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三、調査は進行して・・・いない!?
3ー6、開催されていた。
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病院を離れてから、タイラは一人で学校に戻ってきた。慎司はもう帰ったのかタイラが受付に来た時にはすでに姿がなかった。学校へ戻ったのは井上がまだいたら病院の件を聞いてみようと思ったからだ。
しかし、それは敵わなかった。運動場で練習しているサッカー部、ラクビー部、野球部、陸上部が運動場全面を使って大喧嘩しているのだ。サッカーボールが宙を舞い、金属バットが風を切り、砲丸が地面にめり込む。まさに何でもありの大喧嘩が開催されていた。部活同士で戦っていたら練習場所を賭けた騒動だと思えるのだが、
「どう見ても同じ部員も殴っているでござる」
警戒して潜んでいた敵が動き出したようだ。
「よう、タイラ。戻ってきてたのか!?」
「山下、これはいったい?」
「いつもの喧嘩の盛大バージョンって感じだな。そっちはどうだった」
「それが・・・・・・・」
正直に報告するべきではないだろう。だが、何と言えばいいのかタイラが思いつかないでいると、
「だろうな。後で俺も知ったんだが。井上の奴、おまえが暇だから話しかけてきたと勘違いしたみたいなんだ」
気にするなよと山下はタイラの背中を強く何度も叩いた。
「けど、態度が他の奴と違うのは確かだな。好期だってあの後大勢の男子が話しかけたけど、全員さり気なく逸らされておしまいだった」
「井上さんは今何処に?」
「たしか、理科同好会に入ってたぜ。たぶん、理科室だな」
「でも、これが納まらないといけないでござるな。ところで山下は何で喧嘩していないのでござるか」
あ、やっぱりそう思う、と呟いてスポーツ帽子を指で回した。彼の着ている独特のユニホームでわかるだろうが、彼も野球部なのである。なのに、倉庫の前でのんびりと喧嘩を眺めていた。
「それなんだよ。こうして見てるけど別に傷つけたくなるとか、殴りたくなるとかないんだよな。言っとくけど、練習をサボっていたわけじゃないからな。俺は授業で寝ても練習だけはサボらないって決めてるからな」
「そうなのでござるか?」
「ああ、自分がやるって決めて始めたことだからな」
やるならとことんやってやるってなと山下は笑った。
「そうだ、これ飲むか?」
ほれと投げられたペットボトルをタイラは受け取った。中身は渋い色の茶だ。
「いいのか?」
「俺飲めないから」
蕎麦アレルギーなんだと山下は笑った。食事に制限があるのは辛い。蕎麦ならまだバリエーションが少ないからマシな方だが、牛乳や小麦だった場合は多くのものが食べられなくなる。小さい子供にとってとても辛いことだ。
「じゃあ、遠慮なく貰っていくでござるよ」
飲んでいない山下だけが喧嘩をしていないということはこの飲み物に喧嘩を引き起こした原因物質が混入されていたと考えるべきだろう。いつもの薬師に成分分析を頼めばいい。だが、本当にこのお茶が原因なのだろうか?今の状態ではそうとしか考えられないのだが、毎回これが原因で喧嘩が起きていればさすがに学校側が気付く。こんなに簡単なら漢蜀に依頼など来なかったはずだ。
「でも、これが無関係とも言えないのがなんとも面倒なところでござる」
ふと、上を見上げると実習棟二階左端の部屋にて争う人影が見え、次の瞬間一人の影が消えた。
「山下、あの二階左端の部屋って何でござるか?」
「あ、あれか。たしか理科実験室だな。でも、あそこって部活でも先生の許可がないと入れないはずだぜ。どうかしたのか?」
「いや、人影が見えた気がしただけでござる。きっと気のせいでござろう。さて」
「どうするんだ?」
「教室に鞄を忘れたんだ。予習復習できぬので取ってくるでござるよ」
そう言うと、山下が止める声を無視してタイラは喧嘩の真っ只中に突っ込んだ。飛んでくるボールや振り回される腕や金属マットを避け、運動場を走り抜けた。
続く
しかし、それは敵わなかった。運動場で練習しているサッカー部、ラクビー部、野球部、陸上部が運動場全面を使って大喧嘩しているのだ。サッカーボールが宙を舞い、金属バットが風を切り、砲丸が地面にめり込む。まさに何でもありの大喧嘩が開催されていた。部活同士で戦っていたら練習場所を賭けた騒動だと思えるのだが、
「どう見ても同じ部員も殴っているでござる」
警戒して潜んでいた敵が動き出したようだ。
「よう、タイラ。戻ってきてたのか!?」
「山下、これはいったい?」
「いつもの喧嘩の盛大バージョンって感じだな。そっちはどうだった」
「それが・・・・・・・」
正直に報告するべきではないだろう。だが、何と言えばいいのかタイラが思いつかないでいると、
「だろうな。後で俺も知ったんだが。井上の奴、おまえが暇だから話しかけてきたと勘違いしたみたいなんだ」
気にするなよと山下はタイラの背中を強く何度も叩いた。
「けど、態度が他の奴と違うのは確かだな。好期だってあの後大勢の男子が話しかけたけど、全員さり気なく逸らされておしまいだった」
「井上さんは今何処に?」
「たしか、理科同好会に入ってたぜ。たぶん、理科室だな」
「でも、これが納まらないといけないでござるな。ところで山下は何で喧嘩していないのでござるか」
あ、やっぱりそう思う、と呟いてスポーツ帽子を指で回した。彼の着ている独特のユニホームでわかるだろうが、彼も野球部なのである。なのに、倉庫の前でのんびりと喧嘩を眺めていた。
「それなんだよ。こうして見てるけど別に傷つけたくなるとか、殴りたくなるとかないんだよな。言っとくけど、練習をサボっていたわけじゃないからな。俺は授業で寝ても練習だけはサボらないって決めてるからな」
「そうなのでござるか?」
「ああ、自分がやるって決めて始めたことだからな」
やるならとことんやってやるってなと山下は笑った。
「そうだ、これ飲むか?」
ほれと投げられたペットボトルをタイラは受け取った。中身は渋い色の茶だ。
「いいのか?」
「俺飲めないから」
蕎麦アレルギーなんだと山下は笑った。食事に制限があるのは辛い。蕎麦ならまだバリエーションが少ないからマシな方だが、牛乳や小麦だった場合は多くのものが食べられなくなる。小さい子供にとってとても辛いことだ。
「じゃあ、遠慮なく貰っていくでござるよ」
飲んでいない山下だけが喧嘩をしていないということはこの飲み物に喧嘩を引き起こした原因物質が混入されていたと考えるべきだろう。いつもの薬師に成分分析を頼めばいい。だが、本当にこのお茶が原因なのだろうか?今の状態ではそうとしか考えられないのだが、毎回これが原因で喧嘩が起きていればさすがに学校側が気付く。こんなに簡単なら漢蜀に依頼など来なかったはずだ。
「でも、これが無関係とも言えないのがなんとも面倒なところでござる」
ふと、上を見上げると実習棟二階左端の部屋にて争う人影が見え、次の瞬間一人の影が消えた。
「山下、あの二階左端の部屋って何でござるか?」
「あ、あれか。たしか理科実験室だな。でも、あそこって部活でも先生の許可がないと入れないはずだぜ。どうかしたのか?」
「いや、人影が見えた気がしただけでござる。きっと気のせいでござろう。さて」
「どうするんだ?」
「教室に鞄を忘れたんだ。予習復習できぬので取ってくるでござるよ」
そう言うと、山下が止める声を無視してタイラは喧嘩の真っ只中に突っ込んだ。飛んでくるボールや振り回される腕や金属マットを避け、運動場を走り抜けた。
続く
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