転移者と転生者と現地チート

シロ

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転移者が現る

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 気が付いたら温かな空間にいた。かなりの高さから落下したにもかかわらず二人とも擦り傷すら負わなかったのは、柔らかな苔がクッションになってくれたからだ。それだけではない。薄く発光しているトビムシのおかげで、周囲を確認することができる。女の子はゆっくりと身体を起こす。
「ここ、どこなのです?」
声に出してみたが、答えは返ってこない。そして、声はやはり震えたままだった。
「お、目覚めたか!?」
シュタ、シュタッと石の上を軽い足取りで近づいてきたのは先程まで手を引っ張って、走っていてくれた少年だった。大丈夫か、と差し出された手を握って立ち上がる。
「うん、立てるってことは、怪我ないな」
「うん、大丈夫みたいなのです」
「ここ、どこだ?」
「近所・・・じゃないと思うのです」
キョロキョロと辺りを見渡す。トビムシの光は淡いし動くため、あまりよく見えないが、チラリチラリと映る岩には何やら不思議な紋が入っているようだ。俯いた女の子に少年が話しかける。
「あっちは行き止まりだった。こっちに行くしかない。妙な通路だが、歩けるか?」
光トビムシのおかげで暗闇ではないが、はっきりと見えている訳でもない。
「うん、大丈夫なのです」
手を取って、慎重に一歩一歩進んでいる途中、あれ、そういえば、と女の子は首を傾げる。
「何て呼べばいいですか?」
「?いつもの通り呼べばいいだろ?」
「え、ええ?」
「・・・カイ」
「え?」
「名前だよ」
「ナナと言うのです。よろしくね、カイ」
ポツリと何か呟いたようだったが、女の子、ナナには聞き取れなかった。
 トコトコトコと小さな足音が2つ通路にこだまする。少しヒンヤリとした空気の中、繋いだ手の温かさだけが2人にとって確かなものだった。微かに震える手をカイはシッカリと握って歩みを進める。

 各国の宮廷占い師が、『転移者現る』と騒ぎ出したのはこの頃であった。

                                  続く
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