上 下
255 / 302
第19章 スピンオフ・夏生物語「今明かされる夏生の愛と苦悩の真実」って、おい理久ふざけんな!オレのこと勝手に書くなよ!SP

No,254 夏生、日々悶々とす

しおりを挟む
「そうなんだ。何だか思っていた感じと随分違って、大人の人達に幻滅していたところに理久が現れた。
だからね、理久に想定外のドキドキを感じさせられてね、オレ……理久を(意識するようになったんだ)」
 って──オレ、この時とばかりに気持ちを伝えた………つもりになっていた。
 でも、オレの口下手なモゴモゴが理久にはよく聞き取れなかったみたい──。

「……てか、ナッキーさっきから(オレ)になってるよね。
本来は自分のこと(オレ)って言ってた?」
「……あれ、そうか?オレ、あ、(オレ)って言ってた?本当だ。
理久が同じ鷹岡だからかなぁ?」

「そうだよね!俺も本来は(俺)だよ?鷹岡では(僕)なんて子供か、それか余程かしこまった時にしか言わないよ」
「そうだね、東京来て(僕)なんてかしこまってた……って、理久にまたはぐらかされちゃった」

「え?なにが?」

「もういいよ」

 今に始まった事じゃない。
 オレは事有るごとに(好き)をアピールしてるのに、理久は全くうわの空だ。

(オレのモジモジがダメなのかな?もっとはっきり言わなくちゃ鈍感な理久には伝わらない……)
──そしてオレ達の会話は続く。


※──────────※


 何だか時を忘れて話しまくってるうち、すっかり暗くなってた。
 もちろんメインのクラシックの話も沢山したし、オレ達の距離はすごく縮まった。
 電話番号も交換した。
──その日は一緒に夕食を楽しんで、理久が駅まで送ってくれた。

 オレ達はそこから、掛け替えのない「友達付き合い」が始まった。

 この日の事を、後に理久がこう言った。
「ナッキーの事を誤解してたなって、あの時思ったよ。
すぐに赤くなるのは怒っているんじゃなくて、恥ずかしがりやなのかも知れないなって。
口を尖らすのもそう。
目をそらすのもそう。
そう気が付いたらナッキーの全てが可愛くなったよ」
──って、そんなキザなセリフをさらりと言えるのが、これもまた姫たる由縁だな。

 オレはその頃はまだ
(理久がオレの事を好きになってくれたらいいのにな~)
 なんて夢のような事を望んでいた。
 奇跡につぐ奇跡で舞い上がっていたけど──そこから先はそう上手くは行かないって、オレは早々に現実を知る事になる。

 理久にとってオレはタイプじゃないみたい。オレの片想いはまだまだこれからも続くんだな──。

 恥ずかしがってる場合じゃない。はにかんでいても、理久の方からは来てくれない。
 オレの方からガンガン行かなくちゃ、きっと進展はないんだな。理久はいつも、キョトンとおすまししているだけなんだから──。


※──────────※


 とある奇跡的な巡り合わせで理久と一気に親しくなれた。でも、それはあくまで友情だった。
 理久にとって、オレは決して恋人に発展するタイプではないらしい。

 取り敢えず亮ちゃんとか言う恋人とは破局したようだけれど、理久は未だに未練がある様子だった。
 オレは、理久が立ち直るまで待っていなければならないかな?と思っていたのに、あれ?いつの間にかサークルの後輩が好きだと言い出した。
「サトシ、サトシ」って耳障りなくらい騒いでいるから、オレは気になってどんな奴かあれこれ聞いた。

 「あ、飲み会の時の写真があるよ♪見る?」って言うから見せて貰うと、 なるほど、理久は確かに面食いではないらしい。
 いや、それどころかオレから見たら、サトシのどこが良いのか?まるで分からない。
(え~っ、オレの方が可愛いんじゃね?)と思っても、オレの容姿なんて理久に対しては何の効力も期待出来ない。

 そのうち色々と不可解な事実が明らかになって、理久のサトシ熱はようやく治まったようだけれど、だからと言ってオレのところで落ち着く事はやはりなかった。
 今度はゴリゴリの体育会系に力ずくで押し倒されて、こりゃ手も足も出ないわ~と嘆いていたら、同時期に東宝劇場からまで変な奴を引っ掛けてきた。

 浩一と隼人だ。

 理久は二股を掛けるような精力は持ち合わせていないらしいけど、要するに優柔不断で八方美人が災いしている。
 理久は何かとオレに相談して来るけど、つまりオレの気持ちなんて関係ないんだ。


(オレは、どう頑張ったって浩一や隼人にはなれない……)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...