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8-14、ウサギ、首を傾げる

エターナニル魔法学園特殊クラス

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「急に温泉だなんてどういう気の周り?」
「タマニハイイダロ」
「ロイズ先輩、私達着替えも何も持っていないのですが」
「買エバイイダロ」
「ひょっとしてロイズはん宵越しの銭は持たないタイプどすか?」
「ドチラカト言エバソウダナ」
ちょっと意外に思いながらレイカは甲板に出た。潮風ではないが、優しい風が東から吹いている。
「ソウダ。旅館トほてるドッチガイイ?」
風と感じながらイスカとお喋りをしていると甲板に上がってきたロイズがそう尋ねてきた。
「こっちで決めてええんどすか?」
「マァナ」
今から予約するつもりだろうか?ビジネスホテルではあるまいし、そうすぐに取れるとは考えられないのだが。
「レイカちゃんが決めていいわよ。あたしはどっちでもいいし」
「ほな、旅館で」
久しぶりに和風の部屋でのんびりしたい。数日間のホテル生活ですっかり和が恋しくなったレイカだった。
「オ前ラハ旅館ノ方ナ」
イスカとレイカがおかしいぞとロイズの言葉を疑問に思った時は迎えの馬車にロンとロイズが乗らなかった時だった。
「「「ようこそいらっしゃいました」」」
若女将だけでなく女将と番長、おそらく全従業員きってのお出迎えにイスカとレイカの口がポカーンと開いたままになる。
「魔法学園ギルドの方々ですね。お待ちしていました」
女将にそう言われ、氷っていた空気が動き出す。
「「騙された!」」
「あはは」
笑いながらリトアは荷物を従業員に預けた。半ば放心状態の二人を連れたリトアが案内されたのは藤の間というかなり大きな部屋だった。綺麗な畳に真新しい茣蓙の香りが出迎える。年代物の卓袱台には雰囲気にあった紫色の花が飾られている。奥には内風呂が備え付けられている。
「本当にこの部屋を使っていいのですか?」
リトアが驚くのも無理はなかった。おそらく、この宿で一番いい部屋だ。
「ええ、精一杯のお礼として」
「つまり、それだけの働きをしろと」
「ええ、まぁ。ですが、来たばかりでは何ですしその話は夕食後にいたしましょう」
「ありがとうございますぇ」
「浴衣はこちらに入っております。サイズが合わなかったら遠慮なく申し付けください」
「ほな、子供用1枚」
中学生くらいと言ってもまだまだSサイズは丈が長すぎる。この年で子供用は情けない気もするが、合わないものは仕方がない。
「あたしはSで大丈夫よ。先輩はどう?」
「Mサイズが合うと思うかな」
「大丈夫そうですね。お風呂は一階の右角になります。とう旅館自慢の景色が見られますよ」
それではごゆっくりとお辞儀をして女将は部屋を後にした。
「楽しみだね」
「そうどすなぁ」
「あ、あたしはパス」
「具合でも悪いのかな?」
「そういう訳じゃない、と言おうか。そうだよって、言おうか」
「ひょっとして、あの日どすか?」
「そ、そう、その日なのよ」
「それは大変だね」
「大浴場は無理どすなぁ」
結局、大浴場にはレイカとリトアが行くことになった。二人を見送った後、内湯にお湯を溜めながらイスカは首を捻る。あの日とは何のことだろうか?と。

                             続く
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