BUZZER OF YOUTH

Satoshi

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第0章

私とバスケットボール~ワクワクする選手

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こんにちは、私、小早川満月。















ちょっと2次元アイドルとかアニメとかのヲタクの気はあるけど、どこにでもいそうな、普通の身長(高校1年生で161㎝だから平均よりは少し高いかな?)の普通の女の子。












違うところと言ったら…少しだけ運動が得意だったことくらい。
後は手先が器用なの。












私がバスケットボールと出会ったのは小学校。しかも体育の授業。
まあでも、普通そんなもんじゃない?誰でもさ。








だからミニバスとかはやってなかった。









スパッ!!













「ええ?すごい!」












「満月ちゃん上手いね!」











満月「そ、そうかな…」










シュートだけは何故かこの時から得意だったかも。
リングって高いところに水平についてるから、放物線を描いて飛ばさないとボールは入らないと思ったから高く投げただけなんだけど…













でも、他の体育の種目と比べて特別好きだったとかそういうんじゃない。











マット運動とかの方が怪我しなくて済むからいいし、なんなら音楽の授業の方が好きだった。













で、中学に入っても私は部活に入るとかあまり興味なかった。












運動部はきつそうだし、吹奏楽なんかもきついって言うし。
文化部もさ…文化祭の前後は忙しそうだし。












だから別に部活やる気はあまりなかった。














紗妃「満月ー!バスケ部見に行かない?」











満月「見学ってこと?仮入部期間でも見に行ったら入部しなきゃみたいな空気になるじゃん」
















この子は島崎 紗妃。











私とあまり背も変わらないこの子は小学校から一緒の友達。
















小春「いいじゃん、満月めんどくさがりだからほっといたら何もしなさそうだもん」











満月「何気に失礼ね…」











このちょっと失礼な子は…山浦 小春。










背はこの3人で1番小さいけどこの子だけはミニバスからバスケやってた経験者。
中学に入って知り合った。














紗妃「いいじゃん行こうよ!どうせ暇でしょ?」











…帰ってゲームとかしたいんだけどな…













小春「さあ!しゅっぱーつ!」











満月(あ、断れない空気だこれ)
















で、部活動の見学に行ったんだけどね…














何がどうなったのか…結局入部しちゃったわけよ…
ぶっちゃけあまり覚えてない。
おおかた、誘ってくれた2人に悪いとかそういう感じだったんだと思う。私ってわりとテキトーだから。













初心者の私と紗妃、それから他にも1年生は主に体力トレーニングとか基礎のトレーニングばっか。



来る日も来る日も汗まみれ。


趣味の時間は減るし…


身体中痛いし、楽しい訳がないよね。
















でも、練習の後に飲んだ水がほんとに美味しくて。














ちょっとずつだけど動き方がわかってきて出来ることが増えるのが楽しくて。














特に、はじめてレイアップシュートできるようになった時は嬉しかったなぁ…。















2年生になると、外のシュートが得意だった私は少しずつ試合に出れるようになった。













まあでも、スタメンからはまだまだ遠かったんだけどね。まだ始めて1年そこそこでキャリアも浅いし、上手い先輩はいっぱいいた。














残念ながら夏は地区大会で負けちゃって、少し早い世代交代。












小春がキャプテン、私はなんと副キャプテンになっちゃった。











満月「いいのかな、私で」












紗妃「何言ってるの、満月は文句たれながらも努力してたし手抜かなかったじゃない。それにぶっちゃけ素人からの成長具合で言ったら1番だよ?多分」










小春「先輩が選んだんだし、私1人じゃ心細いから助けてよ、満月みーづきっ」











満月「はぁ…」




















そして代替わりしたばっかりのある日。私たちは夏の大会の県大会最終日、準決勝と決勝を見に行った。











試合日程


第1試合 女子準決勝

Aコート
湘明中 - 相模女子中

Bコート
鶴葉中 - 松浜中



第2試合 男子準決勝

Aコート
東裁大付属相模中 - 六角中

Bコート
玉麦中 - 鴨浦中



第3試合

Aコート
女子決勝

Bコート
女子3位決定戦



第4試合

Aコート
男子決勝

Bコート
男子3位決定戦















小春「Bコートの松浜って強かったよね…」







紗妃「うちらの夏を終わらせたとこだしね~」










満月「来年はあそこに立てたらいいな…」














小春「無理無理、うちなんて県大会すら出たことなんてここ数年ないんだし」












満月「今年出れなかったからって、来年出てあそこにいないとは限らないでしょ」
















ブーッ!!















そうこうしてるうちに、女子の試合が終わる。










女子の決勝は、湘明中と松浜中の組み合わせ。








続いて、男子の試合が始まる。














小春「改めて見ると、男子でここまで残ってるチームってみんな大きいね」








紗妃「ほんと…特にあの…東裁大相模なんてみんな高校生とか大人みたいな体してるじゃん」








小春「厳ついよねぇ…」
(まあ、背がない分私はそういう男子が好みだけども)











紗妃「ねえ、あれ見てよ」










満月「ん?」













紗妃が指さしたのは、東裁大相模の選手の中の1人。
背は180くらいあるだろうか。











紗妃「…イケメンじゃない?」









小春「確かに…」










良く見てみると、確かに顔は整ってる。











何と言うか、爽やか系のイケメンだ。











しかも…
















ドガァッツ!!!














小春「えええええ!?」











紗妃「ダンクしたよ!ダンク!」













中学じゃなかなかお目にかかれないダンク。











アップでとは言え、易々とダンクする身体能力もその選手は持っていた。














紗妃「いいなぁ…あんな男近くにいないかなぁ」









小春「いいよねぇ…あんな彼氏欲し~い」












満月「ちょっと!今日見に来たのは男じゃなくて試合でしょ」












小春「も~お堅いんだから」















そうこうしてるうちに、男子の準決勝が始まる。













満月「あ、あのダンクした人スタメンだね」









その選手は背番号7を付けてコートに立っていた。







小春「ねえ紗妃、パンフレット持ってなかったっけ?あの選手なんて名前なのかな?」








紗妃「どれどれ…」










満月「1桁の番号だから3年生かな?」













そこに、東裁大相模の応援団とおぼしき父兄の方々が横断幕を貼りに私たちの横に陣取る。









「あ、ごめんね、観戦の邪魔して。すぐ貼り終わるから」



満月「いえいえ、お気になさらず」



「君たちもバスケ部?」



小春「はい、もう負けちゃいましたけど」



「何年生?」



紗妃「2年生です」






すると、その後ろの方からスーツを着た背の高い男性が話しかけてきた。







「コートを見てごらん。東裁大相模の7番と8番、10番、13番も2年生だよ」










紗妃「ええ!?」










「TOSAI」と描かれたユニフォームを着てコートに立つのは4番、7番、8番、10番、13番。
あのうちの4人が2年生…!?










7番と8番は2人とも180くらいありそうで背格好も似ている。








10番は一際大きくて、190超えてるかもしれない。




13番は小さいけど、すばしっこそう。












「で、相手の9番、11番も2年生だ」



その男性は続ける。









9番は180…はないかもしれないけど少なくとも170後半くらいありそう。




11番は線が細いけど身長は…もしかしたら相模の10番より大きいかも。












小春「このコートの…半分以上が2年生…!?」








「今年の神奈川県男子の事実上の決勝がこの相模中と六角中だよ」












満月「詳しいんですね」









「いや何、昔の親友の息子が1人、出てるのでね。その子の追っかけみたいなもんだよ」













そして試合が始まると、確かに激しい試合だった。















得点、得点、また得点。












高確率で点を取り合うから両チーム100点ペースで点を取ってる。











相模の10番がゴール下で力強く点を取れば、六角の11番は技術で点を取り返す。









サウスポーである8番のペネトレイトや13番の外のシュートで相模が点を取れば、六角の9番が内に外に点を取り返す。













でも私達3人が目を奪われたのは…















ピピーッ!!















バス!!












「「きたああああ!!!」」





「またバスカン!」





「さすがエース!頼りになるぜ!」













相模中の7番だった。











この日、1人で53得点。













そのうち後半だけで32点。












周りの選手達も凄いんだけど…それが霞む程にその選手は目立ってたし際立っていたの。













なんというか…











すごく、ワクワクさせてくれる選手だった。












紗妃「あのダンクしてた選手が私達と同い年だなんて…」








小春「え~と…あった。なんて読むんだろ?きたじょう?ほくじょう?」













満月「何それ…変な名前」











結局、神奈川県大会は男子は東裁大相模、女子は松浜の優勝で幕を閉じた。

























この日の準決勝、決勝がいい刺激になった私達は次の日から死にものぐるいで練習した。

















そして3年になった時、ほんとに県の準決勝の舞台に立つことができた。














残念ながら県では4位。









でも、うちの中学の過去最高成績だった。













そして、思いもしなかった。













私が「変な名前」って言った選手と、同じ高校に入る事になるなんて。
(まあ、小春が漢字読めなかったのもあるんだけども)


















そして人生において、バスケットボールにおいて











彼と私は浅からぬ縁で繋がる事になるなんて。






















翌春-星垓高等学校









私は、入学して早々、その男の子とぶつかった。




涼真「わ、悪い!大丈夫か?」




満月「えへへ、大丈夫大丈夫」



私はゆっくり立ち上がる。あ、あの時の相模中の…



満月「あなたもバスケ部?」
(まあ、当然だろうけど。このクラススポーツクラスだし)




涼真「ああ、そうだよ。あなた『も』ってことは、君も?」





満月「うん!私はあなたと違って一般で入ったんだけど女子バスケ部だよ!スポーツクラスに友達がいて呼びにきたんだ」






私は勉強もそこそこできたし、親が文武両道でないと行きたい高校には行かせない!って事で推薦を蹴って一般で入ったんだよね。
ちなみに小春と紗妃はスポーツクラスに推薦。涼真君とは同じクラス。





涼真「そっか、君の名前は?」












満月「満月。小早川満月。よろしくね」























多分、涼真君のプレイを始めて見てワクワクしたあの日からだ。















私が、バスケットボールに本気になったのは。











そして、バスケットボールを好きになったのも。
















-それから30年あまり。












北条涼真は、引退を表明した。










私はおばさんになり、結婚し、子供も産まれた。











涼真君も、背は中学や高校の時より全然高いけど…やっぱり老けたと思う。身体も言うこときかなくなってきたって言ってた。











でも、引退試合を間近で最後まで見た時思ったんだ。















いろんな事があったけど、最後までワクワクさせてくれる。そんな選手だった。





そこは…あの時と変わらない。

















本当に…お疲れ様。









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