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7-10、カメ、肌寒い
エターナニル魔法学園特殊クラス
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「なんかいつもと違うな・・・」
「人の気配しまへんなぁ」
窓ガラスを壊して校舎内に侵入する。良いのかと聞いたらしょっちゅうだから大丈夫だと言われた。
「先輩どこやろか?」
「なぁ、何か寒くないか?」
日が落ちているが、今は初夏。寒さに弱い人でもそろそろ半袖に手を出したい時期だろう。そう考えると確かに校舎内に入ってから若干肌寒く感じる。これは・・・・・・、
「やな寒さどすなぁ」
「お、リトアじゃね」
廊下の角に消えた人影を指してカズが呟く。急いでその角まで走ったが、廊下の先には誰もいなかった。どこかの部屋に入ったのかと調べたが、どの部屋にも鍵がかかっている。嫌な予感しかしない。
「おかしいな。確かにリトアだったんだが」
「ドアの開く音しまへんかったなぁ」
「なら、あいつどこにい、冷てぇ」
何かの液体がカズの首筋に落ちた。ジュワと音がしたかと思うとその水が表皮を溶かした。
「うわッ」
レイカは慌ててハンカチを取り出すとその粘液を拭った。
「カズはん上に」
「何ッ・・・・・・いないぜ?」
「排気口の中に戻っていきはりました」
「どんな奴だった?」
「なんていうやろ・・・こう、ニョロ~っとしてはったような・・・・・」
「蛇かなんかだったんだろうな。こんな時期に妙なもんが紛れ込みやがって」
「それはこっちの台詞だ」
まぶしい光に振り向くと先生を従えた生徒会長が睨みつけていた。
「夜間入校禁止令が出されているはずだ。お前たちここで何をしている」
「まだ夕方だぜ」
「ごめんなさい、知らなくって」
「知らぬだけか」
「いくら待っていてもお兄ちゃん帰ってこなくって。それで不安になって学校に迎えに行ったんどす」
「で、それを見かけた俺が咄嗟に追いかけたってわけ」
そうだったのか、と先生が安堵の表情を見せる。生徒会長はまだ納得できないのか眉間のシワがとれていない。
「なら問題ないな。貴様の兄はこちらで探す。帰っていいぞ」
「ちょ、普通そういう時って「一緒に探す」って話にならない」
「ならん。さっさと帰るがいい」
もちろん、レイカもカズもごねた。何とか話をつけようと頑張った。だが、結局先生達に問答無用で校門から追い出されてしまった。
「ちぇ、お堅い生徒会長さんに見つかったらやっぱ無理か。先生だけなら言いくるめる自信あったんだけどよ」
「カズはん、校舎が!」
レイカの声に振り向いたカズも口をポカーンとあけて驚愕した。先程まで何もなかったはずの校舎が闇の中でボーっと怪しく光っている。校舎全体ではなく、部分部分で発光しているのがまた不気味である。
「・・・・・・・なんじゃこりゃ!?」
「・・・何やろ?自然光みたいやけど」
お互い無言のままロープを結んだところまでやってきた。まだ撤去されてなかったそれを使って再度校内に忍び込む。レイカの提案でハンカチを口と鼻に充てて校舎内に入るとそこには紫色のガスが充満し、先生方が倒れていた。
「心配ない。寝てるだけだ」
先生のポケットを漁って鍵束を手に入れたカズが言う。
「今のうちに見て回ろうぜ」
「はい、って何でうちら職員室に来てはりますの?」
「そりゃ、テスト見る為っしょ」
「・・・・・・」
「そんな目で見るなって。ここじゃこれも実力の内ってね」
「そうなんどすか?」
「そうなんどす。俺、魔法学と数学が不安なんだよなぁ」
「どっちも得意やし、うちでよければ教えるえ?」
「ちょwwせめてお兄さんにしてwwww」
カズの腹筋がまた崩壊しそうになったその時だった。ズルズルと何かが這いずる音が教室内に響きだしたのは。
「な、何だ?」
「何かいはる?」
2人は背中合わせになり、レイカはポケットから扇を取り出し、臨戦態勢に入る。ズルズルと言う音は次第に近づいていき、ついには彼らいる部屋の壁のすぐ内側まで来た。部屋中に響き渡る這いずる音はもう耳を澄まさなくてもはっきりと聞こえるほど大きくなっていた。
「何かが近づいているな」
「蛇のようどす。ややわ~」
緊張感があるカズとは違い、レイカの口調ではどうも呑気で仕方がない。
「お前がいると適度な緩和感があるよな」
「お褒め預かり恐縮どす」
「あははは、あんまし褒めてない」
ガラッと教室のドアが開いて一同の目がそっちに向いた。
「え」
「誰も、おらへん?」
うん?と二人が首を捻った時だ。天井から大量の紐状のものが落ちてきた。
「キャッ」
「うわ、蛇だ!」
「と、トルネード!」
2人を中心として小さな竜巻が発生して周囲の蛇を吹き飛ばした。混乱してしまい魔導歌が途中になってしまったため、威力は机の書類と蛇を部屋中にかき回しただけに留まった。
「お前、魔法使いかよ」
「はい、少々使えます」
「電撃ビリビリとかできないんだな」
「う、痛い所を突きはるなぁ」
次の呪文の詠唱に入る。今度はできるだけ攻撃的な奴を選択して。カズが蛇を牽制している間に主犯を見つけよう視界を振る。しかし、見れば見るほど蛇ばかりで眩暈がしてきた。
「貴様ら、そこで何をしている!」
「げ」
「あ、先程の」
開いたドアの向こうに生徒会長がもの凄い形相で立っていた。こんな時だから仕方がないが、せっかくの美形が台無しである。
「お兄ちゃん知らへん?ここに入るの見たんやけど」
質問すると生徒会長からは露骨に舌打ちされた。カズからは尊敬の目で見られた。
「知らん。貴様らこそ何故いる?」
「お兄ちゃん探しに来たんよ」
「先生だったらあっちで寝てたぜ」
「貴様らの仕業ではあるまいな」
「違うっての!」
「たぶん、蛇さんの仕業だと思います」
「蛇、どういうことだ?」
事情を説明すると生徒会長は眉間のシワをさらに深くした。
「土地神様とかそんなんやあらへんの?」
「聞いたことがない」
「そんな噂なかったぜ。眠らせる効果の毒なんて、そっちも聞いたことないんだけど」
「バジリスクの眼力を直で浴びなかったら気絶しはることがあるらしいです」
「成程、その可能性はあるな。だが、その能力を得るためには胴回り2m位に成長しないといけないのではなかったか?排気口の直径は50cm程しかないのだぞ」
「未熟な奴だから気絶で済んでるんじゃないのか」
「せやな~、成熟していたら石化してしまうぇ」
「厄介なものが潜んでいるのは確か、ということか。よし、貴様これを使え」
そう言って生徒会長は腰にかけていた剣を一本カズに投げ渡した。受け取って抜くとずっしりと思い刀剣が姿を見せる。
「サンキュー、だけど何かあったのか?」
「ほぅ、貴様はこの状況を何ともないと」
「あはは、そうでした」
剣を構えてカズが笑う。レイカもつられて笑いそうになったが、何とか堪える。シーンと辺りから音がなくなる。嫌な静寂だ。
「出口に行くぞ。ゆっくりとだ」
ジリジリと出入り口に向かっていく。ちょうど半分まできた頃だろうか。奥の方でゴトンと何かが落ちた音がした。目を凝らすが、なにも見当たらない。
「何だ?!」
「気のせいだ。とっとと行くぞ」
続く
「人の気配しまへんなぁ」
窓ガラスを壊して校舎内に侵入する。良いのかと聞いたらしょっちゅうだから大丈夫だと言われた。
「先輩どこやろか?」
「なぁ、何か寒くないか?」
日が落ちているが、今は初夏。寒さに弱い人でもそろそろ半袖に手を出したい時期だろう。そう考えると確かに校舎内に入ってから若干肌寒く感じる。これは・・・・・・、
「やな寒さどすなぁ」
「お、リトアじゃね」
廊下の角に消えた人影を指してカズが呟く。急いでその角まで走ったが、廊下の先には誰もいなかった。どこかの部屋に入ったのかと調べたが、どの部屋にも鍵がかかっている。嫌な予感しかしない。
「おかしいな。確かにリトアだったんだが」
「ドアの開く音しまへんかったなぁ」
「なら、あいつどこにい、冷てぇ」
何かの液体がカズの首筋に落ちた。ジュワと音がしたかと思うとその水が表皮を溶かした。
「うわッ」
レイカは慌ててハンカチを取り出すとその粘液を拭った。
「カズはん上に」
「何ッ・・・・・・いないぜ?」
「排気口の中に戻っていきはりました」
「どんな奴だった?」
「なんていうやろ・・・こう、ニョロ~っとしてはったような・・・・・」
「蛇かなんかだったんだろうな。こんな時期に妙なもんが紛れ込みやがって」
「それはこっちの台詞だ」
まぶしい光に振り向くと先生を従えた生徒会長が睨みつけていた。
「夜間入校禁止令が出されているはずだ。お前たちここで何をしている」
「まだ夕方だぜ」
「ごめんなさい、知らなくって」
「知らぬだけか」
「いくら待っていてもお兄ちゃん帰ってこなくって。それで不安になって学校に迎えに行ったんどす」
「で、それを見かけた俺が咄嗟に追いかけたってわけ」
そうだったのか、と先生が安堵の表情を見せる。生徒会長はまだ納得できないのか眉間のシワがとれていない。
「なら問題ないな。貴様の兄はこちらで探す。帰っていいぞ」
「ちょ、普通そういう時って「一緒に探す」って話にならない」
「ならん。さっさと帰るがいい」
もちろん、レイカもカズもごねた。何とか話をつけようと頑張った。だが、結局先生達に問答無用で校門から追い出されてしまった。
「ちぇ、お堅い生徒会長さんに見つかったらやっぱ無理か。先生だけなら言いくるめる自信あったんだけどよ」
「カズはん、校舎が!」
レイカの声に振り向いたカズも口をポカーンとあけて驚愕した。先程まで何もなかったはずの校舎が闇の中でボーっと怪しく光っている。校舎全体ではなく、部分部分で発光しているのがまた不気味である。
「・・・・・・・なんじゃこりゃ!?」
「・・・何やろ?自然光みたいやけど」
お互い無言のままロープを結んだところまでやってきた。まだ撤去されてなかったそれを使って再度校内に忍び込む。レイカの提案でハンカチを口と鼻に充てて校舎内に入るとそこには紫色のガスが充満し、先生方が倒れていた。
「心配ない。寝てるだけだ」
先生のポケットを漁って鍵束を手に入れたカズが言う。
「今のうちに見て回ろうぜ」
「はい、って何でうちら職員室に来てはりますの?」
「そりゃ、テスト見る為っしょ」
「・・・・・・」
「そんな目で見るなって。ここじゃこれも実力の内ってね」
「そうなんどすか?」
「そうなんどす。俺、魔法学と数学が不安なんだよなぁ」
「どっちも得意やし、うちでよければ教えるえ?」
「ちょwwせめてお兄さんにしてwwww」
カズの腹筋がまた崩壊しそうになったその時だった。ズルズルと何かが這いずる音が教室内に響きだしたのは。
「な、何だ?」
「何かいはる?」
2人は背中合わせになり、レイカはポケットから扇を取り出し、臨戦態勢に入る。ズルズルと言う音は次第に近づいていき、ついには彼らいる部屋の壁のすぐ内側まで来た。部屋中に響き渡る這いずる音はもう耳を澄まさなくてもはっきりと聞こえるほど大きくなっていた。
「何かが近づいているな」
「蛇のようどす。ややわ~」
緊張感があるカズとは違い、レイカの口調ではどうも呑気で仕方がない。
「お前がいると適度な緩和感があるよな」
「お褒め預かり恐縮どす」
「あははは、あんまし褒めてない」
ガラッと教室のドアが開いて一同の目がそっちに向いた。
「え」
「誰も、おらへん?」
うん?と二人が首を捻った時だ。天井から大量の紐状のものが落ちてきた。
「キャッ」
「うわ、蛇だ!」
「と、トルネード!」
2人を中心として小さな竜巻が発生して周囲の蛇を吹き飛ばした。混乱してしまい魔導歌が途中になってしまったため、威力は机の書類と蛇を部屋中にかき回しただけに留まった。
「お前、魔法使いかよ」
「はい、少々使えます」
「電撃ビリビリとかできないんだな」
「う、痛い所を突きはるなぁ」
次の呪文の詠唱に入る。今度はできるだけ攻撃的な奴を選択して。カズが蛇を牽制している間に主犯を見つけよう視界を振る。しかし、見れば見るほど蛇ばかりで眩暈がしてきた。
「貴様ら、そこで何をしている!」
「げ」
「あ、先程の」
開いたドアの向こうに生徒会長がもの凄い形相で立っていた。こんな時だから仕方がないが、せっかくの美形が台無しである。
「お兄ちゃん知らへん?ここに入るの見たんやけど」
質問すると生徒会長からは露骨に舌打ちされた。カズからは尊敬の目で見られた。
「知らん。貴様らこそ何故いる?」
「お兄ちゃん探しに来たんよ」
「先生だったらあっちで寝てたぜ」
「貴様らの仕業ではあるまいな」
「違うっての!」
「たぶん、蛇さんの仕業だと思います」
「蛇、どういうことだ?」
事情を説明すると生徒会長は眉間のシワをさらに深くした。
「土地神様とかそんなんやあらへんの?」
「聞いたことがない」
「そんな噂なかったぜ。眠らせる効果の毒なんて、そっちも聞いたことないんだけど」
「バジリスクの眼力を直で浴びなかったら気絶しはることがあるらしいです」
「成程、その可能性はあるな。だが、その能力を得るためには胴回り2m位に成長しないといけないのではなかったか?排気口の直径は50cm程しかないのだぞ」
「未熟な奴だから気絶で済んでるんじゃないのか」
「せやな~、成熟していたら石化してしまうぇ」
「厄介なものが潜んでいるのは確か、ということか。よし、貴様これを使え」
そう言って生徒会長は腰にかけていた剣を一本カズに投げ渡した。受け取って抜くとずっしりと思い刀剣が姿を見せる。
「サンキュー、だけど何かあったのか?」
「ほぅ、貴様はこの状況を何ともないと」
「あはは、そうでした」
剣を構えてカズが笑う。レイカもつられて笑いそうになったが、何とか堪える。シーンと辺りから音がなくなる。嫌な静寂だ。
「出口に行くぞ。ゆっくりとだ」
ジリジリと出入り口に向かっていく。ちょうど半分まできた頃だろうか。奥の方でゴトンと何かが落ちた音がした。目を凝らすが、なにも見当たらない。
「何だ?!」
「気のせいだ。とっとと行くぞ」
続く
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