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第17章 恋愛不毛症候群
No,210 彼の名前は卓也さん
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【これは30代前半のお話】
出会ったのは町の銭湯なんだから、おそらく彼の家も近いに違いない──とは思ったけれど、ここは僕が誘って正解なのだ。
だって、もしかしたら家族と同居なのかも知れないし、最悪奥さんがいる可能性だってある。
湯上がりに銭湯の荷物を抱えてホテルに入るのも変な感じだし、第一この住宅街にラブ・ホテルなんて無い。
──ここは僕の部屋になだれ込むのが一番自然だ。
「ここです」
ドアを開け、彼を招き入れた途端に抱きついた。
いきなりのように思えるかもしれないけれど、こう言う場合は四の五の言わずにこうした方が上手く行く。
──って、あれ?最近これと同じ事を書いたばかりのような気がする。
ああそうか、これは僕の常套手段なのかも知れない。
彼は戸惑うように顔を赤らめていたけど、股間はパツンパツンにやる気満々だった。
(自分の部屋だからここまでは僕がイニシアチブを取ったけど、ここから先は彼に任せよう)
僕は彼をベッドへ誘導し、あとは素直に身を任せた。
はにかみやさんの彼だったけど、そこから先はとっても上手だった。
(あ……意外……)
上手と言うより、相性が良いのか?
僕はとっても良い気持ち♡
(彼の事が好きになりそう……)
って、それは違っていた。
その時僕は、既に彼を好きになっていたのだ。
※──────────※
一回戦終わって、僕は彼に優しく抱かれていた。
──抱かれる?
そう、この感じは今まであまり意識した事がない。
亮ちゃんも隼人も年上だったけれど、基本=同等の付き合いをしていて、SEXにもそれは反映していたのだと思う。
僕はうっとりとしていた。
(どうしよう?会ったばかりなのに、こんなに好きになっちゃうなんて……)
重ねるけど、これを一目惚れと言うのだろう──なるほど。
「僕は、歴野理久って言います。理久って呼んで貰えますか?」
実はこう言うハッテン行為の場合、時と場所によっては「互いに名も告げずにさようなら」と言う事も大いにあり得る。
僕はそれを阻止したかった。
だってここは僕の部屋だし、とにかく彼が好きで堪らない。
絶対に次に繋げたかった。
「オレ、卓也です。理久君はいくつ?オレより下だよね?」
「はい、○○歳です」
素直に実年齢を言った。永続的な恋人を求めている僕にとって、嘘は禁物だ。
「え?もっと若く見えるよ?あ、オレは○○歳」
40代も半ばだった。当時の僕よりひと回りも上だった。
「え、卓也さんこそ若いですよ。30代半ばくらい?僕とそんなに変わらないと思った」
目をまるくして見せ、少々お世辞を含ませたのも彼に気に入られたい一心から──。
「あの銭湯にはよく行くの?」
「はい。近所だし、でかい湯船が好きだから」
「でも、あんな所でこんな事になるなんて……いつもしてる?」
「とんでもないです!あそこは普通の銭湯ですよ?こんな事、僕は初めてです」
「もちろんオレも初めてだけど、でも、あの誘い方は上手だったな。他では結構遊んでる?」
彼はあっけらかんと僕に聞いた。まるで遊んでいるのが普通なみたいに──。
僕は慌てた。
「違いますよ、卓也さんが素敵だったから、あの、ここで何とかしなくちゃどうにもならないと思って……これでも勇気を振り絞ったんです」
この時の僕には恥もてらいも無かった。とにかく、せっかく繋がった縁を大事にしたいと必死だった。
「卓也さんこそすんなり反応してくれたじゃないですか」
そう言って瞬時に思った。
(あ、そうだよ……あのスムーズな受け方だって、あれはハッテンし慣れてる証拠……?)
「卓也さん……あの……あそこは普通の銭湯だったとして……普通じゃない所では結構モテてるんじゃないですか?」
僕は軽く追求してしまった。
「ああ、ハッテン場のこと?
繁華街のサウナとか行くと、結構色々と有るよね」
悪びれた様子もなく、彼はあっさりと言い放った。
──胸がキュンとした。
(あ、隠そうともしないんだ)
聞かなきゃ良かった。僕が知りたいのはそんな事じゃなかった。
──好きな人が出来た時、その人の過去なんて知らない方が良いに決まってる。
ただ、僕だってこの歳まで色々と経験しているから、何となく卓也さんの言葉からその背景は見えてしまう。
40代も半ば……経験値が高いのは当たり前だ。何よりその、僕をメロメロにするテクニックがそれを物語ってる。
優しい人柄。はにかむ笑顔。
けれどこの人は年齢なりに遊び慣れてる──その二面性と言うかギャップと言うか、その複雑さに魅入られてしまう。
僕は卓也さんにしがみ付いて口づけをねだった。卓也さんは躊躇なく、それを優しく受け入れてくれる。
(卓也さん、僕はもう貴方に夢中です。でも、もしかして貴方にとって僕は、ただの通りすがりの、その他大勢……?)
事は二回戦に及んだ──。
僕は卓也さんを手に入れたくて、すごく頑張って彼に応えた。
出会ったのは町の銭湯なんだから、おそらく彼の家も近いに違いない──とは思ったけれど、ここは僕が誘って正解なのだ。
だって、もしかしたら家族と同居なのかも知れないし、最悪奥さんがいる可能性だってある。
湯上がりに銭湯の荷物を抱えてホテルに入るのも変な感じだし、第一この住宅街にラブ・ホテルなんて無い。
──ここは僕の部屋になだれ込むのが一番自然だ。
「ここです」
ドアを開け、彼を招き入れた途端に抱きついた。
いきなりのように思えるかもしれないけれど、こう言う場合は四の五の言わずにこうした方が上手く行く。
──って、あれ?最近これと同じ事を書いたばかりのような気がする。
ああそうか、これは僕の常套手段なのかも知れない。
彼は戸惑うように顔を赤らめていたけど、股間はパツンパツンにやる気満々だった。
(自分の部屋だからここまでは僕がイニシアチブを取ったけど、ここから先は彼に任せよう)
僕は彼をベッドへ誘導し、あとは素直に身を任せた。
はにかみやさんの彼だったけど、そこから先はとっても上手だった。
(あ……意外……)
上手と言うより、相性が良いのか?
僕はとっても良い気持ち♡
(彼の事が好きになりそう……)
って、それは違っていた。
その時僕は、既に彼を好きになっていたのだ。
※──────────※
一回戦終わって、僕は彼に優しく抱かれていた。
──抱かれる?
そう、この感じは今まであまり意識した事がない。
亮ちゃんも隼人も年上だったけれど、基本=同等の付き合いをしていて、SEXにもそれは反映していたのだと思う。
僕はうっとりとしていた。
(どうしよう?会ったばかりなのに、こんなに好きになっちゃうなんて……)
重ねるけど、これを一目惚れと言うのだろう──なるほど。
「僕は、歴野理久って言います。理久って呼んで貰えますか?」
実はこう言うハッテン行為の場合、時と場所によっては「互いに名も告げずにさようなら」と言う事も大いにあり得る。
僕はそれを阻止したかった。
だってここは僕の部屋だし、とにかく彼が好きで堪らない。
絶対に次に繋げたかった。
「オレ、卓也です。理久君はいくつ?オレより下だよね?」
「はい、○○歳です」
素直に実年齢を言った。永続的な恋人を求めている僕にとって、嘘は禁物だ。
「え?もっと若く見えるよ?あ、オレは○○歳」
40代も半ばだった。当時の僕よりひと回りも上だった。
「え、卓也さんこそ若いですよ。30代半ばくらい?僕とそんなに変わらないと思った」
目をまるくして見せ、少々お世辞を含ませたのも彼に気に入られたい一心から──。
「あの銭湯にはよく行くの?」
「はい。近所だし、でかい湯船が好きだから」
「でも、あんな所でこんな事になるなんて……いつもしてる?」
「とんでもないです!あそこは普通の銭湯ですよ?こんな事、僕は初めてです」
「もちろんオレも初めてだけど、でも、あの誘い方は上手だったな。他では結構遊んでる?」
彼はあっけらかんと僕に聞いた。まるで遊んでいるのが普通なみたいに──。
僕は慌てた。
「違いますよ、卓也さんが素敵だったから、あの、ここで何とかしなくちゃどうにもならないと思って……これでも勇気を振り絞ったんです」
この時の僕には恥もてらいも無かった。とにかく、せっかく繋がった縁を大事にしたいと必死だった。
「卓也さんこそすんなり反応してくれたじゃないですか」
そう言って瞬時に思った。
(あ、そうだよ……あのスムーズな受け方だって、あれはハッテンし慣れてる証拠……?)
「卓也さん……あの……あそこは普通の銭湯だったとして……普通じゃない所では結構モテてるんじゃないですか?」
僕は軽く追求してしまった。
「ああ、ハッテン場のこと?
繁華街のサウナとか行くと、結構色々と有るよね」
悪びれた様子もなく、彼はあっさりと言い放った。
──胸がキュンとした。
(あ、隠そうともしないんだ)
聞かなきゃ良かった。僕が知りたいのはそんな事じゃなかった。
──好きな人が出来た時、その人の過去なんて知らない方が良いに決まってる。
ただ、僕だってこの歳まで色々と経験しているから、何となく卓也さんの言葉からその背景は見えてしまう。
40代も半ば……経験値が高いのは当たり前だ。何よりその、僕をメロメロにするテクニックがそれを物語ってる。
優しい人柄。はにかむ笑顔。
けれどこの人は年齢なりに遊び慣れてる──その二面性と言うかギャップと言うか、その複雑さに魅入られてしまう。
僕は卓也さんにしがみ付いて口づけをねだった。卓也さんは躊躇なく、それを優しく受け入れてくれる。
(卓也さん、僕はもう貴方に夢中です。でも、もしかして貴方にとって僕は、ただの通りすがりの、その他大勢……?)
事は二回戦に及んだ──。
僕は卓也さんを手に入れたくて、すごく頑張って彼に応えた。
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