179 / 268
第3章 最初で最後の国体
第177話 国体閉幕
しおりを挟む「ラスト2分!集中!!!」
大会5日目、第4試合の男子準決勝
第4Q 残り1:58
神奈川 76
愛知 86
開始にリードされてから神奈川は1度もリードを奪う事なく、試合終盤には10点のビハインドを負っていた。
唐沢「…」
(北条君が欠場したのは確かに痛手でした…だが…それでも勝つことはできたはずなのに…)
神奈川ベンチでは、選手達も言葉を失っている。
山下「今日の最終試合もあと少し…残すは明日の男女の決勝だけね」
中嶋「…そうですね」
中嶋、手元の資料に目を落とす。
第1試合 女子準決勝
愛知 82 - 59 愛媛
第2試合 女子準決勝
神奈川 63 - 75 岐阜
第3試合 男子準決勝
京都 89 - 80 千葉
女子の決勝は愛知 vs 岐阜の東海地区対決に。
山下「愛媛も神奈川も、インサイドで苦しい時間帯に外からの攻撃が停滞してしまったのが響いたわね」
中嶋「愛媛には170前半のセンターしかおらず、リバウンドがなかなか取れない。外には優秀な選手が多くても安定したリバウンダーがいないと機能しづらい時もあるんですよね」
山下「神奈川はその点、リバウンダーはいたんだけどね…少なくとも170後半から180に届こうというクラスの」
中嶋「神奈川はまあ…それ以前に外角の駒が少なすぎるんですよね。主力の高橋、谷口もスリーポイントは打てますが本来は高橋はスラッシャーですから。谷口だけじゃ好シューター揃いの愛知に対抗するには足りない…ここぞという場面で安定してスリーポイントを打ち込めるシューターが少ないのは愛知、岐阜との違いですね」
山下「そして男子は…夏と同じく京都(洛阪)と愛知(愛和工業大学附属)の組み合わせ、と」
中嶋「怪我をしたのに不謹慎を承知で言いますが…神奈川の北条君と愛知の武田君…全中を席巻した相模中の2大エースの対決…見たかったですね…」
山下「多分…1番楽しみにしてたのは他ならぬ本人達でしょうね…」
ブーッ!!!
試合終了
神奈川 78
愛知 88
この日神奈川は欠場した涼真に替わり阿部をスタメン起用。
主に武田をマークすることになった阿部は武田の不調にも助けられ、今大会ここまで平均29.0得点奪っている武田を11得点に抑えるという仕事をした。
そしてオフェンスでは、櫻田が36得点、4アシスト、4リバウンド、4スティール。
しかし、神奈川は負けた。
愛知は、スタメン全員と途中出場の愛和のセンター・山口の6人が2桁得点。武田が不調でも神奈川にディフェンスの的を絞らせず安定して得点。
神奈川は、櫻田以外に2桁得点は皆無。
櫻田が徹底マークを受け始め櫻田の得点が止まると、神奈川は得点力、爆発力不足に悩まされた。
安定して得点を続ける愛知の前にジリジリと点差を離され、一時は15点差まで離れた。
新城や髙木、途中から入った長崎らの得点で追い上げたものの、10点差まで詰めるのが精一杯だった。
山下「神奈川は爆発的に連続で得点して流れを持ってくる、という事ができなかったわね」
中嶋「ええ…愛知も武田君が抑えられて爆発力こそいつもよりなかったですが…全員が平均的に得点して的を絞らせず…という戦い方ができた」
コートでは神奈川、愛知の両チームが攻防を続けている。
中嶋「そんな中、爆発的に連続で得点を量産して強引に流れを持ってくるのが北条君だった…」
山下「そしてディフェンスが北条君に集中すれば、アシストもできる北条君を起点に波状攻撃を仕掛ける事もできた…」
中嶋「…」
中嶋、資料に再び目を落とす。
中嶋「点差は同じくらいですがもう1つの準決勝の方が内容的には接戦でしたね」
山下「確かに…」
中嶋「霧谷くんは田村くんのマークを物ともせず35得点したんですが…如何せん他のメンバーの質が圧倒的に京都が上でしたからね
そんな中、最後離されたとはいえ接戦に持ち込んだ千葉は凄いです」
大会6日目(最終日)日程
第1試合 女子決勝
愛知 - 岐阜
第2試合 男子決勝
京都 - 愛知
-同時刻、神奈川・星垓高等学校-
スパァッ!!!
「ナイッシュー!」
女子のこの日の練習でも、満月が絶好調。
「よーし!今日は終わり!」
留守を預かる3年生の号令で、この日も練習が終わる。
満月「あーあ、今日も疲れたなぁ」
小春「そういいつつまだピンピンしてるじゃん」
(どんだけ体力あんのよ…)
紗妃「あ、シーブリーズなくなった…満月かして」
満月「はい」
そこに、他の1年生メンバーも入ってくる。
※満月達の代の女子バスケ部の1年生は全部で8人いる。
紗妃「あ、佳奈絵、糸織里、華音、おつ~」
佳奈絵「おっつ~」
糸織里「みずっちにさっきーにこはるん!お疲れ様ですぅ!」
華音「お疲れ」
-----------------------------
メンバー紹介
依田 佳奈絵
173㎝ パワーフォワード
渡辺 糸織里
160㎝ ガード
高山 華音
164㎝ ガード/フォワード
-----------------------------
華音「てか満月最近どしたん?ゲーム形式だと前は全然入らへんかったのに」
佳奈絵「んぐんぐ…」
佳奈絵、練習終わりにパンを食べながら頷く。
満月「うーん…練習の成果…かなぁ」
糸織里「ほうほう!練習とは?」
満月「別に…居残りでシュート練習してるだけだよ」
華音「でも前はあんなクイックで打ってなかったやないの」
佳奈絵「もぐもぐ…」
糸織里「もしかして!秘密の特訓ってやつですかぁ?」
佳奈絵「(ごくんっ)ただの居残り練習がなんで秘密なのよ」←咀嚼していたパンを飲み込んだ
糸織里「例えば例えば!恋しい人とのマンツーマンでの特訓とか!」
満月「えっ」
華音「満月って彼氏いないでしょ」
佳奈絵「そんな訳ないじゃん?ねぇ、み…」
佳奈絵、固まる。
そこには、恥ずかしそうに赤く顔を染めた満月
華音「も、もしかして…」
佳奈絵「…マジでそうな訳?」
佳奈絵、2つ目のパンに手を伸ばしつつ驚く。
糸織里「おおおっ!?もしかしてこの名探偵しおりん、名推理?」
満月「の、ノーコメントっ!!」
満月、慌てて着替えを加速させる。
糸織里「気になりますっ!みずっちの愛しのお相手は誰ですか?ズ・バ・リ!誰なんですか?」
糸織里、手をマイクのように満月に向ける。
小春「糸織里その辺にしといてあげて」
女子の更衣室、練習終わりの1幕。
丁度そこに男子の方のマネージャー達も入ってくる。
春香「お疲れ様」
小春「あ、男子のマネちゃんずだ。おつ~」
糸織里「おおっ!はるるんにみほりん!お疲れ様です!」
糸織里、敬礼ポーズ。
春香(はるるん…可愛いニックネームだと思うけど慣れないなぁ…)
美保「隣で見てたよ、今日も満月ちゃん絶好調だったね」
糸織里「そうですよね!それがなんと、秘訣は恋なんだそうで!」
春香「恋…?」
糸織里「さあ白状するのです!誰なんですか?」
満月「言う訳ないでしょ!」
華音「てか糸織里、早く着替えた方がええよ。パンツ一丁で騒いでると風邪ひくよ」
糸織里「おおっと!うっかり!」
佳奈絵「もぐもぐ…」←3個目
そして、全員着替え終わり…
小春「そういえばそろそろ国体の結果出る頃じゃない?」
佳奈絵「(もぐもぐ…)そっか、確か今日準決勝だよね男女とも」
紗妃「携帯でみてみよっか」
紗妃が検索し、他の全員はそれを覗き込む。
満月(涼真君は活躍してるかな…)
小春「あ…」
そこには、男女共に準決勝で敗退した事実。
紗妃「…残念」
佳奈絵「女子はまた岐阜に負けちゃったか…もぐもぐ」←4つ目
紗妃「東海地区はほんと強いよね…」
美保「男子は…78点しか取れてない…」
満月「なんで?涼真君がいてこんなロースコア?しかも相手は武田君のいるとこでしょ?」
(こういう時絶対燃える人なのに)
春香「えっと…」
美保「もしかして満月ちゃん、知らない?」
満月「え?何を?」
春香「涼ちゃん…昨日の福井の試合で負傷交代して今日は欠場してたの」
満月「え…」
満月、絶句する。
糸織里「…?」
糸織里、キョロキョロと春香や美保、そして満月の顔を見て
ピーン!!
何かを察する。
-国体、大会6日目-
第1試合
愛知 84 - 81 岐阜
決勝は、女子は延長にもつれる激戦の末、愛知が夏に続き2冠達成。
そして男子は…
ブーッ!!!!
試合終了
京都 94
愛知 79
京都は高松の24得点を筆頭にスタメンの田村以外が全員15得点以上。
田村は武田を6得点に抑え、愛知の得点源を封じる。
愛知は武田に替わり主将・羽田が20得点を記録するも京都が愛知に付け入る隙を与えず試合終了。
京都(洛阪)も夏に続き2冠を達成。
こうして、国体は幕を閉じた。
最優秀選手賞(MVP)
高松 晃良(京都#5)
Ave 25.0得点、3.4アシスト、6.2リバウンド、1.8スティール、1.2ブロック
優秀選手賞(大会ベスト5)
高松 晃良(京都 #5)
羽田 勝美(愛知 #4)
霧谷 昭哉(千葉 #7)
髙木 悠介(神奈川 #7)
塚森 隼人(京都 #4)
山下「順当なベスト5ね。全員3年生だし」
中嶋「そうですね」
(北条君が怪我なく出ていたら…というのはたらればだな。それにしても見ていて楽しい選手なだけに心配だ)
こうして、現高校生にとって最後の少年国体は終わった。
涼真にとって最初で最後の国体は
怪我で不完全燃焼に終わった。
そして国体チームは解散し、それぞれのチームに経験を持ち帰り
高校バスケでの最後の大会、ウィンターカップに向けての過酷過ぎる戦いが始まる。
次回、新章突入。
……To be continued
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる