転移者と転生者と現地チート

シロ

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「ふーん、結局ほとんどやっちゃったのね」
「「申し訳ありません」」
「まぁ、穢れが現れたなら仕方がないわね」
 あのドロドロのことを言っているらしい。
「その反応だと、初見みたいね」
「まぁな」
「うん、見たことないのです」
「穢れを見たことないなんて・・・・辺境でも魔王の放った瘴気が渦巻いていたというのに・・・・・・よっぽどの辺境にいたのね」
 いた遺跡も辺鄙なところだったし、と言われてグッと詰まる。さすがに異世界から来たとは言ってはいけない気がした。そう、2人の本能が告げる。
「もしかしたら、戦争もしらないんじゃないかしら」
「体験したことはないのですが、伝聞とかならかなり聞いています」
 今でもどこかの国で戦争は行われているだろう。途絶えた歴史をナナは聞いたことがなかった。寧ろ、戦争ばかり歴史の授業では取り上げられていた。過去を悔い、先を作るためなのも理解しているが、あんまりである。平和など一時の儚いもの。
「聞くのと触れるのとでは、かなりの違いよ、ね」
 ギルドマスターの言葉に防寒着の冒険者は黙って頷いた。
「穢れとは、魔王が吐き出す気に触れて変異した自然界の物質の気よ」
 穢れは瘴気を生み、瘴気は穢れを生む。こうして、溜まった瘴気が魔界への入り口を開けるのだ。浄化できるのは、太陽か月の加護を得た神官のみ。
「戦争の時には如何に瘴気を浄化するかが鍵だったわ」
「それでは、この前の戦争は」
「魔族と人族の戦いだったって訳。最終的には魔界に乗り込んだ2人の勇者によって魔王は討ち取られた、とされているわ。人間にとっては、結構複雑な結果に終わったそうよ」
 ナナは理解した。止めを刺した勇者は他種族だったのだろう。少なくとも人間ではない、何か。人間の国にとって、自身が関与していない英雄など、目の上のたんこぶ的存在だろう。
「何族なんだ?その勇者様は」
「エルフ族って話だよ」
「平和と勝利の象徴と言われていますが、彼は戦争終結以降、姿を現したことはございません」
 紅茶を持ってきたシサが防寒着の冒険者の言葉に付け加える。
「迷子なのですか?」
「魔界から帰還できてないと考えられているわ」
 通じていた門は次々と閉じ、空いているものは片手ほどもないだろう。それも国の管理下に置かれ、近づくことすら許されない。
「・・・。。。」
「大丈夫だよ。キッと帰ってくるから」
 男声が女声を慰めている。姿を見せないのでなく、見せられないのであったら・・・・・・彼彼女の事情も複雑なようだ。声にして、まだ成人まではしてなさそうなので戦争に関わったとも思えない。
「何だ、お前お留守番組だったのかよ」
 それで、カイが冒険者になることに割と協力的だったのだろう。
「・・・あまり、詮索しないでください」
「そうだな。俺達には関係ないことか」
「なのです」
 それ程深く関わっていないのでアドバイスも何もできない。迎えに行こうとも誘えない。なら、これ以上突っ込むのは野暮というものだ。

                          続く
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