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第2章 インターハイ〜
第114話 追い風
しおりを挟む第1試合、舟栄vs星垓が白熱し
第4Qも折り返しに差し掛かろうという頃
「どっち勝ってる?」
「んー…舟栄だな」
「お、どれどれ」
第4Q 残り5:09
舟栄 65
星垓 62
「なんだ、すげえ接戦じゃん」
現在、舟栄の後半1回目のタイムアウト。
両チーム残り2回ずつタイムアウトを残している。
そんな時、次の第2試合を戦う日南学園と北陵の選手達がコート脇に降りてきた。
堂林「…」
山下「次の試合のチームも降りてきましたね」
村上「この試合と次の試合の勝者同士が明日激突するからな、気にもなるだろう」
ブーッ!!
タイムアウトが開ける。
舟栄
G #6 近藤 太一 3年 179㎝
G/F #4 岩倉 翔大 3年 187㎝
F #11 本庄 智洋 2年 190㎝
F #7 霧谷 昭哉 3年 194㎝
C #5 永島 隼人 3年 199㎝
星垓
G #11 中山 慎太郎 1年 169㎝
G #4 新城 敦史 3年 184㎝
F #10 北条 涼真 1年 187㎝
F #8 神崎 健太 2年 190㎝
C #7 髙木 悠介 3年 198㎝
「両チームともちいせえな」
堂林「お前も別にデカくはねえよ、三上」
三上「るせえ」
堂林「お、髙木だっけ?あいつがいる」
「知ってんの?」
堂林「お前みてないっけ筒井?俺とお前で行ったU-18の合宿にいたじゃん」
筒井「ふーん、そうだっけ?」
三上「そんな奴がいるとこと霧谷のいる舟栄がこんな早くに当たってるのか」
堂林「まあ、昨年のU-17の時はまだ招集されてなかったしな髙木は。
まあ確かにインサイドは強いし外でもわりとやれるし…でも髙木だけでここまで勝ち残れる訳もないしな」
(あの10番、霧谷相手でもいい動きしてやがるな。北条…か)
バス!
舟栄の攻撃を止めた星垓、涼真が霧谷のチェックをかわしながらレイアップを決める。
霧谷「遠目からのフィンガーロール…しかもブロックされないように早めに高めに浮かせてきやがった…」
続いての舟栄のオフェンス。
ダム!!
霧谷、本庄のスクリーンを使いドライブ。
神崎、ブロックに跳ぶも…
ドガアアアア!!!!
強烈なワンハンドダンク。
涼真「ぐ…」
霧谷「調子に乗るな。勝つのは俺だ」
しかし、その10秒後。
スパァッ!!
慎太郎、スリーポイントシュート。
第4Q 残り4:40
舟栄 67
星垓 65
どこにもパスを出すことなく、ドリブルをつきながら不意に打ったシュートだった。
近藤「この野郎…!」
慎太郎「離しすぎ。1対1でシュート打てないとでも?」
山下「ここでプルアップでのスリーポイント…」
村上「決して中山の得意なプレイという訳でもないんだがな。北条との相乗効果か。
とにかく北条と中山が点を取りまくっている」
このQで見ればスコアは16-19。
前半が嘘のように両チーム得点を重ねる。
だが内容はまるで違った。
涼真と慎太郎の他に髙木、新城も得点に絡んでいる星垓に対し
舟栄は霧谷以外では本庄しか複数得点を奪った者はいない。
近藤の24秒ギリギリのシュートが入った程度である。
岩倉、永島に至ってはシュートを打ってすらいない。
唐沢「ふむ…」
唐沢、オフィシャル席へ。
唐沢「タイムアウト、お願いします」
舟栄がオフェンスに向かう中、タイムアウトを請求。
佐藤「!」
(唐沢先生…何か仕掛けてくるつもりか…?)
近藤(ここのところ霧谷が調子いいから気付くのが遅れたが…霧谷と本庄以外まともなシュートを打ってない。どう組み立てるか…)
近藤、ボールキープしつつ葛藤。
バッ!
慎太郎、プレッシャーを強める。
近藤「こいつ…!」
(考える時間もよこさねえつもりか!)
慎太郎(ほらほら焦れよ、単調な攻撃を繰り返せ)
霧谷「ヘイ!」
近藤「くっ…」
やむなく霧谷へボールを出す。
霧谷「勝負だ!」
ダム!!
霧谷、上手く身体をあずけながらドライブ。
涼真、パワーで押されないように常に回り込むようなディフェンス。
近藤「やばいな」
(北条…ディフェンスでも調子が上がってきてる…)
本庄「先輩!」
霧谷、インサイドの本庄へパス。
だが、本庄も先程までのように攻め込めない。
神崎(だいぶわかってきた…もう好きにはやらせねえ!)
本庄「まずいな」
(単調な1on1だけになってる…合わせも使ってかないといけないのに)
だが、ボールがまわっていかない。
暫くパス回しが単調だったために合わせのプレイに結びついていかない。
24秒ギリギリに霧谷、身体が流れながらの長めのミドルシュート。
ガン!!
星垓メンバー「「「シュート落ちたああ!!!」」」
バシッ!
リバウンドは髙木。
髙木「っしゃあ!」
すかさず慎太郎がボールを受ける。
岩倉「戻れ!!!」
だが慎太郎、ボールをゆっくりとフロントコートに進める。
ダム…
特にディフェンスにプレッシャーをかけられた訳でもないが、8秒ギリギリ使ってのボール運び。
中澤「何でだ?速攻で逆転のチャンスもあったのに」
唐沢「いや、あれでいい」
矢島「何故です?」
唐沢「それはタイムアウトの時に」
慎太郎「じっくり!」
そう言いながら慎太郎、トップでボールをドリブルでキープしながら動かない。
山下「点の取り合いからこのタイミングで敢えてディレイドですか…」
村上「うむ…」
多くの人がこのディレイドに訝しげな顔を向ける中、舟栄メンバーの幾人かと涼真、髙木、新城、神崎は意図に気づいていた。
涼真「なるほど…」
(妙手だな慎太郎)
近藤「ここでかよ…」
(1番されて困る事かもしれねえ…)
霧谷「いやらしい事考えるぜ、あのガード」
そして24秒タイマー残り10秒
涼真が左ウイングでボールを受け、そこで慎太郎がスクリーンの要領で手渡しでボールを受ける。
それと同時に新城は左コーナー、神崎は右コーナーへ。
涼真はそのままトップへとポップする。
霧谷(スタックアウト…?だがあのガードは切れ込むタイプじゃないはず…本命は北条か?)
霧谷、涼真のマークを外さない。
慎太郎「きた!」
慎太郎、ゴール下へパス。
慎太郎が動き出してからこの間、僅かに6秒。
そこには、右コーナーから突如ダッシュし、髙木のスクリーンでゴール下でフリーになった神崎。
神崎(なるほど…受けやすいパスだ)
ドゴォッ!!!
神崎、ゴール下でワンハンドダンク。
星垓メンバー「「「きたあああああ!!!」」」
「珍しい神崎のダンクだ!」
「普段からやれよ!馬鹿野郎!」
神崎「いやあ、俺は凡人だから今みたいにタイミングとか完璧じゃないと」
第4Q 残り3:57
舟栄 67
星垓 67
神崎のダンクでついに追い付いた。
神崎「ナイスパス」
慎太郎「勢いつけるにはやっぱダンクでしょ?先輩」
神崎「いつでもできる訳じゃねえよ、無茶言うな」
残り4分弱
星垓、ついに追い付いた。
しかも、流れを持ってきて。
ブーッ!!
オフィシャル「タイムアウト!青!」
堪らず、と言っていいタイムアウト。
舟栄は攻め手を欠き始め、完全に追い詰められた。
取らざるを得なかったタイムアウト。
唐沢監督からすれば、タイムアウトを1回分節約できたのも追い風となった。
ベンチに戻るメンバーにも疲れが見える。
一方、星垓サイドは大盛り上がり。
ダンクを決めた神崎がもみくちゃにされる。
唐沢「タイムアウト向こうが取ってくれましたか。1回分節約できましたね」
唐沢監督もご満悦。
唐沢「先程中山君がディレイドを選択しましたが…相手が攻め手を欠くのを見て私もディレイドの指示を出そうとしていました。本来のペースでないスローペースになれば舟栄のオフェンスが停滞すると見込んでの事です」
中澤「なるほど…」
(中山はそれを瞬時に読み取ったってのかよ…)
唐沢「ですがこれで相手も手を打って来るでしょう。そこで次の手です。
残り4分で点差は無し。ここから勝つために指示する事は2つ。
1つは相手のイージーなシュートを打たせる機会を極力減らすこと。なのでメンバー構成はそのままに久しぶりにあれで行きましょう」
慎太郎(うわ…よりによって最後に1番疲れるディフェンスじゃん…)
唐沢「中山君、サボらないようにね」
慎太郎「ま、まさか!」
(この人心が読めたりするんだろうか)
唐沢「2つ目、オフェンスですがこれは説明の必要はないでしょう。
1番当たってる所で勝負。それだけです」
星垓メンバー「「「はい!!!」」」
唐沢「ああそうだ、中山君」
慎太郎「は、はい?」
(まだ何かあんのか…?)
-一方の舟栄ベンチ。
佐藤が現状の修正を試みる。
佐藤「ナンバープレイを使ってオフェンスのリズムを変えよう。単調なオフェンスを変えつつ霧谷以外が攻め気を持つこと」
舟栄メンバー「「「はい!」」」
佐藤「メンバーは変えない。この5人が現状のベストメンバーだ。接戦をものにできた時、チームは更に強くなるはずだ。お前達はこんな所で終わるチームではない。気持ちで絶対に負けるな」
舟栄メンバー「「「はい!!!」」」
佐藤「ディフェンスはノーファウルで守れれば言う事ないが、簡単にはいくまい。チームファウルはまだ1つ、ファウルトラブルになりそうなメンバーもいない。
フリースローを打たせることも選択肢に入れろ」
ブーッ!!!
試合が再開する。
スローインは岩倉。
ビッ
ボールを近藤に入れる。
岩倉「な!?近藤!」
近藤「え?」
ボールを受け、振り向くとそこには…
近藤「な…」
目の前にいたのは慎太郎。
近藤にべったりと張り付くようなマーク。
霧谷「何?」
(フルコート…?)
……To be continued
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