BUZZER OF YOUTH

Satoshi

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第2章 インターハイ〜

第109話 プライドよりも勝利

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第2Q終了

舟栄    20
星垓    24








山下「前半が終わっても両チーム20点台…やっぱり今日は点を入れるのが難しい日なんですかね?オフェンスの調子というか」





村上「そうでもないぞ」






村上、スコアを見せる。





村上「第2Qだけ見ればスコアは14-14。そしてフィールドゴールの確率は第1Qなんて両チーム20%切ってるのに対して、第2Qだけ見れば40%前後まで回復してる」









山下「って事は…」









村上「まあ、40%でも高いとは言えないがな。後半これからまだシュートタッチが良くなる可能性はある」








-舟栄のロッカールーム-






永島「なんなんだ今日の試合は…シュートが不調な試合ってのはどうしてもあるもんだが…ここまで極端なのは初めてだ…」







近藤「なんて言うかさ、『シュートが入らない空気』見たいなのができてたな。星垓のディフェンスは確かにいいけど、シュート打てない程じゃないし」









岩倉「それはうちのディフェンスにも言えることだけどな。」







本庄「俺もオフェンスじゃ全然役に立ってないっすからね」






近藤「なんで本庄お前…そんな恥ずかしげもなく言えんの…」







本庄「まあ、事実ですし」










岩倉「佐藤監督、どう思います?」








佐藤「俺もここまで重い試合は経験がない。情けない話だがどう動くのが正解なのかは試合が終わるまでわからん。だが星垓は積極的に動いて結果4点リードしている。こちらも仕掛けていかないと結局何も変わらないのかもしれん」








永島「メンバーを変えるのか、攻め方を変えるのか…」










岩倉「ディフェンスも相手のシュートが入ってない事に助けられてますから、よりタフなシュートを打たせるようにしていかないと」












霧谷「……」












霧谷は押し黙ったままだ。












岩倉「おい昭哉、点が取れなくてイライラしてんのはわかるけどお前は後半どうすんだよ」

※霧谷昭哉、前半8得点









霧谷「お前らは気づいてるか?そもそも試合のペースがいつもより遥かにスローで攻撃回数そのものが少ないって」









岩倉「!?」



永島「!?」



近藤「!?」
(ポイントガードやってるのに全然気づかなかった…)




本庄「そういえばいつもよりのんびりだなとは思ってましたけど、だからシュートタッチが変な感じしたんですかね」






霧谷「本庄はトランジション早いゲームの方がノリやすいからな。余計影響したってのはありえそうだ。
そもそも舟栄うちらはディフェンスを頑張ってそこから速攻を出す早いトランジションで攻めるチームだ。
まあ、もっとも星垓が意識してスローペースにしてた…訳ではなさそうだがな」






永島「なんでわかるんだよ」






霧谷「そりゃ、星垓にスローペースで進めるメリットがねえからだ。
新城も北条も、あのシューターの真田も控えガードの中山も、スタメンの中で1番機動力が下なはずの髙木でさえもどちらかと言えば早いトランジションで活きるタイプの選手だからな。星垓がオフェンスでノッてる時はラン&ガンのチームと見紛みまがう位だ」







近藤「なるほどな」







霧谷「僅差とはいえ星垓にリードを許した理由は3つある。
1つはスローペースでロースコアになった事で点差がつきづらい状況だったこと。
ハイペースだったらより点を取れる確率は上がるが得点差をつけられる可能性というリスクもある。負けたら終わりのトーナメントって事もあって硬い入り方だったのが互いにエスカレートしたんだろう」






岩倉「確かにな…変な緊張があった気はする」




近藤「先制して主導権握りたいとかいろいろ」







霧谷「2つ目はあの8番の神崎が星垓のスタメンで唯一、スローペースなゲームを苦手としていないことだ。他のスタメンより機動力は落ちるが状況判断力や先を読む力がある」







永島「インサイド攻めにくかったもんな。星垓にそこまでディフェンスがいいイメージはなかっんだけど」








霧谷「そして3つ目はその神崎を中心としたディフェンスで、星垓より舟栄うちの方が多くタフショットを打たされていたことだ」








本庄「確かに第2Qにあいつが下がってから1ピリよりは点取れてますもんね」







霧谷「だが組織的なディフェンスでならまだしも、機動力もフィジカルもパワーフォワードにしちゃ物足りない。1対1でなら俺や本庄なら穴として狙える」








近藤「霧谷をマークしてるあの北条もまだフィジカルで押されると厳しいみたいだしな」








岩倉「よし、後半はオフェンスでトランジション早く、本庄と霧谷で相手ディフェンスを崩していく。
ディフェンスは相手の出方で修正していこう」











霧谷「おい本庄」









本庄「なんすか」









霧谷「遠慮しなくていい、点を取れ」









本庄「え?」









霧谷「北条にマークされてる俺より、神崎とマッチアップしてるお前の方が点を取れる確率は高いだろ」










近藤(マジかよ…あの霧谷が)









本庄「わかりました、やります」











霧谷「頼んだぜ」
























-一方、星垓のロッカールーム-





唐沢「リードしてるとはいえ、流石に試合巧者の舟栄、強いですね」






髙木「オフェンスもディフェンスも1on1偏重なチームなのにな。ディフェンスがいいチームなのは知ってたがここまで点が取れないなんて」









新城「良くない流れが続いてイージーなシュートを落としすぎなのもあるけどな」










唐沢「でも慌てずに君達は20分乗り切れました。しかもリードして」







髙木「…」



新城「確かに」







唐沢「どんな試合にもあるでしょう。流れによる失敗というのは。シュートチャンスをいい形で作ってもリングに嫌われることもある。
その流れがたまたま20分続いてしまったと割り切ること」







星垓メンバー「「「はい!!!」」」









唐沢「後半は展開を早くしつつ、パスを回して回して確実にノーマークを作ってシュートする。そのためにもディフェンスをヘルプで複数引き付けられる選手がペネトレイトやピックアンドロールで仕掛けましょう」







唐沢、作戦ボードを取り出す。








唐沢「まず第1オプションは、1対1のマッチアップで1番イニシアチブを取っている」






唐沢、トップオブザキーの位置にマグネットを置く。









唐沢「新城君」








新城「はい」








唐沢「まず第1オプションとして新城君にトップから1対1で仕掛けてもらいます。ですがそればかりだと相手のディフェンス、近藤君も抜かれないようにディフェンスをシフトしてくる。そこで…」









唐沢、ピックアンドロールのポジションにもう1つマグネットを置く。









唐沢「永島くんに対し互角かそれ以上に渡り合っている髙木君とのピックアンドロール。これが第2オプション」







髙木「はい」







唐沢「無論舟栄相手にそれだけでは心許ない。そこで…」









唐沢、スペインピックのポジションにマグネット。









唐沢「ポップできる位置に今日唯一アウトサイドのタッチを取り戻しつつある北条君」









涼真「…はい」








唐沢「オフェンスではこの3人を軸に5人が常にディフェンスとのズレを作ってノーマークでのシュートを狙ってください。
ディフェンスはこれまで通り」








星垓メンバー「「「はい!」」」















-後半開始が迫り、両チームがコートに出てくる。











舟栄

G  #6   近藤 太一  3年 179㎝
G/F  #4   岩倉 翔大  3年 187㎝
F  #11 本庄 智洋  2年 190㎝
F  #7  霧谷 昭哉  3年 194㎝
C  #5  永島 隼人  3年 199㎝


星垓

G  #4   新城 敦史  3年 184㎝
G/F  #9   真田 直斗  2年 183㎝
F  #10 北条 涼真  1年 187㎝
F  #8  神崎 健太  2年 190㎝
C  #7  髙木 悠介  3年 198㎝











村上「スタメンに戻して来たか」




山下「仕切り直しって事ですかね」










ブーッ!!!








猶予時間がなくなり、選手がコートへ。











唐沢「北条君」







涼真「はい?」








唐沢、手招きをする。









涼真「?」








唐沢「不満そうですね」







涼真「…!」









唐沢「気持ちはわかります。霧谷君にリベンジしたいでしょう。
君はエースですからプライドもあるでしょう」








涼真「はい。でも」









唐沢「…」









涼真「負けて先輩達とのインターハイが終わってしまったら意味ないですから」





唐沢「それでいい。その気持ちがあるのなら君ならできます」









唐沢、涼真の肩に手を置く。













唐沢「勝ってきてください。霧谷君にも、試合にも」







涼真「勝ちます、絶対に」














舟栄ボールからスタート。










近藤「1本!」









後半の20分が始まる。












……To be continued
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