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8-6、カメ、奮闘する

エターナニル魔法学園特殊クラス

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「ま~ほうがくえん~の、かたがた~です~ね」
「何ノコトダ?」
「と~ぼけったって~む~だで~す」
フードの男がニタリと不気味に笑う。その手には何かのスイッチがあった。
「さ~あ、わがせ~いえいたち~。た~たかいなさ~い!」
「サセルカ!」
ロイズが放った弾丸がスイッチを破壊するよりも早く男はボタンを押した。爆発するショーケース。その中から合成された魂達がまるで救いを求めるかのように一直線にイスカ達に向かってくる。
「きゃー!」
1人違う意味で悲鳴を上げた。そして淡い緑の一閃。ミルクの鎌に触れた幽霊は次々とポーチに吸い込まれていく。別方向から来た集団もレイカの扇の鏡の中に吸収されていった。
「幽霊なら何とでもなるんです」
「それに同意しはりますぇ」
「さすが、死神に霊媒師!」
「・・・イスカ」
「へ、あたしなんか悪いことした?」
「敵ニ余計ナ情報与エルナ」
あ、とイスカが気が付いた時にはローブの男の口は限界まで裂けていた。
「や~ぱり、まほうがくえんのひとで~す」
「私は違うです」
鎌を振るいながらミルクが反論する。一振りで十体近く逝かせるのだから大したものだ。
「だったら何だってのよ?」
それは八割九分認めていることになるんだが、と二人の発言にロイズが頭を抱える。
「ま~ほうがくえんのひと、くるDEA~TH」
奥のドアを開け放つ。そこにはオークが8体、彼らも改造を施されている。狼の脚だったり、螳螂の腕だったり。
「人体改造にまで手を出しているのか!?」
「動物実験ト変ワリナインダガナ」
空中から襲ってくる改造霊をミルクとレイカに任せ、ロンとリトアはオークの前に出た。腰の刀を抜刀するロンに、呪文を唱え始めるリトア。オークも二人に只ならぬものを感じたのだろう。歩みを止め、威嚇する。
最初に動いたのはロンだった。空気をあえて無視した一歩を踏み出した次の瞬間、一匹の首は胴体からさよならしていた。それに真っ先に反応したオークの顎をリトアの蹴り上げが捕らえる。気絶したオークを蹴り飛ばし、三体巻き込んで壁にめり込ませた。一気に四体も倒されたオークは怒り狂い、重い拳で暴れまくる。それでもレイカの前に出て構えているイスカの元までいかないのは偏にロンとリトアの実力だろう。大ぶりの一撃をリトアが伏せてかわしただけかと思ったが、その腕をロンの刀が真っ二つに切り裂く。腕がなくなったオークは悲鳴を上げることなく頭部が陥没した。
「すご、開始一分も経たずして残り2体とか」
「ソレクライデキナイデハ困ル」
「あ~なたがたはたたかわな~いのです~か?」
「ヤッテルダロ。オ前ノ牽制」
「早くバトりたいんだけどね」
イスカが手でちょいちょいと誘っても黒いローブの男はニタニタ笑うだけで返す気はないようだ。試しに炎を投げつけてみたが、見えない壁に阻まれた。
「もう少し出力を上げたいんだけど」
「生キ埋メニナリタイノカ?」
「はーい、控えます。ところで、あいつ魔族でいいんだよね」
「ハァ?ヨク見ロ。アレノドコガ魔族ダ」
「あれのどこをどう見たら人に見えるのよ?!」
「・・・どうもこうも」
「魔族も人だから、かな」
「エターナニルの人達は最近まで魔族と戦争やってたから忘れがちです」
「カーレンティアンは魔族の存在知らへん人が圧倒的に多いからなぁ」
オーク達を倒したロンとリトア、幽霊の集団を浄化しつくしたレイカとミルクが二人の元に合流する。
「サテ、戦力ハコレダケカ?マダアルナラ出セ。徹底的ニ叩キ伏セテカラ捕マエテヤル」
「ま~だDea~th。と~っておきがのこっていま~す」
黒いローブの男が腕を上げると同時に天井が崩れ、巨大な牛頭が現れる。それはトロルのような巨体についていた。手には大きな斧が握られている。
「ミノタウロスかな」
「確か、ギリシア神話やったどすなぁ」
「そ~の通~り。あ~なた、博識~ね」
エターナニルではマイナーでもカーレントではメジャーな神話だからレイカが知っているのは当たり前である。
「私力バカはちょっと・・・・・・・」
早々にミルクが戦力外宣言をする。
「じゃあ、あたしが」
「馬鹿カ。体格差ヲ考エロ」
「・・・逃走」
ロンの言葉に全員頷くと入り口目掛けて全力疾走した・・・・・・しかし、回り込まれてしまった。
「チ、りとあトみるくハ魔道士ヲ見張レ」
「「はい」」
「みのたうろすハ特殊くらすデ迎撃スル!」
「そうこなくっちゃ」
「はいな」
「・・・了解」
それぞれの獲物を構え、ようとしたところでミノタウロスの先制攻撃。重い斧の薙ぎ払いが四人を襲う。イスカはレイカを抱えて上に跳ねる。そして、充血した目が合う。
「げ、やば」
レイカを後ろに放り投げ、向かってきた斧を白刃取りする。刃は防げたが、イスカは柱に叩きつけられた。もう一撃と斧を振り下ろそうとしたミノタウロスの体勢が崩れる。薙ぎ払いを屈んで避けたロンが腱を斬ったのだ。片足が付いたところに雷が命中する。かなり高圧の電撃だったらしく、ミノタウロスは沈んだ。
「誰ノダ?」
「レイカちゃんじゃないの?」
あたしはできないし、とイスカ。
「うちじゃあらへんよ」
ロンは?とレイカが視線を送る。
「・・・無理」
「ダヨナ」
モノアイが飛んできただろう方向を見る。そこには呆然としたローブの男がいて、それを逃さなかったリトアの蹴りが鳩尾に決まり、男は呆気なく地に伏した。
「何ダ只ノ自滅カ」
「イスカはん、怪我あらへん?」
「大丈夫、熔かしたから」
ロンが棒で突いている液体がそうなのだろう。外気温でもう固まりそうだ。
「逆に今触らないで、火傷するから」
湯気の上がる手を必死にクールダウンしている最中だ。心配しているレイカを見ていると、元の姿に戻って力比べしたかったとかそういう気持ちは全部吹っ飛んで行った。


                              続く
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