最期を告げる時計の針は

雪那

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夜も更けた。
俺は与えられた一室の窓際にいた。
その与えられた一室は周りはきで作られいかにもキャンプとかで行きそうな感じの部屋にシンプルな白いベッドが1つだった。
そしてドアを開けて真っ直ぐに窓がある。
その窓は意外とスペースがあり、俺はその窓際に体育座りして外を見ていた。

窓の外は真っ暗だった。
月の光はあるのに、そこには何も無かった。
不思議な光景だったが、実際、俺の心はそれどころではなかった。

ここは一体、裏世界とは。
なぜ天音にそんな恨みがあるのか。
考えれば考えるほど、こんがらがってくる。
その場の流れに流されてたけど、よくよく考えてみたらこれは異次元の話だ。能力だなんて。

こんこん。

「はい。」
「俺だ。祐也だ。」
「あー、入ってどーぞ。」

ガチャっと音を立て祐也は扉を開いた。

「失礼します。」
「学校かよ。」

祐也は歩いてきてベッドに座った。

「学校楽しかったよなー。お前と自転車レースやったり。」
「それ怒られたよな。」
「何故かバレーボールで窓ガラス割ったり。」
「それはお前だろ、俺は関係ない。」
「でも、お前も怒られたよな。」
「なんで俺も怒られたんだよ、あの時!
ほんとに先生め!って感じだったわ。」
「でも学年トップを争う秀才というね。」
「先生も強く怒れない部分はありそうだったよな。」
「だよなー!」

アハハと笑って話しをした。まだ祐也が生きていた頃の話だ。色々やんちゃをして、先生に怒られてと。問題児だったのだ。祐也が死ぬまでは。

「俺さ、ほんとに祐也に感謝してるんだよ。」
「お、なになに?」
「お前のおかげであの大学に合格できたんだ。お前がライバルだったおかげで。そんで天音にも会うことが出来た。」
「...おう。」
「本当にありがとう。そんで死んだ今も助けてくれようとしてありがとうな。」
「...。」
「ん?」
「...ぁぁぁぁぁああ!
 お前辛気くせぇんだよ!もっとこう、いい話あるだろ!」
「なんだよ、いい話だったじゃないか。」
「隼!ほんとーにお前腹立つ!」

アハハと昔のように笑った。なかなか楽しい時間である。

「アハハ、悪い悪い。それでさ、祐也。お前もしかして、杏ちゃんになんかしたのか?死んだ後。お前の記憶がないって話だったけど。」
「俺の死んで得た能力は『意識を操る能力』。つまり、俺があいつの記憶を消したんだよ。」
「消す必要はあったのか?」
「あいつは都市伝説好きだからな。」
「あー...。」

願い人。
都市伝説にあった。有名な話である。

「死ななきゃいけなかったのかお前は。」
「うん、俺が死ななきゃ杏は助からなかった。
 死ぬことによって、魂をどうにかする力を人間は持つことができるって聞いた。それから、こんな変な力が生まれるんだとか。俺の今の肉体も魂そのものであって、回復は出来るけど、魂が無くなれば転生が出来ないらしいぞ。」
「むずかしー話だな。」
「あの奇跡の門をくぐり抜けるには能力を持てるほどの魂の力がないと無理だそうだ。隼は元からあったから、生きて通れたってところ。」
「お前は死んだらどうなるつもりだったんだ?」

この質問を祐也に問い掛けてから祐也が口を開くまで少し間があった。
月明かりが俺らを照らしている。

「死んだら、能力を持って裏世界に行くか、転生するかの二択なんだ。表世界の人間は。俺はうん。また隼と会いたくてこっち側を選んじまったぜ!」

と言って、俺の方を見て祐也は得意げに笑った。

「でも、もともと裏世界の住人の人は神霊の人イマジンと呼ばれるんだけど、姉貴とかチェリンはそういう感じの人で、転生はできないらしい。死んだら代わりのひとがまた生まれてくるんだとさ。その木の下にいたりするんだと。」
「結構むずかしいな。あと、興味深い。
 でも、能力って人を殺すとか普通に出来そうな物騒なもんじゃないのか?」
「いや、規制がちゃんと掛かってる。
 この世界のことわりらしくて死ぬ事に関わることには能力が使えないんだ。」
「よく作られてるな。」
「ほんと。俺もびっくりしたんだからさ!」


そんな話しをかれこれ3時くらいまでしていたのだろう。
俺たちは話疲れして寝てしまった。

この世界のこと。
天音のこと。
杏ちゃんのこと。

たくさん話した。

天音を救い出すという決意を胸に抱いて。
これから全てのことが上手く行ってくれるだろう。



そんなことはなかった。
そんなことはなかったのだ。
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