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しおりを挟む2、3日後。
「ただいま、戻った。」
食堂で鶏肉のリゾットをぺちゃくちゃ喋りながら食べていたらヒールが帰ってきた。ヒールを鳴らして。
「あぁ、明日、隼と祐也はここで待機な。アズリエルに会いに行く。」
それだけ言ってヒールは自分の部屋へ戻っていった。
「祐也、お前おとなしいな。いつも、姉御ぉ!とか叫んでるのに。」
「いや、遠征後みたいなまぁ、今日みたいな日に俺がウザ絡みしたら、絞め技かけられて死ぬかと思った。まぁ、乳のことでウザ絡みしたのが原因だと思うけど。」
「本当に凄かったのー!こいつアホなのー!」
チェリンが湯のみを持ってきた。
「チェリンにアホ呼ばわりされるとは...!こいつって...」
ショックなのだろうか。なんだろう、祐也の体に異常はなさそうなのに、虫の息だ。魂が抜けかけてるんじゃないかって、このメガネ系残念イケメンめ。そのウザ絡みで多分、人生の4分の3は得を逃してるぞ。
あほだよなぁ...。
今日はまた違って楽しい夢を見た。
黒い髪のショートヘアの子、もちろん顔にはなんかクレヨンで塗りつぶされた感じで顔はわからない。
俺らはお花畑に座って池を見ていた。
空は青空で昼下がりで、側にはランチボックスがある。
そして、黒いショートヘアの子が言葉を発した。
「お名前なんて僕達にないよね。」
「そうだね。」
「だからね!お名前作ろうと思って!」
立ち上がって
「あんたの名前は僕はライトがいいと思う!
だってあんた〇〇を司ってるんでしょ?」
「じゃあ、お前の名前は俺が思うのは、アスカ!飛ぶ鳥って書いて飛鳥
なんとなくかっこいいだろ!」
「うん、そうだね!」
アハハと笑い合う僕ら。楽しかったことを覚えている。
ベシーン!
「起きろ!隼!ってあれ?なんで泣いてんだ?」
「んぅ...?えっ?」
目尻を触ると涙らしい液体がついてきた。
あれ?
「ライト?飛鳥?」
夢で聞いた単語を並べてみる。なんか、忘れちゃいけないような、そんな気がする。
「何わけわかんないこと言ってんだよ、姉御が待ってる。一階に降りとくからなー!」
...本当になんで泣いていたんだろうか。
これは誰の夢なんだろうか。まぁ、俺のなんだけれど。
あと、こっちの世界に来てから俺の親の顔が思い出せない。それも関係が?
考えてても仕方ない。
俺はなんとなく、そこにかけてあった、正装なんだろうな、制服的なものを着て上に紺色のコートのように裾の長いフード付きの上着を羽織った。
そして一階に降りてとりあえず顔を洗って、歯磨きして、朝食とって
「準備できました。」
と、ヒールのところへ。
「まじ、隼!遅い!」
珍しくパーカーではなく、願い人の正装をしている。それはヒールも同じだ。
今気づいた。ヒールと俺身長同じくらいだ。
「朝弱いタイプか、隼は。」
「朝は強いほうなんですけど.....。あっちの世界では目覚ましに頼って生きてましたから。」
「目覚ましやっぱ、欲しいよなー!」
「さて、行こうか。準備はいいか?」
「大丈夫だ。」
「えっ、スルー!?あっはい、姉御大丈夫です。」
サンミューズをカチカチっと鳴らし、行き先をヴァージニア王国王城へと設定した。スイッチを押すと、紫の魔法陣が出てきて目を開けると、目の前には大きな城が。城壁はおよそ、3mくらいあるのだろうか。鉄格子の門の先に王城がある。
「私だ。ヒールだ。門番よ通せ。」
と言って、ヒールが証明所を門番に見せる。
「はい、確かにヒール様ですね、お通り下さい。」
ギギギギーと門が上に開き、俺たちはは城の中に入っていった。
入ると目の前に大きな階段があって、至る所を兵士が巡回していた。
「お待ちしておりました。ヒール様。」
長身で、黒く質素な服を着て、黒い長髪を後ろで結んだ男がいた。美青年?というやつだろうか。
「クロード。お前はいつ見ても歳を取ったように見えないな。
あぁ、こいつはアズリエル国王の補佐、クロード・モルジアナ。ちょっと怖いやつだから気をつけろよ。特に祐也。お前は。」
...。
こいつ、初めての城内ってやつで浮かれて話聞いてないな。
「ところで貴方のの名前は?」
急に俺の方向を向いて聞いてくるもんだから、ちょっとびっくりした。
「風谷 隼です。」
「この場内に見覚えは?」
「ある、わけないじゃないですか...。」
俺が返答に困っていると。
「クロード、そうこいつを虐めるな。さぁ、私はアズリエルと話がしたいんだ。とっとと連れてけ。」
「はい、承知しました。」
そう、クロードは言って、俺たちはアズリエルのいる部屋へと2階へ上がって、そこから伸びている廊下を歩いた。もちろん無言で。
そして、クロードが口を開く。
「着きました。アズリエル様の部屋です。失礼がないようお願い致します。」
ガチャっといって、扉が開く。
中には図体の大きな男が座っていた。
黒色の短い髪。マントを羽織っててもわかる、筋肉の量。でも、一番に気になるのは、
大きな角が生えている。
一瞬バケモノを見た気になった。少し恐怖を感じた。
優しい顔をしていたが、こちらに気づいて見るなりとても驚いた形相になった。
「さて、アズリエル、話に来たぞ。
どうした?」
「ど、どうして、君がここにいるのかい?」
優しい感じで俺に尋ねてきたが、アズリエル王のその声は震えていた。
「ど、どうしてって...」
「あぁ、私が用があるのはこいつについてなんだ。願い人は願いを叶えなくちゃいけない。だろ?」
「そ、その願いというのはどういったことだい?」
「外の世界のこいつの彼女が命をこの裏世界の者に狙われてるらしい。そいつをとっちめるって事だ。命が狙えそうなやつを知っているか?」
「王様頼みます!こいつは俺の親友でとってもいいやつなんです!どうか願いを叶えるために手伝ってください!」
祐也まで頭を下げている。
こいつは仕事と遊びはちゃんと割り切れるやつだ。それがとてもすごいと思う。
「うむ。願いを叶えるために協力しようじゃないか。でも、その前に君の正体が知りたい。白い髪、赤と青のオッドアイ。私はそれをよく知っている。君の名前は?」
「風谷 隼、と言います。」
「風谷 隼、か。いい名前だね。」
「アズリエル様。」
クロードがアズリエル王の耳元で何かをヒソヒソ話して、こくんとアズリエル王は頷いた。
「風谷 隼くん。君はクロードについて行ってくれないか。あとの2人はこちらでお茶でも飲んで話そう。」
「あぁ、わかった。」
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