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第19章 スピンオフ・夏生物語「今明かされる夏生の愛と苦悩の真実」って、おい理久ふざけんな!オレのこと勝手に書くなよ!SP
No,253 夏生、同じ出身に驚く
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「僕の駅は◇◇なんだ。ナッキーは◆◆だよね?」
電車に揺られながら理久が嬉しそうに言った。
オレは思った事をそのまま言った。
「そうなんだ。あんまり近くて、本当はどうかと思ったんだけど、理久で(嬉しかった)」
「え?なに?はっきり言って?」
「理久で……良かった……」
「そうか、僕の事、そこまで嫌いじゃなかったんだね?良かった。
いつも顔を真っ赤にして怒ってるから、てっきり嫌われてるのかと思ってた」
「え?僕が理久の事を嫌いって、いつからそんな事になってるの?
僕は(理久のこと嫌いなんかじゃないよ……)」
「なんてったって、ルカはいつもご機嫌ななめだったからね。
あ、降りるよ」
と理久が誘導してくれる。
それにしても理久とこんな風に歩くのは初めてだ。しかもこんな明るい時間に。
(理久って背が高いだけじゃなく手足が長い。かっこいいな)
なんて思ってるのに、オレは嬉しそうな顔を作れない。緊張でどんどん無表情になって行く。
そうこうしてるうちに理久んちに着いた。
(わ~、本当にご近所だ……。
駅に回って電車に乗るより、直で歩いた方が早いんじゃない?)
──って驚いてるのに、オレの顔は益々もって無表情。
理久の部屋に到着してから、オレ達は今までは話さなかった色々な話に盛り上がった。
「ナッキーがクラシックを好きだなんて全然知らなかったよ」
理久が嬉しそうに言った。
「それは僕も一緒だよ。理久が同じ趣味だったなんて思いもしなかった。blue night じゃそんな話はしないもんね」
オレは本当にそう思った。雑誌の投稿欄にこんなマニアックな事を──って躊躇したけど、だからこうして距離が縮んだ。
「きっとそれだけじゃないよ。あの店でナッキーとは何度も会ってるけど、案外知らない事だらけなんだと思う。だって、互いの本名さえ知らなかったんだから」
「うん、そうだね。あれだけ会っていても、お店の常連同士って、やっぱりあれ以上には中々なれない」
「本当にそう思う。今回こうしてナッキーと改めて知り合えたの、凄くラッキーだと思う」
ホント?理久………
本当にそう思ってくれる?
オレはふと思い付いて部屋の中を見回した。
「そう言えば、理久はピアノを弾くんだよね。ここにはないの?」
「ああそれは無理だよ。音大生なら無理矢理にも運ぶんだろうけど僕はそんなんじゃないし、第一、ピアノを置くには防音や床のしっかりした鉄筋のマンションを借りなくちゃならないし、そんなの経済的に無理だよ。ピアノは鷹岡の実家でホコリを被ってるよ」
「えっ!鷹岡?!鷹岡のどこ?」
「ナッキー、鷹岡を知ってるの?……えっ?!まさか」
「うん!」
こんな偶然ってあるのか?!
いや!偶然て言うより、奇跡につぐ奇跡だ!
確かに鷹岡は東京にも近い。進学や就職で上京する人口は少なくない。
でも、まさか理久も一緒だとは!
同郷と分かったとたん、急に会話が弾むのはなぜだろう?オレ達はたくさん話して情報を交換し合った。
そしてオレは、ついつい踏み込んだ話までしてしまった。
「オレ、大人の人に幻想を抱いていたんだと思う。もっと大きくて温かくて、優しく包み込んでくれるようなイメージを勝手に想い込んでいたんだと思う。
でも、知り合った人達はみんな、そんな感じじゃなかった」
「そうだね、それはそうだよ。
ナッキーは父親のような愛を期待したのかも知れないけど、そもそも父親は息子に性愛は抱かないよね」
「うん、そこの不自然は直ぐに気付いた。オレと同年代の息子のいる人がいてね、それを知ってかなりショックだった。
もしオレのお父さんが元気でいたとしてね、もし外で息子のオレと変わらない年齢の男の子とSEXしていたら……って想像したら、吐きそうになった。生理的に無理だと思った」
「それはリアルな感情だね。当事者じゃないと想像もつかない」
「そうなんだ。何だか思っていた感じと随分違って、大人の人達に幻滅していたところに理久が現れた。
だからね、理久に想定外のドキドキを感じさせられてね、オレ……理久を(意識するようになったんだ)」
って──オレ、この時とばかりに気持ちを伝えた………つもりになっていた。
でも、オレの口下手なモゴモゴが理久にはよく聞き取れなかったみたい──。
それに、理久が実は鈍感な質なんだって、この頃には気付いていた。
なんせ生まれながらの本物の姫だからね──人の感情の機微なんて気にもしない。
これを良い言い方で鷹揚と言うのだ。
(鷹岡市は架空の地名です)
電車に揺られながら理久が嬉しそうに言った。
オレは思った事をそのまま言った。
「そうなんだ。あんまり近くて、本当はどうかと思ったんだけど、理久で(嬉しかった)」
「え?なに?はっきり言って?」
「理久で……良かった……」
「そうか、僕の事、そこまで嫌いじゃなかったんだね?良かった。
いつも顔を真っ赤にして怒ってるから、てっきり嫌われてるのかと思ってた」
「え?僕が理久の事を嫌いって、いつからそんな事になってるの?
僕は(理久のこと嫌いなんかじゃないよ……)」
「なんてったって、ルカはいつもご機嫌ななめだったからね。
あ、降りるよ」
と理久が誘導してくれる。
それにしても理久とこんな風に歩くのは初めてだ。しかもこんな明るい時間に。
(理久って背が高いだけじゃなく手足が長い。かっこいいな)
なんて思ってるのに、オレは嬉しそうな顔を作れない。緊張でどんどん無表情になって行く。
そうこうしてるうちに理久んちに着いた。
(わ~、本当にご近所だ……。
駅に回って電車に乗るより、直で歩いた方が早いんじゃない?)
──って驚いてるのに、オレの顔は益々もって無表情。
理久の部屋に到着してから、オレ達は今までは話さなかった色々な話に盛り上がった。
「ナッキーがクラシックを好きだなんて全然知らなかったよ」
理久が嬉しそうに言った。
「それは僕も一緒だよ。理久が同じ趣味だったなんて思いもしなかった。blue night じゃそんな話はしないもんね」
オレは本当にそう思った。雑誌の投稿欄にこんなマニアックな事を──って躊躇したけど、だからこうして距離が縮んだ。
「きっとそれだけじゃないよ。あの店でナッキーとは何度も会ってるけど、案外知らない事だらけなんだと思う。だって、互いの本名さえ知らなかったんだから」
「うん、そうだね。あれだけ会っていても、お店の常連同士って、やっぱりあれ以上には中々なれない」
「本当にそう思う。今回こうしてナッキーと改めて知り合えたの、凄くラッキーだと思う」
ホント?理久………
本当にそう思ってくれる?
オレはふと思い付いて部屋の中を見回した。
「そう言えば、理久はピアノを弾くんだよね。ここにはないの?」
「ああそれは無理だよ。音大生なら無理矢理にも運ぶんだろうけど僕はそんなんじゃないし、第一、ピアノを置くには防音や床のしっかりした鉄筋のマンションを借りなくちゃならないし、そんなの経済的に無理だよ。ピアノは鷹岡の実家でホコリを被ってるよ」
「えっ!鷹岡?!鷹岡のどこ?」
「ナッキー、鷹岡を知ってるの?……えっ?!まさか」
「うん!」
こんな偶然ってあるのか?!
いや!偶然て言うより、奇跡につぐ奇跡だ!
確かに鷹岡は東京にも近い。進学や就職で上京する人口は少なくない。
でも、まさか理久も一緒だとは!
同郷と分かったとたん、急に会話が弾むのはなぜだろう?オレ達はたくさん話して情報を交換し合った。
そしてオレは、ついつい踏み込んだ話までしてしまった。
「オレ、大人の人に幻想を抱いていたんだと思う。もっと大きくて温かくて、優しく包み込んでくれるようなイメージを勝手に想い込んでいたんだと思う。
でも、知り合った人達はみんな、そんな感じじゃなかった」
「そうだね、それはそうだよ。
ナッキーは父親のような愛を期待したのかも知れないけど、そもそも父親は息子に性愛は抱かないよね」
「うん、そこの不自然は直ぐに気付いた。オレと同年代の息子のいる人がいてね、それを知ってかなりショックだった。
もしオレのお父さんが元気でいたとしてね、もし外で息子のオレと変わらない年齢の男の子とSEXしていたら……って想像したら、吐きそうになった。生理的に無理だと思った」
「それはリアルな感情だね。当事者じゃないと想像もつかない」
「そうなんだ。何だか思っていた感じと随分違って、大人の人達に幻滅していたところに理久が現れた。
だからね、理久に想定外のドキドキを感じさせられてね、オレ……理久を(意識するようになったんだ)」
って──オレ、この時とばかりに気持ちを伝えた………つもりになっていた。
でも、オレの口下手なモゴモゴが理久にはよく聞き取れなかったみたい──。
それに、理久が実は鈍感な質なんだって、この頃には気付いていた。
なんせ生まれながらの本物の姫だからね──人の感情の機微なんて気にもしない。
これを良い言い方で鷹揚と言うのだ。
(鷹岡市は架空の地名です)
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