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第10章 偶然で幸運な巡り合せ

No,111 えっ?まさかの同郷?

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【これは大学3年のお話】

「へ~きれいにしてるんだね」
「きれいにしてるんじゃなくて、片付けるのが面倒だから散らかさないようにしてるだけ。結構ずぼらなんだ」
「そうなのかな。それをきれいにしてるって言うんじゃないかな」

 メインはフローリングなんだけど、カーペットを敷いて地べたで暮らしてる。ソファー置くほど広くはない。テーブルも小さい。
「そこに座って?」
 僕はナッキーに着座を勧めた。

 僕が波奈はなから引き継いだ部屋はモルタルのアパートだけど、ちょっと広めだった。なんせ一年間とはいえ二人で住めたくらいの間取りだ。
 入り口から直ぐにキッチンと言う間取りは良くあるけれど、そこには二人がけのテーブルとイスが置ける。
 トイレとバスも別々だし、洗濯機を置ける脱衣所に洗面台もある。

 メインは七畳分のフローリングで、引き戸で仕切られた四畳分の小部屋もある。その小部屋にはベッドを置いて、元々波奈の寝室だった。
 僕はメインの方で布団を上げ下ろしして一年間暮らしたけれど、今は波奈のベッドがそのまま僕のベッドになっている。
 テレビも冷蔵庫も洗濯機も、全部そのまま波奈のを貰った。やっぱ一年間は一緒で良かった。経済的で、親もきっと助かった。

「ナッキーがクラシックを好きだなんて全然知らなかったよ」
「それは僕も一緒だよ。理久が同じ趣味だったなんて、blue night じゃそんな話はしないもんね」

「きっとそれだけじゃないよ。あの店では何度も会ってるけど案外知らない事だらけなんだと思う。だって、互いの本名さえ知らなかったんだから」
「うん、そうだね。あれだけ会っていても、お店の常連同士って、やっぱりあれ以上には中々なれない」
「本当にそう思う。今回こうしてナッキーと改めて知り合えたこと、すごく良かったと思う」
「そう言えば、理久はピアノを弾くんだよね。ここにはないの?」

「ああそれは無理だよ。音大生なら無理矢理にも運ぶんだろうけど僕はそんなんじゃないし、第一、ピアノを置くには防音や床のしっかりした鉄筋のマンションを借りなくちゃならないし、そんなの経済的に無理だよ。ピアノは鷹岡の実家でホコリを被ってるよ」
「えっ!鷹岡?鷹岡のどこ?!」

「ナッキー、鷹岡を知ってるの?」
「そりゃ良~く知ってる!」
「えっ?!まさか!」
「うん!!」

 確かに鷹岡は東京圏にも近い。進学や就職で上京する人口は少なくない。僕も東京に住んで数年にもなると、同郷の人とも少なからず顔を会わせた。

 でも、まさかナッキーも一緒だとは!

 同郷と分かったとたん、急に会話が弾むのはなぜだろう?
 僕達はたくさん話して情報を交換し合った。


※──────────※


 ここからはナッキーの話し。
 ナッキーは母親と兄との三人家族だ。兄はナッキーより3歳上で、今年地元鷹岡の大学を卒業し、就職した。

(ああそうか、亮ちゃんと同級生だ)

 仮に小学生で並べてみると
6年生=波奈
5年生=亮ちゃん&夏生の兄
4年生=タッチ
3年生=理久
2年生=夏生
──となる。

 見事な同年代だ。




【鷹岡市は架空の地名です】


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