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第2章 インターハイ〜
第108話 涼真と慎太郎
しおりを挟む大樹のリバウンドシュートでようやくスコアが動いた。
星垓ベンチ「「よーし!!!」」
(デカい仕事したぜ!大樹!)
大樹「っしゃあ!」
それに応えるように大樹、ベンチに向かって拳を突き上げる。
慎太郎「ははっ、まだ1ゴール決めただけなのにな」
賢「ああ。だけどこの1本はデカい」
ここから少しずつではあるが、流れが星垓に傾いてくる。
大樹が岩倉をランニングプレーとフィジカルコンタクトで翻弄し、第1Q終了までに実に3本のオフェンスリバウンドを奪ったのである。
セカンドチャンスを幾度も得た星垓は、少しずつではあるがオフェンスのリズムが良くなってくる。
舟栄も残り40秒の本庄のゴール下でのバックシュート、霧谷がファウルを受けてのフリースローでスコアを動かしたが…
ピピーッ!!!
第1Q終了
舟栄 6
星垓 10
ロースコアながら星垓のリードで第1Qを終えた。
-星垓ベンチ
第1Qわずか10点ながら、最後に立て直しに成功した為雰囲気は悪くない。
唐沢「異常な始まり方をした試合ですが、最後よく立て直しました。ですが相手も手を打ってくるでしょう」
新城「どんな作戦で来るのか…」
唐沢「こういった試合で物を言うのはフィジカルコンタクトでありルーズボールであり、リバウンドです。積極性で優位に立ち、主導権を持ってきてください」
一同「「「はい!!!」」」
唐沢「とはいえ相手もこの第2Qで手を打ってくるでしょう。フィジカルコンタクトの強化のために前回の対戦の時にもプレーした12番あたりの投入があるかもしれない。
反対に調子の悪いバックコート陣に変えてシューターの投入があるかもしれない」
髙木「こっちは大樹が身体張ってくれたお陰で調子が上がってきてるけど…舟栄はどう立て直すかな」
唐沢「相手がどうくるか色々予想してても仕方ありません。どうせならせっかく上がってきたこちらの調子を更に上げる方に持って行きましょう」
ブーッ!!!
第2Qが開始する。
舟栄
G #6 近藤 太一 3年 179㎝
G/F #4 岩倉 翔大 3年 187㎝
F #11 本庄 智洋 2年 190㎝
F #7 霧谷 昭哉 3年 194㎝
C #5 永島 隼人 3年 199㎝
星垓
G #11 中山 慎太郎 1年 169㎝
G #4 新城 敦史 3年 184㎝
F #10 北条 涼真 1年 187㎝
C/F #15 小笠原 大樹 1年 187㎝
C #7 髙木 悠介 3年 198㎝
-観客席
春香「あ、慎ちゃん出てきた!」
満月「ほんとだ!がんばれー!」
優花「中山くん、ダントツで小さい…」
紗妃「確かに…普通に考えて私は現状維持かと思ってたんだけどわざわざサイズダウンしてまで中山くんを入れた理由って…」
奈津実「さあ…?」
美保「私初心者だけど…何となくわかる気がする」
「「え?」」
全員が美保を見る。
美保「…恥ずかしいよみんな…」
小春「何でわかった気がしたの?」
美保「間違ってるかもだけど…」
春香「けど…?」
美保「多分、北条くんだよ」
(頑張って、中山くん…)
山下「舟栄はメンバー変えませんね」
村上「星垓が立て直してきてるとは言え、12番では星垓のインサイド陣の機動力についていけないからな」
山下「それより星垓は11番を投入ですか…」
村上「!」
村上、何かに気付く。
村上「そういう事か…」
山下「え?なんですか?」
村上「もしかすると星垓はこのQで完全に復活するかもしれんぞ」
第2Qは星垓ボールからスタート。
新城が慎太郎にボールを入れる。
山下「って事は…」
村上「新城も点を取る方に注力するという事だろう」
慎太郎「さあ!1本!」
慎太郎には近藤がマッチアップ。
近藤(この前はいなかった奴だな…カマかけてみっか)
キュキュッ!!
近藤、急に慎太郎へのプレッシャーを強める。
だが、慎太郎は全くと言っていい程応じない。
慎太郎(さて…どうすっか…)
慎太郎、不意に涼真と目が合う。
慎太郎(やっぱエースの気持ちを乗らせた方がチームに勢いがつきそうだな)
慎太郎、涼真とアイコンタクト。
慎太郎(行くぞ)
涼真(おう)
涼真、急にその場で0からMAXへ加速しディフェンスを振り切る。
霧谷「な!?」
マークしていた霧谷、虚を突かれ遅れる。
涼真、リングに向かい跳躍の構え。
「は…!?」
舟栄メンバーは訳がわからない。
ボールは依然として慎太郎が所持している。
だが涼真はそんなのお構い無しにリングへ跳躍を始めた。
ビッ!!!
慎太郎、近藤のプレッシャーをかわしながら突如ノーモーションで高速のパスを飛ばす。
しかも、涼真とは逆サイドのリング付近へ。
これには舟栄メンバー、観客どころか味方である星垓メンバーも驚く。
中澤「なんでそっちにパスを…」
ドギャアアアアアアアアアア!!!!
受け手に優しくない上に、逆サイドのリング付近という難しい位置に放られた早すぎるパスを涼真は両手で掴み、そのままボースハンドでリバースダンク。
「「うおおおおおおおおおおおおお!?」」
「あれを決めるのか!?」
「一体どんだけ跳んでるんだ!?人間じゃねえ!」
「いやその前になんだよあのパス!?」
「早すぎるし逆サイドに放るしメチャクチャじゃねえか!なんで10番はあれに反応できるんだ!?」
敵味方関係なく困惑する中
涼真「ナイスパス、狙い通り」
慎太郎「ドンピシャだったろ?」
この2人はしてやったりという顔。
第2Q 残り9:45
舟栄 6
星垓 12
霧谷「リスタートだ、行くぞ」
霧谷が近藤にボールを入れる。
近藤「よし!1本返すぞ!」
霧谷「……」
(今のボースハンドリバースジャム…一見11番のメチャクチャなパスを北条が対応してビッグプレイにした、みんなそう見ているだろう)
※ダンクの事を俗に「ジャム」とも言います。
霧谷、ディフェンスで待ち構える涼真を見つめる。
(だが今のは…北条はブロックをかわす事を考えてリングの下を潜りリバースダンクに行ったんだ…あれなら後ろから俺が対応したとしても、ゴールのリングが邪魔でブロックできない。
つまりあのガードは北条をより活かすためのプレイができる言わば『起爆剤』という訳だ)
霧谷、第2Q最初の選手交代から一連の意図を察する。
霧谷「おもしれえ…」
霧谷、右45°でボールを受ける。
涼真「止める…!」
霧谷「残念ながらそれはできねえよ」
霧谷、最高速でドライブ。
涼真、ピッタリと並走する。
ガッ!
ゴッ!
霧谷、身体を涼真の方に上手く預ける。
涼真「ぐっ…」
(この突進力…このパワー…前より遥かに強え…)
バスッ!!
霧谷、先程はボディバランスを崩されレイアップをミスしていたが、このオフェンスでは決めきった。
霧谷「どうだ北条、俺の勝ちだ」
涼真「まだ試合半分も終わってないですよ」
岩倉「あのバカ…」
(本気で行くとか言っといてまーた1ピリは手抜いてやがったな…)
霧谷「俺はまだまだ決めるぜ北条?
今のを止められないようじゃ俺には勝てねえ」
涼真「止めますよ。そして霧谷さんにも試合にも勝つ!」
霧谷「望むところだ」
(北条もだが…あのガードにも気をつけねえとな
あのコンビ、ここからどう伸びていくのか…)
この両エースの決め合いから、両チームとも得点ペースが徐々に従来に近いペースに戻り始める。
星垓は慎太郎が巧みにボールを回し、他の4人の得点を生み出し、大樹は本庄をマークしつつオフェンスリバウンドで奮闘する。
髙木はインサイドプレイに加え、スクリーンを積極的にかけたりドライブに対しディフェンスをシールして味方のイージーバスケットを演出したり泥臭いプレイで貢献する。
新城はミドルやスリーポイントこそ不調だが、ディフェンスや合わせからのレイアップでの得点で貢献。
そして涼真は、慎太郎のアシストで得点を荒稼ぎし、遂には両チーム通じて唯一アウトサイドからシュートを決めるなど調子が上向いてきた。
舟栄は霧谷がそのパワーとスピードを存分に活かし涼真に負けじと得点を量産。
永島は得点こそ霧谷のドライブからの合わせによる2得点だけだがインサイドで身体を張りチームを鼓舞する。
岩倉は2番に似つかわしくないサイズを活かしインサイドでも奮闘。
近藤はセーフティで速攻のチャンスを潰し、オフェンスオプションが少ない中で必死でゲームを組み立てた。
本庄は霧谷に次いで得点を挙げた。
第2Q、星垓が終始リードも得点差は1度も6点差以上に開かなかった。
しかし、星垓は最初に奪ったリードを死守し、同点に追いつかせる事もなかった。
そして勝負は、後半の20分へ。
第2Q終了
舟栄 20
星垓 24
……To be continued
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