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11ー16、カナリア、歌う

エターナニル魔法学園特殊クラス

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「「おりゃ!!」」
落ちる直前にジアルとカズが体当たりしてリトアを弾き飛ばす。受け身も取らずに金網にぶつかったが、痛みを感じていないのか、瞳の光も戻ってこない。それどころか、転移してきたリング先生の槍を構える始末。
「完全敵対系?」
「マジかよ」
「まぁ、リトアとは授業で何度か対戦したことあるし」
何とかなるか、と前に出ようとしたカズをジアルが押し退けた。
「ちょ、本気のリトアなんて激レア俺も戦いってみたいっての」
「あー、リトアじゃないから。俺な。お前はそいつ見てろ」
「どいうこと?」
「構えが違う。レイカ、鏡見てみろ」
「は、はい」
扇を開き、中央の鏡にリトアを映し出す。表情が死んだリトアに纏わりつく男が・・・・・・・リング先生の亡霊がしっかりとリトアをホールドしている。手取り足取り槍術を教えているような格好だが、乗り移っているのは目に見えて明らかである。
「で、でも、霊なら祓えますぇ」
「そんな隙与えてくれっかな」
カズに抱えられて全身に鳥肌が立つ。誤魔化して笑ってみたレイカだったが、見破られたのかカズから笑顔を返された。
「ちょっとの辛抱なw」
「うー、やり辛いどす」
太陽の光をこの鏡で集約させて当てると浄化できる。このようにレイカは幽霊系に対してはかなり強い影響力を持っている。ただし、本人の運動神経があれなので当てるのはかなり難しい。本来は相手をその場に縛り付けてから使用する術なので、その辺の利便性はないのだ。
「形状変化の魔法と組み合わせたらどうだ?」
「せやなぁ、試しましょ」
術と魔法の組み合わせは実はかなり簡単である。術には属性という概念がないものが多いので混合させ易い。早速白い魔晶石を取り出し、術を吸い込ませる。その後、よく振って、薄く光ったら出来上がり。この間約20秒。遅いとは言えないが、何か防御手段がなければならない時間である。
「彼方より来たれ浄化の光よ、レイ!」
パリンと何かが割れる音がした。術の発動が遅いそう感じたレイカが上空を見上げる。虹色の空が欠け、そこから太陽の光が幾千もの光線と化して降り注ぐ。意識を乗っ取られているとは思えない身の熟しでリトアは光線を避けていく。リルクはその場で浮いたまま光線を受けても表情一つ変えなかった。
「これ、どんな攻撃?」
「光による浄化術の強化版魔法どす」
剥き出しの魂には効果絶大である。逆に言うなれば、殻に収まっている魂には効果がない。リルクが生身で浴びていても影響が出ていないのがいい例である。そして、弾幕ではあるが、隙間がない訳ではないので、完全に避けられないものでもない。寧ろ、術の構成上どうしても空白ができてしまう。それがわかっているというように、リトアはその隙間に身を投じている。
「ゼイヤァァァ!」
ジアルが渾身の蹴りで押し込もうとしたが、スルリと上に躱されてしまった。それどころか、身長の低さをあざけ笑うかのように越えられてしまう。
「あ、マズっ」
槍が掠っただけであっけなく貯水槽の壁にヒビが入り、水が溢れ出す。あの幽霊、帯電体質だ。この状況は非常に不味い。屋上に流れ出た水にバリバリバリと電流が走る。動ける範囲が狭まってしまった。主に出入り口近くに流れ、跳んで渡れるかギリギリの幅で溜まったしまった。飛び散る電撃によってあっという間に水が電気溜まりになった。
「これ、バリバリっといくよな」
「いきそうどす」
触るのもアウトだろう。となると、逃げられる通路は限られている。屋上からダイブするか、リトアを撃破するか。あの雷槍に操られている限り撃破は至難の業である。あの動きは、リトアが本来習得している体術ではなく、リングのものだろう。
「守り光れ、レイシャワー!」
カズに届きそうになっていた槍がピタリと止まる。直線状に降り注いだ光のヴェールを恐れたのだろう。浄化の光だ。
「サンキュー、助かったぜ」
直前まで迫っていた槍先が引っ込んでフゥと息を吐く。緊張しているわりに戦いなれていると言おうか、カズの動きにはあまり迷いがない。騎士の生まれだとしても、こうまで・・・・・・カーレントで一悶着あったレイカよりも慣れている。
「笑ってられる程余裕なんどすか?」
「あ、これ?ちと事情があってね・・・」
「糸目似合ってはりますなぁ。そっちの方が本物みたい」
「あははは、冗談ポィだぜ。でだ、あの先生は下りてきても何で歌い続けている訳?攻撃できないって感じじゃないし。歌い続けないと効力ない系?」
「うーん、効力切れる系だと思う」
歌もループしているので間違いないと思われる。リング先生をリトアに憑かせ、それを維持させているのがあの歌だろう。何とかして止められたらいいのだが、今のところレイカにいいアイデアは湧いてこなかった。

                                 続く
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