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第3章 最初で最後の国体
第175話 元チームメイト
しおりを挟む前半が終わり、ハーフタイム。
前半終了
神奈川 44
福井 37
-神奈川ロッカールーム-
新城「空気的には10点以上リードしてるような感じだったのにな」
中西「第2Qの後半、スローペースになったからな。流れは悪くなかったんだが」
唐沢「確かにそうですね。福井は神奈川の流れに対してスローペースで我慢して着いて行く方向に早めにシフトしてきた。元々フィジカルでは福井が勝っている。その結果最小限の点差で前半凌いだと言ってもいい」
白石「ピリオドの切り替わり…特に前後半の境目であるハーフタイムを挟むと流れがガラリと変わることもある。どうします?唐沢先生」
唐沢「そうですね…」
-福井ロッカールーム-
筒井「よしよし!7点差ならまだ全然いける!」
太田「押せ押せで神奈川が来る中、良く凌いだよホント」
三上「監督、後半はどうするんですか?」
納見監督、腕組みしてやや険しい表情。
納見「神奈川の流れにはなったが、前半は良く凌いだ。これで流れが1度リセットされる。1度スタメンに戻して仕切り直そう」
伊達「なるほど」
筒井「一旦リセットして、後半の出だしを見ると」
堂林「ふぅ…」
堂林、タオルで汗を拭う。
涼真との直接対決こそ、互いに譲らず20得点以上取っているが、チームではリードを許している。
そして涼真は、得点だけでなく既にアシストも6、リバウンドも4奪っている。
堂林(相変わらずしんどい相手だ…)
堂林、タオルで汗を丁寧に拭う。
堂林(だが、だからこそ面白い)
-記者席-
山下「さあ…後半ね」
中嶋「前半は探り合いのような形で結果互角でしたね。ここから大きく手を打つのはリスキーなだけにスタメンに戻して仕切り直す、ってのがセオリーになるかと」
山下「ふうん…そういうものなのね」
中嶋「明らかな挑戦者が先手を打って仕掛けるとかなら例外もありますが…戦力で言えば互角ですからねこの2チームは」
だが、この中嶋の言葉は後半最初にコートに立つメンバーを見て覆される事になる。
神奈川
#18 中山 慎太郎 169㎝ 星垓 1年
#4 新城 敦史 185㎝ 星垓 3年
#14 櫻田 祥人 184㎝ 桐神学園 1年
#17 北条 涼真 190㎝ 星垓 1年
#15 梅村 聡紀 198㎝ 東裁大相模 1年
福井
#5 三上 直哉 184㎝ 北陵 3年
#6 堂林 和樹 190㎝ 北陵 3年
#4 筒井 辰也 194㎝ 北陵 3年
#15 伊達 裕之 213㎝ 北陵 1年
#12 太田 弘明 206㎝ 尚志 2年
「「「何ぃ~!?」」」
「「「ガードタイプを3人だと!?」」」
伊達(全国でもサイズのある神奈川だけに、中山のとこ以外は実は小さいとは言えないけど…極端なスモールラインナップで来たな)
三上「なるほど…」
(おそらくディフェンスはゾーン…ゾーンにしてリバウンドを確実に奪い、スピード型のラインナップで速攻を狙い、センター以外が外からも決められるからハーフコートバスケットでも戦えるって事か…)
筒井(どいつもこいつもパターンが同じだな…そんな程度でうちは易々と負けたりしねえよ)
違った。
福井ボールからのスローイン後
新城「マークマン確認!」
慎太郎「5番!!」
涼真「15番!!」
梅村「12番!!」
櫻田「4番!!」
新城「6番!!!」
三上「はぁ!?」
(マンツー…!?)
太田(ミスマッチばっかじゃねえか!?)
ボールをコントロールする三上には慎太郎がピッタリとマーク。
隙あらばボールを弾こうというタイトなディフェンス。
三上(チッ…)
涼真は伊達がインサイドでポジションを取るのに対し、伊達に密着しつつボールと伊達との間に立つフルフロントのディフェンス。
正面からはボールすら持たせないというディフェンス。
ビッ!
三上、堂林にパス。
ここには新城が厳しいマーク。
堂林(なるほど…俺と三上の所はスリーを警戒してマークを厳しめに、他の3人のディフェンスはスリーを警戒しなくていいからボールさえ持たせなければあまり外には出てこないディフェンスだな)
ビッ!!
堂林、ハイポストに走り込んだ筒井にパス。
筒井、ゴールに背を向けた状態で櫻田を背負う形でボールを受ける。
キュッ!!
櫻田、すぐさま1、2歩程距離を取る。
筒井「!!!」
ビッ!
筒井、空いたのを見計らってミドルレンジからジャンプシュート。
キュキュッ!!
その瞬間、神奈川はコート上の全員がそれぞれのマークマンにスクリーンアウト。
完璧にリバウンドに備えたポジション取り。
ガン!!
バシィッ!!
梅村「っしゃあ!」
シュートの外れたリバウンドを梅村が奪う。
ビッ!
梅村、すぐさま慎太郎にボールを展開。
慎太郎「走れ!!!」
ブン!!!
慎太郎、叫ぶと同時にボールを前線に放る。
そこには、既に櫻田、涼真、新城が走っていた。
堂林「く…!」
1番コート中央に近い位置にいた堂林がディフェンスに戻るも、それとほぼ同時に神奈川メンバーがなだれ込む。
阿部「よし!3対1!」
長崎「速攻!!」
櫻田がボールに追いつき、堂林と並走するようにゴールに向かう。
堂林(何処でシュートに来る…?)
ビッ!
櫻田、斜め後方にパスを放る。
そこには、リバウンド後1歩遅れて即ゴールに向かい突進してきた梅村。
堂林(く…4人目のセカンドブレイクか!)
堂林のディフェンスは、両手を上げて梅村を見送るに留まる。
ドッガァァアアアアアア!!!!
梅村、ボースハンドでダンクを叩き込む。
「「「っしゃあ!!!」」」
盛り上がる神奈川ベンチ。
長谷川「いいぞ!ナイス速攻!」
筒井のシュートがリングに当たってから梅村のダンクまで、僅か5秒程。
福井の選手は、堂林以外ディフェンスに戻りきる事すらできなかった。
中嶋「なるほど…神奈川の狙いはこれでしたか」
山下「今の速攻の事?」
中嶋「ええ、見ててください」
ガン!!!
コートでは、福井・三上が慎太郎をかわしきれぬままに打ったシュートが外れる。
中嶋「福井で怖いのは高さを活かしたインサイドアタック、そして三上と堂林のツインシューターのスリー。神奈川のディフェンスはその2点を重点的に潰している」
山下「確かに…他の3人はスリーはおろかミドルレンジすらほぼ打たないものね。
さっき外したのも外が得意とは言えない筒井君だし…」
リバウンドは新城。
ブン!!
新城、またしてもボールを前に即投げる。
中嶋「そしてそのリバウンドを全員がスクリーンアウトする事できっちり拾い、攻撃力と機動力が優れた中山、北条、櫻田、新城の4人が速攻で反対ゴールに襲いかかる。そしてそこがダメでも…」
ビッ!
新城、チェックに来た三上をよそに後ろへパス。
バシッ!
梅村「ナイスパァス!!」
バスッ!!
梅村がレイアップを決める。
山下「なるほど!走力と身体能力に優れたセンターの梅村君が決めると」
中嶋「ええ。神奈川のこの速攻に対してついて来れるのは精々堂林君か三上君だけ。あの2人じゃ198㎝のインサイドアタックを止めるのはほぼ無理ですからね」
山下「スモールなラインナップもリバウンドで不利かと思いきや、こういう戦略もあるのね」
(まあ、全国で見れば言うほどスモールでもないんだけども)
三上(だが、あの14番の所は筒井のパワープレイでミスマッチを狙える)
ビッ!
そして、その言葉通りハイポストで筒井が櫻田を背負ってボールを受ける。
ダム!!
筒井、パワープレイ開始。
キュキュッ!!
筒井「!?」
たちまちディフェンスが収縮し、涼真、櫻田、梅村の3人に囲まれる筒井。
筒井(なら、太田と伊達が空いた!)
ダム!
筒井、ローポストの太田へバウンズパス。
キュッ!
だがここは、梅村が機動力を活かしディフェンスに戻る。
三上(チッ…そのためのラインナップか…シュートチャンスがなかなか生まれない)
神奈川のこのラインナップに対し、攻めあぐねた福井は2分経過時点で筒井に変えて光山を投入。
外の攻撃を強化してきた。
バスッ!
交代で入った光山がミドルレンジのシュートを決めて得点するも、機動力はまだ神奈川が上。
ドガァァァアアアアアア!!!!
シュートが決まり、福井の選手が戻りきる前の電光石火。
涼真の速攻からのワンハンドダンク。
アシストは、やはり慎太郎。
涼真「やっぱりな、シュート決められた後ってのは速攻が出しづらいもんだがお前なら絶対狙ってると思ったぜ」
慎太郎「そりゃ、お前なら絶対走ってると思ったしな」
そしてこの速攻にはただ1人堂林は反応していた。
だが、絶妙なタイミングで梅村がスクリーンをかけて堂林の進路を妨害。
堂林(く…)
髙木「思えば新城以外のこの4人…櫻田以外は中学の時のチームメイトだし、櫻田もジュニアオールスターの神奈川でチームメイトなんだよな」
中西「どうりで何も言葉を発しなくても連携がいいわけだ」
長崎「しかも全員、機動力と身体能力は最高レベル…」
阿部「相模の中等部が全国制覇したのも納得だな」
第3Q、神奈川はこの機動力で、高さの福井を押した。
そして、第3Qも残り2分ほど
第3Q 残り2:06
神奈川 67
福井 53
その差は14点にまで広がっていた。
……To be continued
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