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第19章 スピンオフ・夏生物語「今明かされる夏生の愛と苦悩の真実」って、おい理久ふざけんな!オレのこと勝手に書くなよ!SP
No,245 夏生、大学で上京す
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中学校に上がっても、オレは「姫」と呼ばれ続けた。
地元の公立中学校は同じ学区の小学校からの持ち上がりだったから、そうそうあだ名が払拭される事はなかった。
ただ、言われるニュアンスは変化してきたようにも感じる。
それまでの「女顔のキモい奴」の蔑んだ意味より、「夏生君ホントにきれいな顔ね。姫ってニックネームがお似合いだわ♡」なんてニュアンスの女子も増えた気がしたけど、それでもこのあだ名は屈辱でしかなかった。
オレは男だ!
ゲイだけど姫じゃない!
※──────────※
周りが激変したのは高校に進学してからの事だった。
自分で言うのも何だけど、昔から成績だけは良かったのだ。入学したのは県内一の進学校だった。
正直、偏差値の高い進学校なんてガリ勉の集まった暗い校風なのかと、自分の事を棚に上げて思い込んでた。
でも、実際に通ってみると個性豊かで面白い奴が多かった。そして、誰もオレを「姫」と呼ばない。
オレは一転、楽しい高校生活を送る事になったのだ。
実はオレの身近にすげえ奔放な色白スケベがいて、高校の時から同級生とSEXをやりまくってたって、うっとり自慢してるアホもいるんだけど、オレは全然違って、高校時代にはゲイ的な事は何も無かった。
でも、やはりそこは蛇の道はヘビ──当時は当時なりの方法で色々とゲイ的な情報は手に入れていた。
そう言う雑誌がある事も知っていたし、男の人なら思い当たるだろうけど、普通に生きていてもそう言う世界への扉はあちこちに見受けられる。
ただ、それに気付くか気付かないか、そこに飛び込むか飛び込まないかの違いだけだ。
でも、決して裕福ではない母子家庭の環境で、部屋も兄と共用で何かとプライバシーも無く、このまま家族と暮らしていれば自分の性的指向を封印するしかなかった。それはとても生きづらい事だ。
だからオレは、全てを東京行きに賭けたのだ。
幸いオレは次男だ。そしてゲイとして自由に生きて行くには、東京で暮らすのが一番だと考えた。
そのためには東京の大学に進み東京で就職しようと、それを目標に高校時代はガリ勉した。
高校時代を惚れた腫れたでぷらぷらしていた色白スケベとはそこが違う。
──お察しの通り理久のことだ。
そして頑張った甲斐あって、第一志望の東京の大学に合格した。そして上京して、念願の一人暮らしが始まったのだ。
でも母親には無理をさせてしまったので、出来るだけバイトしてその負担を軽くしようと頑張った。
そして同時に出会いを求めた。当時主流だったゲイ雑誌の文通欄も、一人暮らしになってからは誰の目も気にすること無く利用できるようなった。
そして実情を知った。
ゲイの出会いのなんと安直なことか──。
上京してわずか数カ月のうちに、オレは想像以上に沢山の人と出会い、経験し、その縁はことごとく消滅した。
ゲイの出会いは思った以上に多いけれど、その縁は刹那的でとても希薄なことも身に沁みた。
元々年上の大人好みなオレだったから、どうしても相手に父親的な愛情を求めてしまう。
でも、出会う大人達は誰一人として、オレの求める愛を与えてはくれなかった。
それどころかここに至って、またもや「姫」が復活してしまった。いや、実際にオレを姫と呼ぶ訳ではない。そんなあだ名を知る人はいない。
ただ、出会う人出会う人──その殆どがオレを「姫」扱いするのだ。
「美少年」
「顔がきれい」
「女装が似合いそう」
──と、それはもう、オレにとっては耳を塞ぎたくなる呪いの言葉でしかないのだ。
何よりそう言う目で見られるのが嫌だったし、「姫」扱いされるのが不本意だった。
確かにオレは、初めは年配の人に父親のような愛を求めたのかも知れない。
でも、実際はそううまくは行かないと現実を知ったのも早かった。
──ある時、ちょっと付き合った人にオレと同年代の息子がいる事を知ってしまった。
理屈ではない。生理的に無理だと感じた。
地元の公立中学校は同じ学区の小学校からの持ち上がりだったから、そうそうあだ名が払拭される事はなかった。
ただ、言われるニュアンスは変化してきたようにも感じる。
それまでの「女顔のキモい奴」の蔑んだ意味より、「夏生君ホントにきれいな顔ね。姫ってニックネームがお似合いだわ♡」なんてニュアンスの女子も増えた気がしたけど、それでもこのあだ名は屈辱でしかなかった。
オレは男だ!
ゲイだけど姫じゃない!
※──────────※
周りが激変したのは高校に進学してからの事だった。
自分で言うのも何だけど、昔から成績だけは良かったのだ。入学したのは県内一の進学校だった。
正直、偏差値の高い進学校なんてガリ勉の集まった暗い校風なのかと、自分の事を棚に上げて思い込んでた。
でも、実際に通ってみると個性豊かで面白い奴が多かった。そして、誰もオレを「姫」と呼ばない。
オレは一転、楽しい高校生活を送る事になったのだ。
実はオレの身近にすげえ奔放な色白スケベがいて、高校の時から同級生とSEXをやりまくってたって、うっとり自慢してるアホもいるんだけど、オレは全然違って、高校時代にはゲイ的な事は何も無かった。
でも、やはりそこは蛇の道はヘビ──当時は当時なりの方法で色々とゲイ的な情報は手に入れていた。
そう言う雑誌がある事も知っていたし、男の人なら思い当たるだろうけど、普通に生きていてもそう言う世界への扉はあちこちに見受けられる。
ただ、それに気付くか気付かないか、そこに飛び込むか飛び込まないかの違いだけだ。
でも、決して裕福ではない母子家庭の環境で、部屋も兄と共用で何かとプライバシーも無く、このまま家族と暮らしていれば自分の性的指向を封印するしかなかった。それはとても生きづらい事だ。
だからオレは、全てを東京行きに賭けたのだ。
幸いオレは次男だ。そしてゲイとして自由に生きて行くには、東京で暮らすのが一番だと考えた。
そのためには東京の大学に進み東京で就職しようと、それを目標に高校時代はガリ勉した。
高校時代を惚れた腫れたでぷらぷらしていた色白スケベとはそこが違う。
──お察しの通り理久のことだ。
そして頑張った甲斐あって、第一志望の東京の大学に合格した。そして上京して、念願の一人暮らしが始まったのだ。
でも母親には無理をさせてしまったので、出来るだけバイトしてその負担を軽くしようと頑張った。
そして同時に出会いを求めた。当時主流だったゲイ雑誌の文通欄も、一人暮らしになってからは誰の目も気にすること無く利用できるようなった。
そして実情を知った。
ゲイの出会いのなんと安直なことか──。
上京してわずか数カ月のうちに、オレは想像以上に沢山の人と出会い、経験し、その縁はことごとく消滅した。
ゲイの出会いは思った以上に多いけれど、その縁は刹那的でとても希薄なことも身に沁みた。
元々年上の大人好みなオレだったから、どうしても相手に父親的な愛情を求めてしまう。
でも、出会う大人達は誰一人として、オレの求める愛を与えてはくれなかった。
それどころかここに至って、またもや「姫」が復活してしまった。いや、実際にオレを姫と呼ぶ訳ではない。そんなあだ名を知る人はいない。
ただ、出会う人出会う人──その殆どがオレを「姫」扱いするのだ。
「美少年」
「顔がきれい」
「女装が似合いそう」
──と、それはもう、オレにとっては耳を塞ぎたくなる呪いの言葉でしかないのだ。
何よりそう言う目で見られるのが嫌だったし、「姫」扱いされるのが不本意だった。
確かにオレは、初めは年配の人に父親のような愛を求めたのかも知れない。
でも、実際はそううまくは行かないと現実を知ったのも早かった。
──ある時、ちょっと付き合った人にオレと同年代の息子がいる事を知ってしまった。
理屈ではない。生理的に無理だと感じた。
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