私小説「僕のこの恋は何色？」～ゲイとして生きる僕の道のり

第10章 偶然で幸運な巡り合せ

No,108 春と夏が一緒の名前♪

【これは大学3年のお話】

　正直、こんな事は初めてだったからこれで良いのかどうか不安だった。

　何となく、どこの誰とも分からぬ相手に電話番号を知らせるのは恐くて、そこはうやむやにした。
　それに目印のところで「僕は金髪なので直ぐに分かると思います」と書くのも、何だかヤンキーと思われそうで書くのをやめた。

　いきなり待合せ場所を指定したのは早急だったかな？
　でも、日時は向こうにまかせたし……
──なんてくよくよ考えていたら、案外返事は早かった。


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（投稿者からの返信文）

　はじめまして。クラシック音楽が好きだと投稿しました。返信ありがとうございます。
　19歳と書きましたが、僕も誕生日前の大学２年です。もう直ぐ20歳になります。そうしたら学年が違っても、歴野さんとは一時的に同い年になりますね。

　歴野さんはピアノをやっているのですか？僕も子供の頃に少し習いましたが、あまり上手にはなれませんでした。
　交響曲が好きです。
　歴野さんが好きなブラームスなら３番、４番。チャイコフスキーなら４番、５番が好きです。

　僕も土日の昼間ならいつでもOKです。早く会いたいです。
　○月○日○時でどうですか？
　僕はグリーンのストライプのシャツを着て行きます。

歴野理久様

春川夏生
名前は（なつき）と読みます。


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　それは凄く好感の持てる文章だった。
　まず僕のピアノに触れてくれた。
　さらに交響曲が好きなら他の作曲家だって色々いるのに、あえて僕が好きだと言ったブラームスとチャイコフスキーに触れてくれた。
　ちゃんと僕の手紙を把握してくれて、配慮のある返信を書ける人だと思った。

　それにしても「春川はるかわ夏生なつき」とは、氏名の中にふたつも季節が入っている。彩りの良い名前だと僕は思った。
　が、そこには触れない。恐らく本人にしたら、今まで散々いじられているかも知れないし、触らぬ神に祟りなしと言うし……。

　○月○日なら十分に余裕がある。
　僕は即行、返信した。


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（僕からの返信文）

　取り急ぎお返事だけで失礼します。
　○月○日○時で大丈夫です。
　春川さんはグリーンのストライプのシャツですね。僕はブルーのギンガム・チェックのシャツです。
　身長183㎝で細身です。分かりやすいと思います。
　会えるの楽しみです。よろしくお願いします。

春川はるかわ夏生なつき様

歴野れきの理久りく


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　何だかドキドキしてきた。

　さあ、会うのが楽しみ♪

（春川夏生か……僕より一学年下なんだよな。どんな人だろう？）

　勝手に良い事ばかり想像してしまう。
　いけない！いけない！
　ハードルを上げ過ぎると大変だよって、ケンちゃんも言っていたっけ！

　僕はワクワクと胸ふくらませて、その日を待った──。