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第4章ファーストキスはいつ?
No,48 初めて知ったゲイ雑誌
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【これは高校1年のお話】
「あ、そうだ!」
ジュンが引き出しの奥から一冊の雑誌を取り出して俺に渡した。
「理久、こう言う雑誌があるって、知ってる?」
そんな雑誌を、俺は全く知らなかった。
「何これ?知らないよ?」
──それは当時刊行されていた、いわゆる「ゲイ雑誌」と言われる類いの物だった。
紙質はいい。装丁も嫌らしくなく、いわゆるエロ本には見えなかった。ただ、表紙には妙に艶かしい青年のイラストがあった。
ジュンは手早く紙袋に入れた。
「これ、同性愛の雑誌なんだ」
「え?そんなのがあるの?」
「毎月こっそり買ってる。親に見つかると大変だから溜め込まないようにしてるんだ。これはもう読んだから理久にあげる」
「……………」
確かに話の流れではあったけれど、いきなりのこれには驚いた。
「いらない」とか、「興味が無い」とか言えなかった。正直、衝撃より好奇心が勝った。
「絶対、誰にも見つからないようにね!」
「…………あ、ああ」
としか言えなかった。
実は一世を風靡したゲイ雑誌も、現在ではその殆どが廃刊となった。その役割の全てをネットに奪われる結果となったためだ。
当時のゲイ雑誌の内容など、現在のネット上の情報量に比べればまるで太刀打ち出来るものではない。
でも70年代から90年代のゲイ雑誌の内容を鑑みるに、現在のただハードなだけのポルノとは比ぶべくもなく、もっとアートやカルチャーを感じさせる内容も多かったと断言できる。
とにかく俺は帰宅してから部屋に閉じ籠り、その雑誌を隅から隅までなめるように読み尽くした。
巻頭のカラー・グラビア=現在のネット上の過激な画像と比べればまるで芸術写真だ。ただ当時の俺にしたら、男性のヌードモデルの存在自体が驚きだった。
小説。エッセイ。劇画。新宿二丁目のルポ。広告。はては業界のニュース。世界の情勢。ゲイ開放の思想。
そして何より驚いたのは、読者の投稿欄と膨大な量の文通欄。
=ようするに今で言う「出会い系」だ。当時はゲイ雑誌を介しての「文通」と言う、極めてアナログな方法ではあったけれど、ゲイのコミュニケーション・ツールとして画期的、かつ貴重な方法だった。
俺は、このたった一冊で「ゲイの世界」を一気に知ってしまった。男同士でどんな行為が行われるかも、事細かく知ってしまった。
そして、今でもあの時の戸惑いを自己分析出来てはいない。
──雑誌で知ったSEXの情報を、全く圭と自分に当てはめて想像する事が出来ないのだ。
圭のことは好きだ。間違いなく大好きだ。
でも、雑誌で知ったそう言う行為を圭とするのか?と思うと、全く現実的な気がしない。
俺が圭に抱いている想いは、
本当に同性愛なのか?と疑ってしまった程だ。
そして何よりショックだったのは、男同士のSEXの実態を目の当たりにした時、俺は自分が圭に対して抱いているこの切実な想いを、何だか得たいの知れない悪意によって滅茶苦茶に汚されたような気になってしまった事だった。
──それなのに、そんな微妙な心理的戸惑いを無視したかように、自分自身の奥底の別の何かが刺激される。
精神的に切なく惹かれる圭への想いとは全く異質なところで、俺は見ず知らずのグラビアの青年に欲情していた。
その美しい肉体と、妖艶な微笑みに魅せられ、俺は夢中で自分の股間をまさぐった。めくるページの様々に、何度も何度も──
(こんな雑誌、誰かに見つけられたら大変だ!)
俺は雑誌を新聞紙で包み、翌日の朝、通学途中の駅で捨てた。
「あ、そうだ!」
ジュンが引き出しの奥から一冊の雑誌を取り出して俺に渡した。
「理久、こう言う雑誌があるって、知ってる?」
そんな雑誌を、俺は全く知らなかった。
「何これ?知らないよ?」
──それは当時刊行されていた、いわゆる「ゲイ雑誌」と言われる類いの物だった。
紙質はいい。装丁も嫌らしくなく、いわゆるエロ本には見えなかった。ただ、表紙には妙に艶かしい青年のイラストがあった。
ジュンは手早く紙袋に入れた。
「これ、同性愛の雑誌なんだ」
「え?そんなのがあるの?」
「毎月こっそり買ってる。親に見つかると大変だから溜め込まないようにしてるんだ。これはもう読んだから理久にあげる」
「……………」
確かに話の流れではあったけれど、いきなりのこれには驚いた。
「いらない」とか、「興味が無い」とか言えなかった。正直、衝撃より好奇心が勝った。
「絶対、誰にも見つからないようにね!」
「…………あ、ああ」
としか言えなかった。
実は一世を風靡したゲイ雑誌も、現在ではその殆どが廃刊となった。その役割の全てをネットに奪われる結果となったためだ。
当時のゲイ雑誌の内容など、現在のネット上の情報量に比べればまるで太刀打ち出来るものではない。
でも70年代から90年代のゲイ雑誌の内容を鑑みるに、現在のただハードなだけのポルノとは比ぶべくもなく、もっとアートやカルチャーを感じさせる内容も多かったと断言できる。
とにかく俺は帰宅してから部屋に閉じ籠り、その雑誌を隅から隅までなめるように読み尽くした。
巻頭のカラー・グラビア=現在のネット上の過激な画像と比べればまるで芸術写真だ。ただ当時の俺にしたら、男性のヌードモデルの存在自体が驚きだった。
小説。エッセイ。劇画。新宿二丁目のルポ。広告。はては業界のニュース。世界の情勢。ゲイ開放の思想。
そして何より驚いたのは、読者の投稿欄と膨大な量の文通欄。
=ようするに今で言う「出会い系」だ。当時はゲイ雑誌を介しての「文通」と言う、極めてアナログな方法ではあったけれど、ゲイのコミュニケーション・ツールとして画期的、かつ貴重な方法だった。
俺は、このたった一冊で「ゲイの世界」を一気に知ってしまった。男同士でどんな行為が行われるかも、事細かく知ってしまった。
そして、今でもあの時の戸惑いを自己分析出来てはいない。
──雑誌で知ったSEXの情報を、全く圭と自分に当てはめて想像する事が出来ないのだ。
圭のことは好きだ。間違いなく大好きだ。
でも、雑誌で知ったそう言う行為を圭とするのか?と思うと、全く現実的な気がしない。
俺が圭に抱いている想いは、
本当に同性愛なのか?と疑ってしまった程だ。
そして何よりショックだったのは、男同士のSEXの実態を目の当たりにした時、俺は自分が圭に対して抱いているこの切実な想いを、何だか得たいの知れない悪意によって滅茶苦茶に汚されたような気になってしまった事だった。
──それなのに、そんな微妙な心理的戸惑いを無視したかように、自分自身の奥底の別の何かが刺激される。
精神的に切なく惹かれる圭への想いとは全く異質なところで、俺は見ず知らずのグラビアの青年に欲情していた。
その美しい肉体と、妖艶な微笑みに魅せられ、俺は夢中で自分の股間をまさぐった。めくるページの様々に、何度も何度も──
(こんな雑誌、誰かに見つけられたら大変だ!)
俺は雑誌を新聞紙で包み、翌日の朝、通学途中の駅で捨てた。
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