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第2章 インターハイ〜
第142話 有り得ない勝負
しおりを挟む涼真「行くぜ!相棒!」
慎太郎「おう!」
慎太郎、ボールを運ぶ。
第1Q 残り8:59
洛阪 7
星垓 3
キュッ!
慎太郎、トップでドリブルストップ。
そこに新城が走り込み、ハンドオフでボールを受ける。
ビッ!
新城、右ウイングの慎太郎にすぐリターン。
慎太郎「涼真!」
ボールは右コーナーの涼真へ。
そして髙木が涼真にスクリーンをかけにいく。
田村「こんな狭いところでスクリーン…?」
ダム!
涼真、構わずドライブ。
田村(くっ…)
田村、髙木のスクリーンをかわせない。
田村「スイッチ!」
バッ!!
涼真、髙木の体を障壁に使い、フリーでジャンプシュート。
スパッ!!
星垓メンバー「「よしよし!ナイッシュ!」」
涼真、田村を指差す。
涼真「田村さんから点を取らなきゃ意味がない」
田村「狭いところでスクリーンからピックアンドロール…と見せかけて普通にジャンプシュートかよ」
塚森「なんちゅう狡い手を…」
高松「いや、だが点を取られたのは事実だ。取り返すぞ」
第1Q 残り8:42
洛阪 7
星垓 5
洛阪、再びホーンズセット。
今度は先程と違い、エルボー付近には大谷と高松。
ダム!
塚森、右サイドへスライド。
ビッ!!
ウイングまで上がってきた笹本にパス。
塚森「かせ!」
塚森、ハンドオフスクリーンの形で至近距離で笹本からボールを受ける。
ビッ!
塚森、鋭いパス。
エルボーで高松が大谷のスクリーンを使い、ボールサイドカットでボールを受けた。
涼真は大谷のスクリーンに行く手を阻まれている。
髙木「スイッチ!」
高松「はい、狙い通り」
ダム!!!
ダダム!!
高松、ドリブルで髙木を翻弄。
髙木「ぐ!?」
バッ!!
高松、ユーロステップ(変則的なステップを踏むレイアップのステップ)で髙木をかわし、レイアップ。
髙木「く…」
(上手すぎる!)
バス!!
第1Q 残り8:42
洛阪 9
星垓 5
慎太郎「1本!」
リスタートパスを受け、慎太郎がボールを運ぶ。
笹本「…」
慎太郎(この人…手の出し方と距離の取り方が上手い…こっちの選択肢をどんどん奪ってきやがる)
涼真「く…」
涼真は田村のフェイスガードに捕まっている。
スクリーンを使ってもヘルプに出るスピードが早く、その間に田村に追いつかれる。
新城「慎太郎!ボール止めすぎだ!回せ!」
慎太郎、新城にパス。
新城「いくぞ!」
塚森「吠えたって何もさせねえよ」
ダム!!
新城、左ウイングで左へドライブ。
そこには神崎がスクリーンを張っていた。
だが塚森、スライドして新城を引き続きマーク。
ダム!!
新城、すかさず右へドライブ。
神崎、そのまま振り向き引き続きスクリーン。
塚森「しつけーな!」
ガシッ!!
そこに髙木のスクリーン。
塚森、この2枚のスクリーンは流石にかわせず振り切られる。
大谷「くっ…」
大谷、ヘルプに出るのを躊躇。
大谷(ヘルプに出たら髙木にパスを通されて決められちまう…)
中澤「新城!打て!」
新城、タイマーを見る。
24秒タイマーが残り2秒。
ビッ!!
新城、ミドルシュート。
だが、塚森が追いつき厳しくシュートチェックしていた。
ブーッ!!
24秒タイマーと同時に宙に浮いていたこのシュートは
ガッ!!
ポスッ!
リングの上でワンバウンド後、ゴールに吸い込まれる。
第1Q 残り8:18
洛阪 9
星垓 7
新城「あぶねー」
(楽なシュートが全然打てねえよ)
山下「洛阪はなんというか…ボールに対する執念みたいなものが凄いですよね」
村上「それが王者たる所以だろう。練習から一切の妥協を許さず、優勝候補筆頭という立場にもあぐらをかかず、勝利へ1番飢えているチームだから勝ってきていると言える」
洛阪のオフェンス。
塚森がボールを運ぶ。
先程と同じくホーンズセットでのオフェンス。
涼真(シンプルでオーソドックスなオフェンスだけど…相当自信があるみたいだな)
だが。
ガン!
笹本のミドルがリングに弾かれた。
慎太郎「助かった…」
(完璧にノーマークで崩されてたからな)
山下「初めてオフェンス失敗しましたね」
村上「シュートを外したのは厳密には失敗とは言わん。今のはたまたまシュートが外れたがホーンズセットから完璧に崩されていた」
かくして、試合は洛阪ペースで進んでいく。
洛阪はホーンズセットから確実にイージーなゴール下のシュートやアウトサイドでもほぼノーマークでのシュートチャンスをクリエイトする。
無論シュートミスはあるが、ターンオーバー(ミスでシュートに行けずボールの権利を失うこと)が全くない。
対して星垓は…
ダム…
慎太郎「くっ」
(こっちが出されたくねえところに確実に手を出して妨害してきやがる!)
新城(北陵の三上、舟栄の近藤、湘洋の平井もディフェンスは良かったが…この洛阪の2人は揃いも揃ってそれ以上だ…)
ブーッ!!
オフィシャル「タイムアウト!青!」
オフェンスが単調かつ、タフなシュートが多くなっていた星垓は第1Q半分程でタイムアウト。
ターンオーバーも既に2つ犯していた。
第1Q 残り4:49
洛阪 16
星垓 11
洛阪はタイムアウトまでに7点を3分程で積み上げた。
内訳は、高松がスクリーンで涼真を振り切り神崎を相手に決めた1対1。
塚森のドライブからのキックアウトのアシストで笹本のスリーポイント。
そして塚森のミドルシュートのミスを高松が神崎に競り勝ちタップシュートで押し込んで決めた3本である。
シュートも何本か外したが、シュートミス以外のミスらしいミスはオフェンスでは皆無だった。
対して星垓は、髙木が大谷とのゴール下での争いを制して決めた1本と、涼真が田村の厳しいチェックを避けながら打ったフェイダウェイでのミドルシュートの4点。
ノーマークで打てたシュートは洛阪とは対照的に0だった。
-観客席-
先に決勝進出を決めた愛和工業大附属の選手もこの試合を見守る。
朝岡「点差はそれ程ないけど…ここまで内容が違うかよ」
羽田「星垓はノーマークで打ててない分、洛阪がちょっとシュートタッチがいつもより少しだけ良くないのと星垓が逆にラッキーなシュートが入ってるのに救われてる印象だな」
山口「こういうのって、タイムアウトとかクォーターの切れ目で一気に離れたりするよな。そういうのって試合の流れが1度切れるから」
羽田「うん、けどそれは星垓の唐沢監督も洛阪の吉永監督もわかってるはずだ。どっちもその為に策を用意した結果、離れも詰まりもせずにしばらく進むかもな」
ブーッ!!
タイムアウトが明け、星垓のエンドスローから試合再開。
星垓はパスを回す。
洛阪のディフェンスはそれに反応し、きっちりと動く。
だが。
塚森(なんだこいつら?攻め気が無くないか?)
バシッ!
24秒タイマー残り12秒
ボールは、右コーナーの涼真へ。
周囲には誰もいない。
大谷(アイソレーション…)
笹本「馬鹿なのか…?田村さんのディフェンス力を考えたらその勝負のし方だけは有り得ないだろ…」
高松「…」
タイムアウトで唐沢監督が指示したのはこれだけ。
-北条涼真で、勝負しなさい-
髙木(確かにここでエースが点を取れれば少なくとも洛阪とイーブン位の状態には持って行きやすい。けどそれにしたって…)
-記者席-
村上「わかっているか北条…」
山下「何をですか?」
村上「この1対1、仮に北条が負けることがあればこの試合、そこで終わりだ」
山下「ええ!?」
(まだ第1Qですけど!?)
村上「後で説明してやる」
バッ!
バッ!
涼真、素早くジャブステップを幾度も踏む。
※ジャブステップ:踏み込むタイプのフェイント。ドライブやシュートの「1歩目」のフェイントに使われる。
田村、それぞれのステップに一瞬反応するも大きな隙は見せない。
新城(だめだ…こいつはフェイクにかからない…)
バッ!
涼真「!」
何度目かのジャブステップの瞬間。
涼真、重心を後ろに動かしシュート体勢に。
田村、反応して腰が浮いてしまう。
ダム!!!!!
涼真、シュートフェイクからいきなり最高速での必殺のドライブ。
田村「!!!!!!!!」
シュートフェイクに反応し重心が上に上がった田村、反応出来ず為す術なく抜かれる。
バス!!!
涼真、静かにレイアップを決める。
第1Q 残り4:29
洛阪 16
星垓 13
星垓メンバー「「「よぉーし!!!!!」」」
新城「…恐れ入ったぜ、全く」
髙木「ふぅ…とにかくこれで」
涼真「なんとか首の皮一枚、繋がったかな」
……To be continued
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