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第1章 少年理久・幼少の記憶
No,12 だからピアノが欲しい①
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【小学校4~6年のお話】
僕は3才やそこらからピアノを習っていたのに、家にはオルガンしかなかった。やればやる程、オルガンでは無理が生じる。
小学校に上がる頃には、ピアノが欲しくて欲しくて随分ねだった。しかし親は渋かった。
元々は花嫁道具として波奈に習わせたオルガンなのに、肝心の波奈は興味が薄く、その弟の方がハマってしまった。
しかも年端の行かない弟が何十万円もするピアノを欲しがるとは全くの予定外。
ちなみにピアノの値段は今も昔もさほど変わらない。昔はどれだけ贅沢品だったかと言う話しだ。
「どうしてオンガンじゃ駄目なんだ?」と何度も同じ事を聞かれた。親にはオルガンとピアノの違いが分からなかった。
それでも「ブルグミュラーの25番エチュード」やら「バッハの小プレリュード」くらいまでなら何とかなった。
が、「ツェルニー30番エチュード」や「バッハのインヴェンション」あたりになるともう限界で、子供心にどうしようかと考えた。
僕の小学校は市内でも大きい方で、1学年7組まであった。
音楽には専任の男性教師がいて、選抜メンバーで「合唱団」なるものが組織されていたが、これがいわゆる「NHKコンクール」で優秀な結果を出していた。
4年生になると、その音楽教師の独断で歌の上手い子が選ばれる。選ばれた子は名誉な事ではあったろうが、ほぼほぼ合唱団に強制参加させられる。
逆に内心入りたくても、その音楽教師に選ばれなければ入れない。現在では全く考えられない「独裁国家」のような組織だった。
僕は考えた。
(合唱団の伴奏者には、どうやったら成れるのだろう?)
もし成れれば音楽室のグランド・ピアノは弾き放題だ。合唱の練習の後に、もしかしたら自分の練習も出来るかもしれない。
1年生の頃から合唱団の活躍は目にしていた。
何故なら波奈が選抜されて参加していた。鍵盤楽器には向いていなかったけれど、音程はちゃんとしていたようだ。
だから僕は、母と一緒にコンクールで歌う波奈の姿を見に行ったりもしていたし、学芸会や児童会の折りに特出扱いで演奏される、選抜生徒達の誇らしい姿も見て知っていた。
特にピアノをやっていた僕としては、伴奏者に憧れを抱いていたのも事実だった。
その伴奏者になりたい!と、
そう思うと矢も盾もたまらなかった。
のちに先生に笑顔で言われた。
「後にも先にも、自分から伴奏がしたいと飛び込んで来たのは理久だけだよ」と──。
伴奏をしたいと言った僕に対して、先生はその場で「何か弾いてみて」と要求した。
そんな事は想定内のはずなのに、4年生の物知らずの僕は何も準備していなかった。
うろ覚えの曲を弾くよりも今習ってる最中の練習曲をと思い、バッハの3声のシンフォニアを弾いた。
今にして思うと恐ろしい選曲である。些細なミスも許されないバッハを先生の前で弾くとは、末恐ろしい児童であった。
先生は言った。
「まず4年生は歌うこと。5年生になると準伴奏者の選考があるからね」
──歌を査定されずに入団が決定したのも、僕が初めてだったのかも知れない。
僕は3才やそこらからピアノを習っていたのに、家にはオルガンしかなかった。やればやる程、オルガンでは無理が生じる。
小学校に上がる頃には、ピアノが欲しくて欲しくて随分ねだった。しかし親は渋かった。
元々は花嫁道具として波奈に習わせたオルガンなのに、肝心の波奈は興味が薄く、その弟の方がハマってしまった。
しかも年端の行かない弟が何十万円もするピアノを欲しがるとは全くの予定外。
ちなみにピアノの値段は今も昔もさほど変わらない。昔はどれだけ贅沢品だったかと言う話しだ。
「どうしてオンガンじゃ駄目なんだ?」と何度も同じ事を聞かれた。親にはオルガンとピアノの違いが分からなかった。
それでも「ブルグミュラーの25番エチュード」やら「バッハの小プレリュード」くらいまでなら何とかなった。
が、「ツェルニー30番エチュード」や「バッハのインヴェンション」あたりになるともう限界で、子供心にどうしようかと考えた。
僕の小学校は市内でも大きい方で、1学年7組まであった。
音楽には専任の男性教師がいて、選抜メンバーで「合唱団」なるものが組織されていたが、これがいわゆる「NHKコンクール」で優秀な結果を出していた。
4年生になると、その音楽教師の独断で歌の上手い子が選ばれる。選ばれた子は名誉な事ではあったろうが、ほぼほぼ合唱団に強制参加させられる。
逆に内心入りたくても、その音楽教師に選ばれなければ入れない。現在では全く考えられない「独裁国家」のような組織だった。
僕は考えた。
(合唱団の伴奏者には、どうやったら成れるのだろう?)
もし成れれば音楽室のグランド・ピアノは弾き放題だ。合唱の練習の後に、もしかしたら自分の練習も出来るかもしれない。
1年生の頃から合唱団の活躍は目にしていた。
何故なら波奈が選抜されて参加していた。鍵盤楽器には向いていなかったけれど、音程はちゃんとしていたようだ。
だから僕は、母と一緒にコンクールで歌う波奈の姿を見に行ったりもしていたし、学芸会や児童会の折りに特出扱いで演奏される、選抜生徒達の誇らしい姿も見て知っていた。
特にピアノをやっていた僕としては、伴奏者に憧れを抱いていたのも事実だった。
その伴奏者になりたい!と、
そう思うと矢も盾もたまらなかった。
のちに先生に笑顔で言われた。
「後にも先にも、自分から伴奏がしたいと飛び込んで来たのは理久だけだよ」と──。
伴奏をしたいと言った僕に対して、先生はその場で「何か弾いてみて」と要求した。
そんな事は想定内のはずなのに、4年生の物知らずの僕は何も準備していなかった。
うろ覚えの曲を弾くよりも今習ってる最中の練習曲をと思い、バッハの3声のシンフォニアを弾いた。
今にして思うと恐ろしい選曲である。些細なミスも許されないバッハを先生の前で弾くとは、末恐ろしい児童であった。
先生は言った。
「まず4年生は歌うこと。5年生になると準伴奏者の選考があるからね」
──歌を査定されずに入団が決定したのも、僕が初めてだったのかも知れない。
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