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第3章 最初で最後の国体
第174話 キープレイヤーと策士
しおりを挟む第2Q、サイズアップと攻撃のオプションを増やした福井に対して神奈川はサイズダウンする交代。
神奈川
#4 新城 敦史 185㎝ 星垓 3年
#14 櫻田 祥人 184㎝ 桐神学園 1年
#17 北条 涼真 190㎝ 星垓 1年
#11 村越 悠聖 188㎝ 東裁大相模 3年
#8 中西 岳 203㎝ 湘洋大付属 3年
福井
#6 堂林 和樹 190㎝ 北陵 3年
#18 野村 勇吾 196㎝ 北陵 1年
#8 光山 遼太郎 190㎝ 北陵 2年
#15 伊達 裕之 213㎝ 北陵 1年
#12 太田 弘明 206㎝ 尚志 2年
髙木「マーク、15番な」
村越「ああ」
そして村越、新城に声を掛ける。
村越「新城!」
新城「?」
福井のサイドラインからのスローインからスタート。
神奈川の守備は、相変わらずマンツーマン。
だが、マークマンが大きく変わっている。
太田には相変わらず中西。
伊達には村越。
光山には櫻田。
野村には、涼真。
そして堂林には、新城。
山下「確かに高さの面で見ても北条君は堂林君ではなく野村君をマークするのがいいけど…」
中嶋「……」
納見「当然の選択だが…」
堂林「よし、1本だ!」
堂林がコントロールしようとしたその時
キュキュッ!!
新城、突然ディフェンスの当たりを強める。
堂林「!!」
ダム!!!
堂林、咄嗟にドライブで新城を抜く。
新城「く…!!」
新城、1歩遅れるも必死で食らいつく。
ビッ!!
堂林、そこから高速リリースでのミドルシュート。
スパァッ!!
第2Q 残り8:45
神奈川 28
福井 27
新城「チッ」
(速え…涼真はこんなのずっとマークしてたのかよ)
涼真「先輩、リスタート!」
新城、ハッとする。
新城(そうだった…!)
新城、すかさずスローイン。
涼真「1本!」
神奈川メンバー、素早くオフェンスに移る。
福井のディフェンスは、変わらずマンツーマン。
堂林は涼真に。
野村は新城に。
光山は櫻田に。
伊達は村越に。
太田は中西にそれぞれマーク。
中嶋(なるほど…)
山下「福井も北条君のところは放っておけないわね」
だが、神奈川のオフェンスを見て会場中が驚愕する。
インサイドには、太田をハイポストで背負った中西のみ。
他の4人は、あたかもガードやフォワードのようにお互いスクリーンを掛け合い走りながらチャンスを伺う。
納見(1 in 4 outだと!?)
これにより、外のプレイヤーでない伊達も外に釣り出されている。
堂林「伊達!外に出すぎるな!」
伊達「はい!」
伊達、この指示を聞き自身のマークマンである村越を気にはするものの、インサイドからあまり外には出ない。
ダム!!
涼真、堂林相手に霧谷のようなパワーでのドライブを仕掛ける。
堂林「ぐっ…」
堂林、徐々に押し込まれる。
インサイド気味に構えていた伊達もヘルプに寄ってくる。
ビッ!
涼真、迷うことなくインサイドからアウトサイドの村越にパス。
ビッ!!
受け取った村越、迷わずスリーポイントシュート。
スパァッ!!!
神奈川メンバー「「「よーし!!!」」」
第2Q 残り8:29
神奈川 31
福井 27
伊達「マジ!?」
(この人外から打ってくるの?)
堂林「チッ」
(ストレッチ4タイプの4番かよ…厄介だな
だがあそこの身長差はこっちのオフェンスでは穴になる…)
ダム…
堂林がボールを運ぶ。
マークする新城、適度にシュートにもドライブにも備えたポジション取り。
堂林「よし!1本…」
キュキュッ!!
堂林「!?」
堂林がスリーポイントライン付近でコントロールしようとした時、再び新城がプレッシャーを強める。
もはや密着するかのようなディフェンス。
堂林(く…この野郎!!)
堂林、1度左ウイングにいた光山にパス。
キュキュッ!
堂林がボールを離しても新城のプレッシャーは緩まない。
堂林(なるほどね…)
光山、シュートチャンスを伺いつつコートを見回し…
光山「ん!?」
堂林「な…!?」
神奈川のディフェンスのマッチアップが変わっている。
野村をマークするのは、村越。
そして伊達をマークするのは、涼真。
涼真はフルフロント(パスをする選手から見てパスターゲットの前に立つ事)でディフェンスしている。
堂林「チッ…次から次へと策が出てくるな」
(流石は唐沢先生、と言った所か)
中嶋「なるほど…」
山下「え?何が?」
中嶋「この交代は攻守で理に適ったものって事ですよ」
山下「全然わからないんだけど…」
中嶋「まずオフェンス。インサイドは互角の戦いをしている中西君と太田君。そしてその周りをシューターの櫻田・村越とスラッシャー(ドライブで中に切れ込むプレイをする選手)とアウトサイドシュート両方できる新城・北条で固めている。いくらサイズがあってもインサイドの選手がどうしても多い福井じゃどこかで外でのミスマッチが生じるんです」
山下「それは何となくわかってたけど…ディフェンスは?」
中嶋「まず確認しておきたいのは、福井の攻撃で怖いのはインサイドでの得点、そして堂林・光山・野村の3枚の長距離砲です。ですが神奈川との決定的な違いは、さっきも話しましたが福井のスタメンにはスラッシャーが堂林君しかいないんですよ」
山下「それが問題になるの?」
中嶋「インサイドでのシュートならともかく、アウトサイドのシュートってのはオフェンスとディフェンスの身長差のアドバンテージが出にくいんです。密着された状態じゃシューターは気持ちのいいシュートは打てない。
そして堂林君には新城君が…さっき北条君がやってたように抜かれる覚悟でプレッシャーをかけている。その証拠に堂林君がボールを持つと周りがヘルプへきっちり備えているんです。
つまり神奈川は堂林君のドライブと、スリーポイントを防ぎに行ってるんです」
山下「なるほど!」
中嶋「そして福井の納見監督もそれを打開する為に長身でアウトサイドも打ててスラッシャーとしてもプレイできるルーキーの野村君を入れてきた。同時にドリブルをする事で調子を上げる堂林君を、ボールを保持する機会の多いポイントガードで使っている。
ですが唐沢監督はそれに対抗する為にディフェンスとスリーポイントを武器にしている村越君を起用し、新城君には堂林君が気持ちよくコントロールできないようにプレッシャーを常にかけさせているんですね」
山下「東裁大相模だとあまり目立たない村越君がこの試合ではキープレイヤーになっているのね…」
中嶋「まあ、1本目からスリーポイント決めてきっちり仕事してるあたり侮れない実力を持ってるのは間違いないですね」
山下「じゃあ、マークが北条君と村越君で変わったのは…?」
中嶋「そこが唐沢先生のいやらしい所なんですが…おそらく福井の選手は村越君と伊達君の25㎝という身長差を見て攻め所だと考えたと思うんです。ですがマークしたのは最初の1回だけ。身長差があるとはいえ北条君にディフェンスされてたら…どう思います?」
山下「…」
山下、インターハイ準々決勝の星垓 vs 北陵を思い出す。
山下「いくら伊達君とはいえ、北条君相手だと一筋縄じゃ点は取れないでしょうね…」
中嶋「ディフェンスのマッチアップを変える事で福井の選手を少しでも混乱させ、焦らせる所まで考えてるんでしょうね…」
山下「なるほど…策士だわ…」
ガン!!!
結局福井のオフェンスは、野村が村越のチェックを受けながら打ったアウトサイドシュートが外れ、リバウンドを中西が抑える。
そしてここから、神奈川が畳み掛ける。
中西を除く4人が長距離砲を持っている上、ディフェンスが外に広がりスペースができると涼真と新城の2人がドライブでインサイドを切り裂く。
ディフェンスが広がっている為、ヘルプも太田しかおらずそこから中西にパスを通されてインサイドで決められる。
福井はオフェンスでも、新城の捨て身のようなディフェンスの前に期待したように堂林の調子を上げる事ができず、いいパスがいかない為長距離砲もイマイチ機能しない。
頼みのインサイドは、中西は太田と互角の戦いを繰り広げ、伊達は涼真の守備範囲の広さと身体能力の前になかなか得点を上げる事ができない。
第1Qは、エース同士の打ち合いからハイスコア気味になったが、この第2Qでは福井のオフェンスが停滞気味となった。
だが福井・納見監督も途中タイムアウトでサイズのある福井が得意なハーフコートバスケットでスローペースに持ち込んだ為、互いの攻撃回数が減りロースコアな展開に。
その為、神奈川はリードを拡げはしたが、優位に試合を進めたにしてはリードは大きくない。
ブーッ!!!!
前半終了
神奈川 44
福井 37
神奈川の7点リードで、試合を折り返す。
……To be continued
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