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10ー3、カメ、妥協策を考える
エターナニル魔法学園特殊クラス
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「となると、部屋替えがあるか」
「へ、何で?」
「クラス単位で動くことが多くなるからな。固まってた方が何かと便利だろ」
「納得どす」
同学年が固まるのでリトアは独り部屋になるのだろう。
ピロリロリン、ピロリロリン♪
「あ、僕です」
携帯を軽く見せてリトアは席を立って外に出た。
「上級生の事情って複雑怪奇ね」
「そうどすか?ご飯当番があるだけと違ぃます?」
「そうだな。委員会はお前らもあるんだし」
「・・・あたし、何になるのかしら?」
「体育だな。レイカは図書だろう」
ロイズの回答は妥当なところだった。他にどんな委員会があるのかと尋ねると、会計、保健、ギルドがあると返ってきた。特殊クラスにいるのは新しくリトアを含めて5人。委員会は6つ。一人足りない。
「上級生は決まってるしな」
ロンは会計でリトアは保健である。
「誰かもう一人くるってことある?」
「稀有な奴がいたらな」
全員が食べ終わり、それぞれの部屋まで戻った。テストは午前中までなので午後は自由時間に当てられている。本来は答え合わせに使われるこの時間だが、二人とも気は漫ろだった。早々に切り上げて、記憶合わせに入る。
大体が三回目の記憶と同じだった。イスカが故郷を救ってから入学し、レイカの手元には火狐の皮衣がある。イスカは通常通りに入学し、レイカは一か月遅れて入学した。遅れた理由は霧白森に行っていたから。クンツァイトからの依頼も受けている。そして、肝心の前回の記憶だが、どちらも無事に残っていた。つまり、ほとんどその通りに進んでいるということである。
「けれど、結局何で巻き戻ったかはわかんないのよね」
「途中に戻った理由もわからへんなぁ。うち、寝ようとしただけどす」
「あたしもよ。依頼終了してベッドでバタンキューしたと思ったんだけど。そうだ。ロイズに相談してみない?」
「ロイズはんに?」
レイカも考えてはいたことだった。ただ、彼が敵だった場合、それは悲惨な結果しか生まない。敵方に情報を得ている人がいる場合、こっちのことも警戒されているだろう。そこに、ノコノコと自分達は情報を持っていますと言いに行くのだ。今のところ敵側だと確定しているのはリング先生だけ。確かに彼なら話せばリング先生の近況を知っているかもしれない。彼らが、本当に、味方、ならば・・・・・・いや、敵であってもイスカは情報を渡す気だとレイカは気が付いた。
「せやなぁ、相談しましょう」
「うんうん」
同意が得られて嬉しいのかイスカはベッドの上で弾んだ。ならば善は急げ、すぐに行こうと弾むのを止めてレイカの手を取ると部屋を出た。手を引かれながら、寮の廊下を早足で歩く。表札が掛かっていないドアがちらちら見える。女子寮一年の階は満室だったはずなのに。
「ロイズ!話が・・・ある・・・・・・」
研究室のドアを勢いよく開け放ち、イスカは固まった。何事かとレイカも脇から覗く。部屋の中にロイズはいなかった。代わりにロンがいて、見知らぬ青年と抱き合っていた。男性の顔は見えないが、かなりガタイのいい体をしている。机に立てかけている見慣れない大剣も彼のだろう。背だってかなり高い。ボンと音を立ててレイカの顔が真っ赤になった。
「ちょっとだけいい?部屋の主は?」
硬直から解けたイスカが尋ねる。
「・・・寮」
珍しくロンの目が語っている。早く行け、と。二人はそそくさと退散した。
「ロンはんに恋人いはったんどすなぁ」
「その辺のこととは無縁って感じなのに。というか、ロイズじゃなかったのね」
「ロイズはんとロンはんは主従って感じどすなぁ」
等と言っている単純バカと人見知りも恋人同士である。ロンからしたら、余計なお世話だろう。
「しかし、参ったわね」
「さすがに寮でできる話ではあらへんなぁ」
はてさて、やることをなくした二人はダメ元で男子寮にやってきた。女子寮の隣にあるので研究室に行ってからの方が遠いのだが、ロイズがここを利用しているとは二人とも思ってなかった。あの研究室、ベッドがあるのだ。あと、コンロも冷蔵庫もあった。本来イスカが入寮するはずだった男子寮は女子寮に比べて薄暗い印象を受けた。良く言えば風情がある。悪く言えばボロい。
「勝手に入って大丈夫なんどすか?」
以前はロンの招待があったから入れた。今回はどうだろうか。
続く
「へ、何で?」
「クラス単位で動くことが多くなるからな。固まってた方が何かと便利だろ」
「納得どす」
同学年が固まるのでリトアは独り部屋になるのだろう。
ピロリロリン、ピロリロリン♪
「あ、僕です」
携帯を軽く見せてリトアは席を立って外に出た。
「上級生の事情って複雑怪奇ね」
「そうどすか?ご飯当番があるだけと違ぃます?」
「そうだな。委員会はお前らもあるんだし」
「・・・あたし、何になるのかしら?」
「体育だな。レイカは図書だろう」
ロイズの回答は妥当なところだった。他にどんな委員会があるのかと尋ねると、会計、保健、ギルドがあると返ってきた。特殊クラスにいるのは新しくリトアを含めて5人。委員会は6つ。一人足りない。
「上級生は決まってるしな」
ロンは会計でリトアは保健である。
「誰かもう一人くるってことある?」
「稀有な奴がいたらな」
全員が食べ終わり、それぞれの部屋まで戻った。テストは午前中までなので午後は自由時間に当てられている。本来は答え合わせに使われるこの時間だが、二人とも気は漫ろだった。早々に切り上げて、記憶合わせに入る。
大体が三回目の記憶と同じだった。イスカが故郷を救ってから入学し、レイカの手元には火狐の皮衣がある。イスカは通常通りに入学し、レイカは一か月遅れて入学した。遅れた理由は霧白森に行っていたから。クンツァイトからの依頼も受けている。そして、肝心の前回の記憶だが、どちらも無事に残っていた。つまり、ほとんどその通りに進んでいるということである。
「けれど、結局何で巻き戻ったかはわかんないのよね」
「途中に戻った理由もわからへんなぁ。うち、寝ようとしただけどす」
「あたしもよ。依頼終了してベッドでバタンキューしたと思ったんだけど。そうだ。ロイズに相談してみない?」
「ロイズはんに?」
レイカも考えてはいたことだった。ただ、彼が敵だった場合、それは悲惨な結果しか生まない。敵方に情報を得ている人がいる場合、こっちのことも警戒されているだろう。そこに、ノコノコと自分達は情報を持っていますと言いに行くのだ。今のところ敵側だと確定しているのはリング先生だけ。確かに彼なら話せばリング先生の近況を知っているかもしれない。彼らが、本当に、味方、ならば・・・・・・いや、敵であってもイスカは情報を渡す気だとレイカは気が付いた。
「せやなぁ、相談しましょう」
「うんうん」
同意が得られて嬉しいのかイスカはベッドの上で弾んだ。ならば善は急げ、すぐに行こうと弾むのを止めてレイカの手を取ると部屋を出た。手を引かれながら、寮の廊下を早足で歩く。表札が掛かっていないドアがちらちら見える。女子寮一年の階は満室だったはずなのに。
「ロイズ!話が・・・ある・・・・・・」
研究室のドアを勢いよく開け放ち、イスカは固まった。何事かとレイカも脇から覗く。部屋の中にロイズはいなかった。代わりにロンがいて、見知らぬ青年と抱き合っていた。男性の顔は見えないが、かなりガタイのいい体をしている。机に立てかけている見慣れない大剣も彼のだろう。背だってかなり高い。ボンと音を立ててレイカの顔が真っ赤になった。
「ちょっとだけいい?部屋の主は?」
硬直から解けたイスカが尋ねる。
「・・・寮」
珍しくロンの目が語っている。早く行け、と。二人はそそくさと退散した。
「ロンはんに恋人いはったんどすなぁ」
「その辺のこととは無縁って感じなのに。というか、ロイズじゃなかったのね」
「ロイズはんとロンはんは主従って感じどすなぁ」
等と言っている単純バカと人見知りも恋人同士である。ロンからしたら、余計なお世話だろう。
「しかし、参ったわね」
「さすがに寮でできる話ではあらへんなぁ」
はてさて、やることをなくした二人はダメ元で男子寮にやってきた。女子寮の隣にあるので研究室に行ってからの方が遠いのだが、ロイズがここを利用しているとは二人とも思ってなかった。あの研究室、ベッドがあるのだ。あと、コンロも冷蔵庫もあった。本来イスカが入寮するはずだった男子寮は女子寮に比べて薄暗い印象を受けた。良く言えば風情がある。悪く言えばボロい。
「勝手に入って大丈夫なんどすか?」
以前はロンの招待があったから入れた。今回はどうだろうか。
続く
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