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第2章 インターハイ〜
第94話 インターハイ開幕
しおりを挟む「宣誓!我々選手一同は!…」
夏の高校総体、通称インターハイ。
秋の国民体育大会。
冬の選抜優勝大会、通称ウィンターカップ。
この3つを日本のバスケットボールにおける「高校3大タイトル」という。
その中でも1番最初に、夏の1番暑い時期に繰り広げられる熱い戦い。
それが、インターハイである。
高校総体は毎年、北信越、関東、近畿などの地区で持ち回り、競技毎にどの県で開催されるかも違うため、毎年開催県は変わる。
この年は東北インターハイ、バスケットボールは宮城での開催となる。
山下「暑ーっついですね…」
村上「そりゃ夏だしな」
山下「東北だから涼しい気がしてましたよ…」
村上「まあ、これから数日会場はもっと『熱く』なるはずだ」
そしてまもなく、各会場で開幕戦。
男女が4つの会場に別れて戦うことになる。
星垓は男バス、女バスの会場が一緒になった。
満月「全国でも男女で応援し合えるね!」
紗妃「そんなこと言って…北条くんのプレイ見たいだけでしょ」
満月「ちっ…違うし!」
(確かに見てて楽しいプレイヤーだけどさ…)
小春「ま、うちは今日試合ないからどっちにしろなんだけどね」
紗妃「でも、いつも話したりしてる人が頑張ってたらそりゃ応援したくもなるよね。それに北条くんU-16の代表候補にまでなっちゃったし」
満月「わたしたちも早くメンバー入りできるようにならないとね!
ウィンターカップは絶対ベンチ入るんだから!」
女子はこの日はもっぱら観戦だ。
翌日の対戦相手の確認の意味もある。
新城「俺達はBコートで第3試合か」
矢島「にしてもでけー体育館だな。コート3つもあるよ」
中澤「昨年のウィンターカップの時も緊張したけど…今年はそれ以上だな」
3年生は同じ大会にはもう二度と出ることは叶わないのである。無理からぬ事だろう。
髙木「でも全国までの1ヶ月でやれることはやってきた。主力それぞれに新しい武器もある。成長した俺達の実力、試す時が来たぜ」
涼真「…」
既に集中モードの涼真。
早くも口数は少ない。
ピピーッ!!!
会場では、早くも第1試合が終わったところ。
「うあああっ!!」
負けたチームの選手の選手が泣いている。
「!!」
一同、その光景に顔が強ばる。
一発勝負のトーナメント。
負ければそこで道は閉ざされる。
神崎「これが…全国大会なんだ」
唐沢「全国で勝つというのは並大抵の事ではない。己の力を信じることが出来、かつ何があっても冷静さを失わない精神的なタフさが必要になる。
いくら能力があっても、精神的に未熟では勝ち残るのは難しい。
全てをクリアしていたとしても、道が閉ざされる事はあるのだから」
唐沢、話を続ける。
唐沢「ただ、バスケットボールの強さを競うだけではない。人間としての完成度をも競うことになる。そう肝に命じて戦うことです」
一同「「「はい!!」」」
唐沢「よろしい。
そしてスタメンですが、新城くん、真田くん、北条くん、神崎くん、髙木くんの5人でいきます。
全国の初陣、思いっきり暴れてきてください」
そして、第2試合も終盤。
星垓メンバー、対戦相手の唐津東メンバーはコートサイドで次の試合に向けて待機している。
慎太郎「あと何分かで試合かぁ…全国大会の空気、久しぶりだぜ」
武蔵「俺達も試合に出れればいいな」
大樹「へへっ、俺の公式戦デビューが全国大会か。早く試合したいぜ」
涼真「………」
そして次の試合への期待か、観客席も人が多くなってきた。
山下「どんどんお客さん入ってきますね…立ち見も出始めてる」
村上「それだけ注目度も高いって事だろうな」
山下「まだ1回戦でシード校も登場してないのに」
村上「理由は1つ。北条だろう」
山下「北条くん?」
村上「昨年の全中、MVPを取った東裁大相模中等部の北条が見せた数々のスーパープレイ、相手に流れが行った時にビッグプレイを立て続けに決めて強引に流れを引き寄せる圧倒的な実力は記憶に新しい。
おそらく日本の学生のバスケに詳しい物ならば北条涼真は知ってて当たり前くらいの名前にはなっているだろう。
その北条のプレイがこんなに早くまた見れるんだ、来る人は来るだろう」
山下「なるほど…」
村上「それと、中学の時の試合を見ていて感じたんだが
北条は大舞台であればあるほど力を発揮する。ましてや自身の高校全国デビューだ。気合いも入っているだろう」
ピピーッ!!
第2試合が終了。
新城「よし!行くぞ!」
星垓メンバー「「よっしゃあ!!!」」
「あれが星垓か…」
(神奈川県予選では2勝1敗ながらあの湘洋大付属を倒して優勝してる…関東大会でもベスト4か)
「栗山!どうした?」
栗山「なんでもねえよ。それよか井上。北条ってどいつかわかる?」
井上「わかんね。まあ試合になったら背番号でわかるっしょ」
星垓はランニングシュート、唐津東はフリーシューティングで試合前のアップをこなしている。
星垓のベンチ裏には早くも父兄、ベンチ入り出来なかった選手、そしてマネージャーや女子バスケ部などによる応援席が出来上がりつつあった。
春香「こんな大勢の前で試合するのね!全国大会ってすごい…」
満月「勝ち進むともっと多くなるわよ」
美保「ええっと…」
美保はどこで買ったのか、月刊バスケットボールとパンフレットを持っている。
春香「なんでそんなの持ってるの?」
美保「そりゃ、対戦相手のことマネージャーとしてわかっとかないと」
春香「なるほど…さすが」
満月「じゃあ、これから戦う唐津東ってどんなチームなの?」
美保「ええっと…あの長身なのが背番号6の井上さん。194㎝だって。
で、キャプテンでエースが栗山さん。186㎝のオールラウンダー、持ち味はシュート力。
この2人がチームの中心だって
で、内外のバランスが取れたチームで、ハーフコートバスケットもすれば速攻もする、ほんとにバランスタイプみたい」
満月「そっか…で、その言ってたキャプテンの栗山って人が涼真くんとマッチアップするのかもね」
春香「他のスタメンは?」
美保「ええっと…月バスの予想スタメンだと後は170半ばのガード2人、稲居さんと若谷さん。
187㎝のインサイドのプレイヤーの松井さんだって」
紗妃「そんなおっきいチームじゃないんだね」
小春「あ、そろそろ始まるよ!」
ブーッ!!
試合開始まで残り1分程。
程なくして両チームのスタメンがコートに出てくる。
唐津東(ユニフォーム紫)
G #5 稲居 大吾郎 3年 175㎝
G #9 若谷 怜治 3年 176㎝
F #4 栗山 海斗 3年 186㎝
C/F #7 松井 隆人 3年 187㎝
C #6 井上 昭俊 3年 194㎝
星垓(ユニフォーム白)
G #4 新城 敦史 3年 184㎝
G/F #9 真田 直斗 2年 183㎝
F #10 北条 涼真 1年 187㎝
F #8 神崎 健太 2年 190㎝
C #7 髙木 悠介 3年 198㎝
満月「おっきいね、うちの男バスって」
春香「湘洋大付属とか東裁大相模はおっきかったもんね…冷静になってみれば星垓も大概だったのね」
ピッ!!
レフェリーが笛を鳴らす。
「「しゃーす!!!」」
ジャンプボールの配置になり、応援の声が響き出す。
涼真「……」
涼真(また、全国の舞台に帰ってきた)
レフェリーがボールを持ち、センターサークルへ。
涼真(いよいよ高校の全国デビューだ…)
レフェリーがボールを投げ上げる。
涼真(高校でも全国制覇!!)
バシィッ!!!
ジャンプボールは髙木が勝利。
ダッ!!
涼真、それを見て真っ先に走り出す。
栗山「!!」
(なんだと?)
ビッ!!!
新城から大きなパスが涼真に通る。
涼真、そのままワンマン速攻。
栗山「くっ…!」
(ドリブルしててこっちより速いってどういうことだよ…!!)
遮る者は、誰もいない。
ドッガアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
第1Q 残り9:57
唐津東 0
星垓 2
開始3秒で星垓、全国初得点。
……To be continued
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