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9ー4、カメ、ネコに会う

エターナニル魔法学園特殊クラス

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 それから港までの3週間は平和な旅路だった。通り過ぎた町で地図を買い、御者の教えの元レイカは着実に地理情報を手に入れていった。買ったばかりの地図もすぐに上書きされ、見事なグルメマップになった頃、馬車は港へと到着した。18日もの間退屈しなかったのは偏に御者のトーク術のおかげだった。どちらにとってもそれぞれの文化は謎が多いので話すことには事欠かなかった。
「寂しくなりますね」
「はい、色々とありがとうございました」
客室に荷物を運び終え優雅にお辞儀した御者にお礼を言う。見送りもしてくれた。エルフは排他的な種族じゃなかったっけ、と世間の評価を見直していたレイカは非常に目立っていた。エルフに見送られたことで注目を集めてしまったようだ。人目を避けるように前方甲板に移動する。そこで発見した生徒にレイカは目を輝かす。ぼんやりと風に当たりながら海を眺める生徒に駆け寄る。軽く後ろにあげた柔らかな蜂蜜色の髪、長身なのにどこか頼りない薄い身体。間違いない、彼女は・・・・・・。
「リトア先輩!」
呼んだ後に気が付いた。
「えっと・・・・・?この船に乗っているってことは新入生かな?初めまして、でいいんだよね?」
初対面だった、と。屈んで視線を合わせてくれたリトアに罪悪感が湧く。挨拶でハグする習慣がない国に生まれて本当によかったと思う。何とか誤魔化さなければと笑顔のまま必死に続く言葉を探す。
「はい、このたび魔法学園に入学することになりましたレイカと言います。リトア先輩のことは先輩でもある従姉から話を聞いて会って見たいなと思っていたんどす」
この間1秒。嘘ではない言葉にとびっきりのスマイルを添付する。
「それで僕の名前を・・・・・・・こちらこそよろしくね」
少し寂しそうな笑顔だった。心の中で必死に謝る。リトアが記憶喪失なのは変わらないようだ。昔の知り合いと誤解されるわけにはいかない。違うのだから。
「先輩はもうクラス分けあったんどすか?」
露骨な話題逸らしは基本である。
「まだだけど、ギルド成績とかで僕たぶん戦闘クラスになりそうかな」
同世代の人間と比べても身体能力の低いレイカは確かに戦闘クラス向きではない。腕立て伏せができないレベルで力がないのだ。普通のクラス分けだと召喚クラスかアイテムクラスになりそうだ。あくまで、知識と身体能力を見ればであって、能力を見ると間違いなく特殊クラスである。そう言えば、前回も前々回もリトアの特別クラスは謎のままだった。
「新学期早々依頼どすか?」
「うん、ちょっと忙しいのもあって。その帰り。レイカちゃんはどうしてこんな時期に」
「遠かったんどす」
転送地点がとはさすがに言えなかった。確認し忘れたレイカの失敗だが、あんな内陸の国ならユーキも何かしらの反応をくれればよかったのではないか。
「そっか、学園生活は大変だけど楽しいよ。もしよければ施設を案内しようか?」
「ほんまに、ありがとうございます」
善意からの好意は喜んで受ける。たとえ知っている情報でも。人関係円満の秘訣である。ただし、これはツマラナイ表情を隠せる人に限る。レイカはそれができる人だった。


                              続く
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