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10ー17、カメ、未成年に見える20代後半

エターナニル魔法学園特殊クラス

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「はい、レイカどす」
『・・・・・・』
「えっと、間違い電話どすか?」
曲が折り返す以上は鳴っていたのだ。それはないはず。ディスプレイを確認するとリトアとなっていた。席立ちしたのなら切るだろうし・・・・・・。
『・・・僕』
「ロンはん?リトア先輩やあらへんで?」
『・・・そう』
3分以上鳴った理由はわかった。
「リトア先輩はどないしはったんどす?」
『・・・出掛けた』
「何所にかわかる?」
聞き耳を立てていたイスカが尋ねる。
『・・・・・・』
返事がないということはわからないのだろう。リトアのことだから最低限の伝言は残していきそうである。
「何か伝言あらへんか?」
『・・・・・・明日には戻る』
「何か用事が出来たの?」
『・・・・・・』
ダメだ。電話越しでは肯定の沈黙なのか否定の沈黙なのか区別がつかない。イスカが困っているとレイカが参戦した。
「ひょっとして、秘密にしてほしいと言われたんどすか?」
『・・・そう』
返事が来た。なら、さっきのは否定の沈黙だ。
「ってことは、別行動中?」
『・・・そう』
「リトア先輩、誰かに会いに行ったんどすか?」
『・・・そう』
「誰だかわかる?」
『・・・・・・』
「行先はどうどすか?」
『・・・・・・』
行先もわからない、と。そこまで内緒にしなければならない相手となると、レイカが知っている範囲では1つ、いや、2つある。薬屋とマフィアの本拠地。パッと見、1つは大丈夫なようだが、抱えている秘密は世間的にどっこいどっこいであることをレイカは知っている。
「せや、ニュース見はった?」
『・・・うん』
「学校に連絡してない?」
『・・・うん』
リトアがしようとしたのをロンが止めたそうだ。その後、連絡をしないようにと念を指し、念には念をと予備の携帯をポケットから抜き取ったのだった。ロンなりに危機を感じたのだろう。単に連絡が入ってこないから保留している可能性もある。
『・・・先生詐欺に注意』
「了解。リトア先輩が戻って来たら連絡頂戴」
『・・・了解』
「ほな、またなぁ」
『・・・また』
「こっちも出たぞ」
ジアルの言葉に二人は携帯を覗きこむ。そこには、読めない文字の羅列があった。
「これ、何語?」
「うち読めへん」
「俺もわかんねーから交易共通語や獣語やエルフ語ではないな」
「語学に精通している人って言ったら?」
「ロイズはん」
「カズだな」
「リルク先生を押すわ」
この中で学園爆破事件に関わっていないで連絡がつくのは一人しかいない。ジアルに連絡を任せながらイスカとレイカはテレビを見ながらデザートを食べ始めた。
「う~ん、イチゴショートケーキ美味しい」
「モンブランもいけますぇ」
「俺の分も・・・・・ん?」
残しておけよ、と言おうとした言葉をジアルは飲み込んだ。観光客の集団の向こうに心当たりがある人物がやってくるのが見えた。
「まずい。お前ら、行くぞ」
「誰か来たの?」
「警察がウロウロしている。俺ら未成年だ。職質されたら面倒だろ」
「げ、それは確かに」
丁度持ってきた最後のゼリーを流し込むとジアルは会計を済ませた。割り勘な、としっかり念を指しながら、三人は人ごみの中に身を隠した。


                               続く
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