218 / 220
12ー12、カメ、現場を検証する
エターナニル魔法学園特殊クラス
しおりを挟む
職員室にはない薬品の匂いがした。とりあえず、リング先生の机を探す。だが、その席には誰もいなかった。動かされた形跡がある。あのスリルマッチョを抱え上げて移動させたとしたら、体育教師のあのゴリラくらいしか思い当たらない。彼は見た目に反して穏やかな気質なので、運んだとしたら休憩室だろう。そう思って、休憩室にレイカは向かった。
休憩室は職員室からしか行けない作りになっている(窓からの侵入は別扱い)。ドアノブを回して開けようとするが、開かない。試しに引いてみたが、今度はドアがそちらには開かないよと言った。仕方がないので、一度外に出て窓から覗きみることにした。
「!!!ッ」
そこは全て赤で染まっていた。塗り残しもあるところが実に生々しい。落ちているパーツを組み立てている暇はなかったが、それでも赤の中で黒は映える。赤い液体を被っているにも関わらず、その黒髪は目立っていた。ベッドの上に置かれた生首は今にも動き出しそうで・・・・・・。出そうになった声を止めてくれたのはレイカの手ではなかった。
「ごめんなさい。ちょっと遅れたかな」
「リトア先輩?!」
「しー、レイカちゃん、抑えて」
「せやった」
理性がガリガリと削れそうだが、情報収集のためにももう一度レイカは窓から部屋を覗いた。真っ赤に血塗られた部屋。床に転がる手足だった物体。ベッドに乗っている首から上。正気の沙汰ではない光景はレイカの平常心をさらにガリガリと削った。
「これ、いつ起きたんどす?」
「壁の血が乾ききってないから、時間は経ってないんじゃないかな」
「魔法か、武器かはわからはります?」
「武器かな。刃物で切られたんだと思うよ」
「風魔法の可能性はあらはります?」
「うーん、ない訳ではないけれど、これだけ切断して壁に傷一つつけないのは熟練さんでも難しいかな」
となると、凶器がどこかにあるはず、とレイカは見渡したが、見える範囲には見つからなかった。
「この窓割って入れまへんか?」
「現場保存の法則、調査学であったと思うけど?」
「あらはりました」
リング先生の幽霊を呼び出すためにも現場に入らないといけない。レイカがこの場でできることはやりつくした。
「あのリング先生を・・・・よっぽど親しい人だったのかな?」
「えっと・・・・・・」
これはどこまで教えていいのだろうか?レイカが言い淀んでいると、リトアが軽く肩を叩いてきた。視線を上げると、茂みの中で手招きしているロイズ(ロボット)が見つかった。できるだけ音を立てずに彼の元に向かう。
「馬鹿、第一発見者ニナル気ガナイナラ現場ニイツマデモトドマルナ」
「な、なぁ、ロイズはん、リトア先輩、イスカはん無事やろか?」
「泣イテイル場合ジャナイダロ」
「人が来るかな」
「アイツダッタ場合ガヤバイナ。れいか、ココニ入レ」
カパッと頭部を外し、内部に入るように指示された。魔力感知されても困るし、中の部品を取り出すのも悪いのでレイカは少女の姿に戻った。小学生にしか見えないその姿はロイズの胴部に楽々入った。頭をかぶせなおし、留め金を止める。
続く
休憩室は職員室からしか行けない作りになっている(窓からの侵入は別扱い)。ドアノブを回して開けようとするが、開かない。試しに引いてみたが、今度はドアがそちらには開かないよと言った。仕方がないので、一度外に出て窓から覗きみることにした。
「!!!ッ」
そこは全て赤で染まっていた。塗り残しもあるところが実に生々しい。落ちているパーツを組み立てている暇はなかったが、それでも赤の中で黒は映える。赤い液体を被っているにも関わらず、その黒髪は目立っていた。ベッドの上に置かれた生首は今にも動き出しそうで・・・・・・。出そうになった声を止めてくれたのはレイカの手ではなかった。
「ごめんなさい。ちょっと遅れたかな」
「リトア先輩?!」
「しー、レイカちゃん、抑えて」
「せやった」
理性がガリガリと削れそうだが、情報収集のためにももう一度レイカは窓から部屋を覗いた。真っ赤に血塗られた部屋。床に転がる手足だった物体。ベッドに乗っている首から上。正気の沙汰ではない光景はレイカの平常心をさらにガリガリと削った。
「これ、いつ起きたんどす?」
「壁の血が乾ききってないから、時間は経ってないんじゃないかな」
「魔法か、武器かはわからはります?」
「武器かな。刃物で切られたんだと思うよ」
「風魔法の可能性はあらはります?」
「うーん、ない訳ではないけれど、これだけ切断して壁に傷一つつけないのは熟練さんでも難しいかな」
となると、凶器がどこかにあるはず、とレイカは見渡したが、見える範囲には見つからなかった。
「この窓割って入れまへんか?」
「現場保存の法則、調査学であったと思うけど?」
「あらはりました」
リング先生の幽霊を呼び出すためにも現場に入らないといけない。レイカがこの場でできることはやりつくした。
「あのリング先生を・・・・よっぽど親しい人だったのかな?」
「えっと・・・・・・」
これはどこまで教えていいのだろうか?レイカが言い淀んでいると、リトアが軽く肩を叩いてきた。視線を上げると、茂みの中で手招きしているロイズ(ロボット)が見つかった。できるだけ音を立てずに彼の元に向かう。
「馬鹿、第一発見者ニナル気ガナイナラ現場ニイツマデモトドマルナ」
「な、なぁ、ロイズはん、リトア先輩、イスカはん無事やろか?」
「泣イテイル場合ジャナイダロ」
「人が来るかな」
「アイツダッタ場合ガヤバイナ。れいか、ココニ入レ」
カパッと頭部を外し、内部に入るように指示された。魔力感知されても困るし、中の部品を取り出すのも悪いのでレイカは少女の姿に戻った。小学生にしか見えないその姿はロイズの胴部に楽々入った。頭をかぶせなおし、留め金を止める。
続く
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!
聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。
みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。
悪役令嬢に転生してストーリー無視で商才が開花しましたが、恋に奥手はなおりません。
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】乙女ゲームの悪役令嬢である公爵令嬢カロリーナ・シュタールに転生した主人公。
だけど、元はといえば都会が苦手な港町生まれの田舎娘。しかも、まったくの生まれたての赤ん坊に転生してしまったため、公爵令嬢としての記憶も経験もなく、アイデンティティは完全に日本の田舎娘。
高慢で横暴で他を圧倒する美貌で学園に君臨する悪役令嬢……に、育つ訳もなく当たり障りのない〈ふつうの令嬢〉として、乙女ゲームの舞台であった王立学園へと進学。
ゲームでカロリーナが強引に婚約者にしていた第2王子とも「ちょっといい感じ」程度で特に進展はなし。当然、断罪イベントもなく、都会が苦手なので亡き母の遺してくれた辺境の領地に移住する日を夢見て過ごし、無事卒業。
ところが母の愛したミカン畑が、安く買い叩かれて廃業の危機!? 途方にくれたけど、目のまえには海。それも、天然の良港! 一念発起して、港湾開発と海上交易へと乗り出してゆく!!
乙女ゲームの世界を舞台に、原作ストーリー無視で商才を開花させるけど、恋はちょっと苦手。
なのに、グイグイくる軽薄男爵との軽い会話なら逆にいける!
という不器用な主人公がおりなす、読み味軽快なサクセス&異世界恋愛ファンタジー!
*女性向けHOTランキング1位に掲載していただきました!(2024.9.1-2)たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございます!
*第17回ファンタジー小説大賞で奨励賞をいただきました!
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ
さとう
ファンタジー
書籍1~8巻好評発売中!
コミカライズ連載中! コミックス1~3巻発売決定!
ビッグバロッグ王国・大貴族エストレイヤ家次男の少年アシュト。
魔法適正『植物』という微妙でハズレな魔法属性で将軍一家に相応しくないとされ、両親から見放されてしまう。
そして、優秀な将軍の兄、将来を期待された魔法師の妹と比較され、将来を誓い合った幼馴染は兄の婚約者になってしまい……アシュトはもう家にいることができず、十八歳で未開の大地オーベルシュタインの領主になる。
一人、森で暮らそうとするアシュトの元に、希少な種族たちが次々と集まり、やがて大きな村となり……ハズレ属性と思われた『植物』魔法は、未開の地での生活には欠かせない魔法だった!
これは、植物魔法師アシュトが、未開の地オーベルシュタインで仲間たちと共に過ごすスローライフ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる