っておい

シロ

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二、違いにご用心

2ー13、ゆっくりと話し出した。

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「話を戻すが、確かにその説明だとナゾナゾの答えは取り壊された白馬家の道場だな。でも、なんでそいつはそこを指定したんだ?」
「それがわかれば苦労しないでござる。そこの生徒って可能性は?」
「女子はいなかったな。そいつが道場に来たことがあるなら写真さえあればすぐにわかるんだが、ないのか?」
「残念ながら」
出会って大した話もしないうちに魔物とのバトルに突入し、気がついたときには姿がなかった。写真を撮ってる暇もなかった。あの時気絶しなければと何度悔やんだことか。
「そうだ。絵なら描けるでござる」
鉛筆を借り、彼女の面影を思い出しながらノートのページに描いた絵のできは・・・・・・。
「御免。誰だか見当がつかない」
「拙者もそう思うでござる」
自分で描いといて何だが、これは人の顔に見えない。画才がないにもほどがある。タイラは大きなため息を吐いた。
「そっちにはないのでござるか?」
「実はさ、帰りながら思いだしたんだが、俺が持ってたのは訳あって全て燃えたんだ。他のも盗られたようだし、残ってるのはこれくらいだな」
示された壁には大きくて古い日本家屋が堂々と建っている写真が飾られていた。確かに家三軒分程の大きさがある。
「あのさ、こうも息が合っといて今更聞くのもなんだが、おまえ、どこの誰だよ?」
「そういえば、拙者も名乗ってなかったでござるよ」
肝心なことを話していない二人であった。
タイラが簡単に自己紹介すると、慎司も三つ隣のアパートで暮らしていることを教えてくれた。家族も身内もどこかのテロの爆破事故に巻き込まれて亡くなったので、バイトをしながら高校に通っている苦学生である。
「苦労しているんでござるな~」
タイラとはまた違った苦労を持つ慎司だが、自分と似た気を持つためかどこか共感できる部分がある。どうやら彼は道場があった時、最も熱心に通っていた生徒の一人だったようだ。
「通い始めたのはガキの頃からで、これでも結構いい成績出してたんだ。すでに生活の一部化しててな。もうないと頭ではわかっていてもつい通ってしまうんだ。癖になってるんだろうな。俺の持ってるいい思い出は全てそこで起こったようなものだから、尚更」
家にいい思い出がないのはタイラも同じだった。あるとしたら、父親との武術稽古ぐらいしか思いつかない。
「そういえば、クイズの中で一つ疑問があったでござる」
「ぅん、なにがだ?」
「クイズは四神獣に準えた文体になっている。朱雀が通りの名、玄武が入る入り口を示す門、白虎は家を示す置物、なら青龍も何かを暗示しているはずでござろう。いったい何を示しているんでござるか」
「青龍か。別の龍なら写ってるかもしれないな」
そういって取り出したアルバムには家や道場の様子が事細かに取られていた。
「写真なかったのではないでござるか」
「人の写真はな。これは俺の趣味で取らせてもらったやつなんだ。人は写ってないだろう。変わりに部屋の様子は事細かに写してある。あの家は古くからの武家屋敷だったから撮り応えがあったんだ。別保管してたから残ってるぞ」
出された写真にはどれも人は写ってなかった。
「ほら、これじゃないのか」
庭の池に沈んでいた龍は青黒く見えるが、沈ます前は朱龍だったらしい。久美子がこの家の関係者ならこんなミスは起こすはずがない。だったら慎司が言うとおり、別のものを示しているはずだ。そしてそれは何かを意味しているはずだ。
「この写真はなんでござるか」
最後の一ページには真っ黒に焼け焦げ、全焼した道場と半焼した家が写されていた。
「これはいったい。強盗にでも入られたのでござるか」
道場は全て焼け焦げ、炭の柱が立っているだけ。家の方は半分焼けずに残ってはいるものの壁や柱や床いたるところにひび割れや傷が見られる。どれも人工的なもので壁のいたるところに埋まっていた取り出した痕があった。捜査の時に取り出されたのだろう。おそらく撃ち出された銃弾。同じ痕跡を別の現場で見たことがある。その時、取り出されたのが銃弾だった。だとしたら・・・・・・。
「そんな生易しいものじゃない」
眉間にしわを寄せ、二枚の写真を取り出す。
「もっと質の悪いもんだ」
薄く染みの残る畳と一番上の段から流れた血が固まった写真。その二つを眺めながら慎司はゆっくりと話し出した。


                           続く
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