
慎太郎「今のパスどう?」
涼真「ドンピシャ。手開いてるだけで吸い付くみたいな」
慎太郎「よし」
ブーッ!!!
後半開始まで残り1分となり、ユニフォーム姿となった両チームが出てくる。
星垓
11 中山 慎太郎 169㎝ 1年
4 新城 敦史 185㎝ 3年
10 北条 涼真 191㎝ 1年
8 神崎 健太 193㎝ 2年
7 髙木 悠介 199㎝ 3年
紅泉
4 橋本 輝樹 179㎝ 3年
8 葛山 丈 189㎝ 3年
6 佐藤 力哉 190㎝ 3年
10 柳澤 拓男 193㎝ 2年
5 雨宮 裕史 198㎝ 3年
村上「紅泉はメンバー変更なし、星垓は神崎が戻り、中山が入ったか」
中嶋「紅泉にも控えにいい選手はいるんですがね…選手交代をまだ1度も用いてない」
山下「星垓は適度にフレッシュなメンバーを送り込んでるんですよね、アクシデントの側面もありますが」
後半開始のスローインは星垓。
ビッ!
新城がスローインし、バックコートで慎太郎が受け取る。
慎太郎「よーっし!1本!」
ダム…
慎太郎、橋本にマークされながらゆっくりとフロントコートに入る。
橋本(1年か…カマかけてみっか)
バッ!
橋本、不意にドリブルのボールに手を伸ばす。
中澤「うお!?」
(やばい…!タイミング的にも完全に不意を突かれた!取られる!)
ダダム!
慎太郎、見越していたかのように自然なビハインドドリブルでかわす。
橋本「…ほう?」
(これで全く動じねえか…塚森や堂林でも取れはしないでもボールには触らせてくれたものを…)
ビッ!!
橋本「!?」
慎太郎、突如矢のようなパスを飛ばす。
橋本、一瞬何が起きたのかわからず。
パスを出したのに気づき、振り向くと
そこには、ゴール付近で跳躍する白の背番号10。
スパァッ!!!
2人の伝家の宝刀ともいえる超高速アリウープで涼真がリングの上から投げ下ろすようなダンク。
第3Q 残り9:48
星垓 49
紅泉 46
星垓が後半先制する。
……To be continued
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