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9ー12、ウサギ、自腹は痛い
エターナニル魔法学園特殊クラス
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「ふぅって、もうこんな時間?!」
「何かあるんどすか?」
「じ、実はね」
申し訳なさそうにイスカは話し始める。イスカの素早い行動のおかげで侵略は防がれた。首都も崩壊することなく国民の平和が守られた・・・・・・そう、首都は。叔父が潜んでいた外れの山里はイスカが放った大魔法によってそれはもう派手に吹き飛ばされた。村民ごとではないのが救いだった(追い出されていたのを承知ではあった)。
「という訳で、学費自払いなのよ」
「大変どすなぁ」
「・・・ガンバ」
「学園ギルドがなかったらバイト三昧だったわ」
学園にあるには非常識な感じもするが、金欠生徒にとっては健全でありがたい稼ぎ口である。先生が吟味しているからか初級向けが多い。もちろん上級生と一緒ならレベルの高い依頼を受けることができる。今イスカはロイズの名義を借りてちょっと上の依頼を受けている。
「今回は山賊捕り物よ。やりがいがあるわ」
「危なくあらへんか?」
「ないわけじゃないけど、学園ギルドに通されるくらいよ」
初犯程度じゃあたしの相手にならないわ。胸を張るイスカにちょっと安心したが、やはり武器持ち相手だと不安だった。だが、魔法が使えない&体術がいまいちレイカがついて行っても足手まといになるだけなのは目に見えている。かといって、ロンに同行を頼むとイスカの力を信じていないことになる。
「ほな、頑張ってなぁ」
結局出発時間まで何も言えず、船の上で手を振るイスカを笑顔で見送ることしかできなかた。水平線の向こうに行ってしまうとレイカはフゥッと溜息を吐いた。
「レイカちゃん、ここにいたんだ」
「リトア先輩、こんにちは」
「あれ?イスカさんは?」
君ちゃん呼びができないからだろうけれど、下級生にさん付けというのもどうだろうか。
「今、出発しましたぇ」
「むぅ、入れ違いになったのかな」
「リトア先輩、イスカはんに用事どすか?」
携帯を取り出すが、リトアは首を横に振った。
「2人に用事、って程じゃないかな。有効期限近いしよかったら行かない、ってお誘い」
差し出された紙に視線を落とす。厚手の赤紙に金の文字で何か書かれている。流れるような線で描かれたそれは共通語のようだが、崩してあってレイカには読めなかった。
「貰い物だけど、サーカスの入場券だよ」
こっちの時界にもあるんだとレイカはマジマジと見詰める。
「よかったら2人でって思ったんだけど」
「2枚しかないんどすか?」
「そうだね」
「先輩が他の人と一緒に行ったらどうどすか?」
「皆忙しいから難しそうかな」
携帯を取りだし電話をかけ始める。十数件かけ終えた時にはリトアはすっかり落ち込んでいた。その表情を見れば、返事はわかる。
「皆忙しいって」
「この時期って何かあるんどすか?」
「第2中間が近くなる前だから稼ぎ時ではあるよ。レイカちゃんは大丈夫かな?」
「うちは平気やけど、ええんどすか?」
「もちろんだよ」
赤外線通信で携帯のアドレスを交換する。
「それじゃあ、授業調節してくるね」
チケットを1枚渡すとリルクは嬉しそうに歩いて行った。レイカも授業調整を携帯で済ます。慣れないので手間取ったが、何とかなったようだ。
続く
「何かあるんどすか?」
「じ、実はね」
申し訳なさそうにイスカは話し始める。イスカの素早い行動のおかげで侵略は防がれた。首都も崩壊することなく国民の平和が守られた・・・・・・そう、首都は。叔父が潜んでいた外れの山里はイスカが放った大魔法によってそれはもう派手に吹き飛ばされた。村民ごとではないのが救いだった(追い出されていたのを承知ではあった)。
「という訳で、学費自払いなのよ」
「大変どすなぁ」
「・・・ガンバ」
「学園ギルドがなかったらバイト三昧だったわ」
学園にあるには非常識な感じもするが、金欠生徒にとっては健全でありがたい稼ぎ口である。先生が吟味しているからか初級向けが多い。もちろん上級生と一緒ならレベルの高い依頼を受けることができる。今イスカはロイズの名義を借りてちょっと上の依頼を受けている。
「今回は山賊捕り物よ。やりがいがあるわ」
「危なくあらへんか?」
「ないわけじゃないけど、学園ギルドに通されるくらいよ」
初犯程度じゃあたしの相手にならないわ。胸を張るイスカにちょっと安心したが、やはり武器持ち相手だと不安だった。だが、魔法が使えない&体術がいまいちレイカがついて行っても足手まといになるだけなのは目に見えている。かといって、ロンに同行を頼むとイスカの力を信じていないことになる。
「ほな、頑張ってなぁ」
結局出発時間まで何も言えず、船の上で手を振るイスカを笑顔で見送ることしかできなかた。水平線の向こうに行ってしまうとレイカはフゥッと溜息を吐いた。
「レイカちゃん、ここにいたんだ」
「リトア先輩、こんにちは」
「あれ?イスカさんは?」
君ちゃん呼びができないからだろうけれど、下級生にさん付けというのもどうだろうか。
「今、出発しましたぇ」
「むぅ、入れ違いになったのかな」
「リトア先輩、イスカはんに用事どすか?」
携帯を取り出すが、リトアは首を横に振った。
「2人に用事、って程じゃないかな。有効期限近いしよかったら行かない、ってお誘い」
差し出された紙に視線を落とす。厚手の赤紙に金の文字で何か書かれている。流れるような線で描かれたそれは共通語のようだが、崩してあってレイカには読めなかった。
「貰い物だけど、サーカスの入場券だよ」
こっちの時界にもあるんだとレイカはマジマジと見詰める。
「よかったら2人でって思ったんだけど」
「2枚しかないんどすか?」
「そうだね」
「先輩が他の人と一緒に行ったらどうどすか?」
「皆忙しいから難しそうかな」
携帯を取りだし電話をかけ始める。十数件かけ終えた時にはリトアはすっかり落ち込んでいた。その表情を見れば、返事はわかる。
「皆忙しいって」
「この時期って何かあるんどすか?」
「第2中間が近くなる前だから稼ぎ時ではあるよ。レイカちゃんは大丈夫かな?」
「うちは平気やけど、ええんどすか?」
「もちろんだよ」
赤外線通信で携帯のアドレスを交換する。
「それじゃあ、授業調節してくるね」
チケットを1枚渡すとリルクは嬉しそうに歩いて行った。レイカも授業調整を携帯で済ます。慣れないので手間取ったが、何とかなったようだ。
続く
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