っておい

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一、Boy(?) Meets Girl(?)

1ー10、こっちも面倒な世の中に変わりない

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 孟起が真っ先に思いついたのはパソコン教室だった。七不思議の内で唯一死人が出たと伝わるものである。
「幽霊は本来機械類との相性が悪い。何かあるとすればそこだろうな」
男子生徒が死んだ原因が誰かがかけた呪いか。それとも何か知られて困るものがあったため誰かが直接手を下したか。はたまた、単なる偶然か。
この時代だ。機械に適応した力の強い幽霊がそろそろ実在してもおかしくない。世界大戦はないが、こっちも面倒な世の中に変わりないんだな、と孟起は小さなため息を吐いた。
「誰だ!」
瞬時にベルトの後、腰に装備したショルダーから銃を抜くと気配のした方に向ける。そこはつい先程曲がった場所で、今まで気が付かなかったことに孟起は小さく舌打ちした。考え事をしてはいたが注意を散漫にしたつもりはない。今まで気がつかなかったのは笑って許せるものではない。不意打ちされていたらおそらく避けられなかっただろう。
「そこにいるのはわかっている。さっさと姿を現せ」
その人物が素直に出てきたのは孟起にとって予想外だった。少しボサボサの黒髪に強い意志を宿した黒い瞳。女子が言っていた少年幽霊かと思っていた孟起だったが、すぐに否定した。
確かに美形だが、どう見ても自分と同じくらいの年と身長。成人している青年で、どの角度からでも少年とは表現できそうにない。彼に対する女子の評価は可愛いではなく、孟起とは正反対の優しくて誠実そうで真面目なかっこいいになるだろう。
つまり、例の少年幽霊以外にもまだここにはいろいろいると予想される。実際、この学校、昼は弱かったが、夜は強い霊地場(霊や物の怪の溜まり場)と化している。七不思議になっていない霊がいてもおかしくない。現にトイレの花子さんも生徒の噂にない霊を言っていた。それ以上に孟起が意外だったのは殺気が相手から大して感じられないことである。走り回ってもいないのであの幽霊でもなさそうだ。絶対霊のたまり場になっている。
自然体ではないのでこいつも連れてこられた奴かとも考えたが、霊気が他の幽霊と違うことに気付いた。この気は・・・・・・。
「おまえ、生霊だな」
『そうなのか?』
自覚してろ!と叫びそうになるのを孟起は寸でのところで堪えた。
自覚がないということは自分が置かれている状況を理解していないことになる。これは非常に危険だ。特に幽霊の場合、そのことが最大の障害となり、成仏できなくなる場合も多い。知らないが故に己の霊力を制御できなくなる幽霊も珍しくない。除霊のときこれほど厄介なものはいない。
生霊の場合はもっと深刻でそのまま浮遊霊になってしまったなどということも十分起こりうるのだ。当の本人は自分が幽体離脱したことすら気づいていない場合、戻ろうという考えに至らないからだ。
「ここはおまえの居場所じゃない。ごたごたが起こらんうちにとっとと帰れ」
『すまないが、それはできない』
「サッサと自分の身体に戻れって言ってんだ」
『まだ、やるべきことが残っている。それに私一人の問題ではないため、独断で返事をするわけにはいかない。第一、私は死んでいる。戻るべき身体などない』
読み間違えたかと一瞬思った孟起だが、目の前に立つ美丈夫の放つ気は生霊のものだ。別の霊気が混じったのか、こいつが生霊を吸収したのか。
おそらく霊である自分を見て青年が勝手に死んだと勘違いしたんだろうと孟起は決め付けた。理由、前者は自分の読み間違いになり、後者では目の前にいる青年は悪霊となる。プライドの問題と自分に掛かる面倒が減るため。
「仲間がいるのか?」
一緒にいないってことはそいつがいるのは校舎内の別の場所ということになる。何かを企んでいるとも考えられる。そいつも霊の可能性が高い。生か死かはわからないが。
「待て、おまえ何者だ。何が目的でここにいる」
『教える義理はありませんね。あなたこそ何者です。この学校の生徒のようですが、用があるにしてはいささか遅すぎるのでは』
真夜中の二時過ぎに学校をうろつく人を怪しいと思わない人はいない。念のためと制服を着てきたが、それで疑われるのは孟起もわかっていた。どちらとも相手の質問に答えることなく、沈黙の睨み合いが続く。


                           続く
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