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エピソード23、家庭内事情と腹の中

FGO【フリーゲームオンライン】プレイ中

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 しばらく、わたわたしていたが、スイに替わり終えたのだろう。表情から自信が消えた。
「あ、あの、よろしくお願いします」
「うむ、あやつにも見習わせたい敬語だ」
「そ、その、色々ありまして・・・・・・」
 開発者曰く、本当は似たような性格にしてその変化を楽し・・・ゲフンゲフン、比較するつもりだったらしい。生まれた人格は元から大差ありまくったらしい。片や勝気、片や臆病。ただし、趣味は一緒。
「家庭内事情なんて詳しく話す必要ないのよ」
 ここはあくまで一つの仮想現実。リアル事情を持ち込むのは約束の時くらいでいい。持ち込まなさ過ぎやこちら優先はあまりいいことではない。自分が楽しめる且つ皆が楽しめていれるラインを守れれば一番である。諸事情なんて千差万別。それを一々説明しないといけないような小学生は・・・・・できないことはないが、保護者同伴必須である。
「そうだな。リアルで会うことがない限り、必要のないことだ」
 そう語るクレナイの背中は寂しげだった。
「そろそろ助けてくれませんかー」
 あなた達も同類ですか、と言いたげな目で見られた。否定しようかなと思ったら、相手が吸い込まれてしまった。
「アウトか!?」
「まだよ。データが飛んでないわ」
 先程、ウォルが殴り殺した相手を思い出してもらいたい。HPが0以下になったら、身体が粒子化してデータが飛んでいくのが見えた。そう、この世界、蘇生方法が存在するので、魂魄が存在するのだ。データの塊だが、他の表現がないので、魂魄と呼ばれている。死亡したら、身体は粒子になり、魂魄は神殿へと帰還する。
「ウォルは定期的に回復魔法を。クレナイは中央突破を狙って」
「はい」「うむ」
 ウツボカズラモドキ、モンスター名ウツモドの触手が三人に襲いかかる。演唱に入っていたウォルが棒立ちだ。彼女を小脇に抱えたクレナイは左に、私は右に走った。
私が持っていけたら一番だったのだろうが、筋力が足りない。箸より重いものを持てないみたいな感じで、拳銃よりも重いものが持てないのだ。しかも、1Hガンより重いものを。器用と素早さに重点を置いたパラメーターにしたから、どこかが割を食うのだ。私の場合、それが全部筋力にいった。いや、やった。
「もう、こういう時に自分が使えないってのは腹立つわねっ!」
 ウォルの魔法に反応して触手は全部クレナイの方に行った。近づいていった触手から撃ち落とす。伸ばされていくのを、牽制していく。ただし、エネルギー弾なので牽制にしかならない。弾丸ではなくMPを少量消費する魔法の一種を飛ばしているので、撃ち貫くことができないのだ。最近アップデートされた、ガンナーへの救済処置である。MPを補助で使いまくるガンナーにとってはあまりありがたみがない、と言うのが評価である。属性も乗らないのがさらに・・・・・・。
「ひゅー、百発百中ぅ。やるねぇ」
 知らない男性の声がした。振り向くと独特の羽飾りを付けたポンチョにて身を包んだ男が立っていた。戦闘になったので自動的に気配感知が消えたのか。はたまた、彼が意図的に他PCにも悟られないようにしていたか。隠密系スキルを使えば可能なのだが、それにしては服装が非常に華美である。前者だと思われる。
「おっと、怪しいものではないさ。君達と同じ、ここのフルーツに興味があるただの通りすがりさ」
 手を挙げて敵意がないことを示しているが、どうも胡散臭い。上に名前がないのでNPCではない。称号も付けていない。ますます胡散臭い。称号にはパラメーター上昇能力がある。微々たるものだが、結構重宝するのだ。もちろん、希少だったり、有名だったりした方が上昇率は高い。ログインして即貰える“駆け出し冒険者”の効果はHP+20だ。とりあえず、装備しておくには持って来いなので、初心者はそれをつけておくことを推奨している。称号を見るのは簡単だ。見たい人にカーソルを合わせてクリック。これだけ。名前や詳しいパラメーターは見えないが、装備している称号だけは見えるようになっている。
「ここのフルーツってそんなに人気なの?」
「人気人気、大人気ぃ。冒険者しか手に入れられないから、売ってもいい値段が付くさ。まぁ、最初は自分で食べた方がいいよぉ。NPCが売っている果物よりも美味しいって評判だしぃ」
「見たところ、冒険者のようだけれど。手伝ってはくれない訳?」
「おっと、これは失敬ぃ。手伝うよ、何すればいい?」
「じゃあ、彼らの代わりに囮になって。見たところ魔法使えるようだし、簡単でしょ」
 腰に下がっている印籠風の魔法発動体に一瞬だけ視線をやる。地属性の魔法使いだ。主に防御力を上げたり、障害物を作ったりする魔法だ。通常なら重戦士が選ぶ魔法だ。
「うーん、見ての通りぃ。重戦士じゃありませんしぃ。盾役はご免ですねぇ」
「あなたの目的をどうこう言うつもりはないけれど、手を貸さないならどっか行って。邪魔よ」
「手伝うって言ったろぉ。目的は同じなんだしさぁ」
 果物を狙っていると言いたいのだろう。
「だったら、魔法援護しなさいよ」
「そいつは御免だねぇ。あの触手、魔法に反応するんだろぉ。それも、一定以上にぃ」
 さすが、陰にいただけはある。よく見ている。私の方に触手が向かないのは、使っている魔力がモンスターの反応力に達していないためだ。
「見ての通り、おじさん装備がぺらっぺらなんだよねぇ」
 ひらひらとポンチョを靡かせる。装備がない。根っからの魔法使いか、それとも・・・・・・。
「関係ないわね」
「・・・ふーん、その様子じゃわかっちゃったかぁ。今のところ当てられたのは初めてだよぉ」
 閃光が弾ける。彼が発光弾を上に投げたのだ。光に照らされて植物の動きが活発になる。触手が増え、魔法を唱えているウォル、そして彼女を抱えているクレナイへと向かう。
「どうせやるなら、盛大に、でしょ」
 赤い紐がそれらを一つに纏めて締め上げる。その瞬間を逃さずに、私は植物の懐に飛び込んだ。
「きゃああああああ!」
 そう、ダガーで腹を切り裂いて、その中に飛び込んだ。目の当たりにしたウォルの悲鳴があがる。必死に前に進んでいく。消化液に溶けそうになる防具の一部は溶けた、そんな臭いがした。金属鎧も溶かす消化液、確実に溶けただろう。留め金が。
「・・・・・いた!」
 伸ばした指先に繊維ではない肉質が当たる。さらに指を進めていくと、握れるくらいの幅の場所に辿り着いた。思いっきりこっちに引っ張ると、防具を溶かされ切ったPCが現れる。そのまま胸に抱いて保護する。あとは、後ろに下がるだけ。
「これは・・・・」
 出口が塞がっている。植物魔物の高い再生能力が働いたのだろう。ダガーを残しておくべきだったと今更ながら悔やまれる。左足、動かない。右足、動かない。左手、PCを抱えている。右手、辛うじて動く。真っ直ぐ上に掲げて、
「具現して、拳銃」
 強く念じる。専用化した武器は持ち主の意思を組んでくれるという。FGOの世界にもそういった魔法はある。武器召喚と武器転移だ。予めそれ用の魔法をかけたり、専用化したりしないといけないので金と魔力がかかる。効果もまぁ、演出がカッコいい程度と言われている。だが、このようにホルスターにさえ手が届かない事態に陥った時、真価が発揮される。右手に持ち慣れた金属の感触が現れる。人差し指が引き金にかかっているのを確認して、私は魔力を最大にまで込めた。
「さて、一勝負しましょうか?」
 魔法耐性と私の魔法、どちらが上なのか。いざ、尋常に勝負!


                       続く
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