213 / 220
12ー7、カメ、目覚める
エターナニル魔法学園特殊クラス
しおりを挟む
朝、レイカは一人で目が覚めた。いつものことである。ボサボサになった髪を整える。朝シャン派ではないからちょっと大変だ。顔を洗い終えてもルームメイトが起きてこない。カーテンを開けてみると、そこには空っぽのベッドが。バッと時計を見る。まだ、7時。
「朝食の準備は先輩の仕事」
本当は順番にしたかった。だが、特殊クラス生の中でまともな料理を作れるのはレイカくらいだった。イスカは焼き過ぎて焦がすし、ロンはサプリメントで済まさせようとする。ロイズに至っては見た目はまともだが、味がない。なので、通常レベルのレイカと交代制で作ろうと提案しようとしたのだが、その時にはレイカ共々、プロ顔負けのリトアの料理の虜になった後だった。記憶を失う前は料亭にて働いていたのだろうか?
「おはよう、レイカちゃん」
「リトア先輩、おはようございます」
今日のご飯は、半熟卵に朝摘みキャベツのサラダ。カリカリベーコンにツヤツヤトマト、どちらも自家製。台所から顔を覗かせたリトアの手にはこんがりキツネ色に焼けたトーストが人数分以上ある。見たところ、イスカの姿はない。皿も人数分ある(量はかなりのばらつきがある)。
「おは」
この時ばかりはロイズも研究室から出てくる。学食にはロボットで来るのに、この時だけは生身だ。彼の後ろにはロンの姿も見える。
「何だ、今日は一人か?」
「おはよう、ロイズはん、ロンはん。イスカはん見ぃひんかった?」
「・・・見てない」
ロンが言うのだから間違いない。先に食卓に着いたロイズも見ていない。
「イスカちゃんがどうしたの?」
山盛りのトーストを運んできたリトアが心配そうに尋ねる。
「今朝から見ぃひんの。先にこっち来たと思ったんやけど」
「それはない」
「どういうことやろか?」
「そうだな。今までの行動パターンでも思い出してみろ」
今までの朝。レイカの方が早起きなので大半はイスカを揺すり起こしていた。レイカよりも先に起きていた数回は、目の前に顔があって跳び起きたのを覚えている。あれは、心臓に悪いと何度言っても直らなかった。
「せやな、それはあらへんかった」
何だかんだ言ってイスカが先に行ってしまうことはなかった。
「なら、失踪どすな」
「誘拐の可能性もあるのでは?」
「それなら身代金要求の連絡が来る。身内に行ったんなら確認の電話が学園に、な」
「・・・報連相大事」
「お前が言うか?まぁ、ともかく、金や地位目的なら尚更命に別状はないだろう」
そう言うと新聞を片手にロイズは朝食を食べだした。ユーキがいたら止めさせただろう。レイカも最初は注意したが、止めてはくれなかった。
「問題はだ」
何だかんだでイスカの心配をしてくれるんどすな、とレイカは思った。
「今日が試験日だってことくらいか」
「「「あ」」」
「試験開始は10時。それまでにあのバカが見つかるといいな」
「せや、頭殴られてへんとええんやけれど・・・・・・折角あれだけ詰め込めはったのに」
「お前、何気に辛辣だよな」
「まぁまぁ、それだけ仲が良いということなのでしょう」
「・・・訳がわからない」
「ロンはん、探す手伝いか探索技能の教授をお願いします」
「・・・・・・」
漂っていた低級地属性精霊を吸収して怪力を得たレイカによってロンは連れ去らわれた。
「あいつ、上手くなりやがったな」
「短期間で凄いですね」
諦めを含めてロイズはトーストを口に運ぶ。香ばしい焼き立てパンにとろけるイチゴジャムがよく合った。
「念のため、私もイスカ探索に回りましょうか?」
「いや、別に頼みたいことがある」
「薬の試飲以外なら聞くよ」
「そこまで嫌わないでもいいではないか?」
「5年生にそれは通じないかな」
学年崩壊になりかけたのを思い出し、リトアは苦笑した。本人も被害者の一人なのだが、この様子だともうほとんど許していそうだ。5年生全員が全員許してくれるとは思えない。現に5年の担任と副担任は今でもロイズを警戒している。毛嫌いしている。
「あの事件、根本は俺の仕業ではないのだが、まあ良い。今回の頼み事とは別のことだ」
「話を聞きましょう」
「その様子ではレイカの手伝いではなさそうですね」
「いや、全力でバックアップをする」
ティーカップを置くと、ロイズはリトアに一枚の手紙を渡した。それを読んだリトアは難しい顔をしたが、台所に行って紙を焼いた。
続く
「朝食の準備は先輩の仕事」
本当は順番にしたかった。だが、特殊クラス生の中でまともな料理を作れるのはレイカくらいだった。イスカは焼き過ぎて焦がすし、ロンはサプリメントで済まさせようとする。ロイズに至っては見た目はまともだが、味がない。なので、通常レベルのレイカと交代制で作ろうと提案しようとしたのだが、その時にはレイカ共々、プロ顔負けのリトアの料理の虜になった後だった。記憶を失う前は料亭にて働いていたのだろうか?
「おはよう、レイカちゃん」
「リトア先輩、おはようございます」
今日のご飯は、半熟卵に朝摘みキャベツのサラダ。カリカリベーコンにツヤツヤトマト、どちらも自家製。台所から顔を覗かせたリトアの手にはこんがりキツネ色に焼けたトーストが人数分以上ある。見たところ、イスカの姿はない。皿も人数分ある(量はかなりのばらつきがある)。
「おは」
この時ばかりはロイズも研究室から出てくる。学食にはロボットで来るのに、この時だけは生身だ。彼の後ろにはロンの姿も見える。
「何だ、今日は一人か?」
「おはよう、ロイズはん、ロンはん。イスカはん見ぃひんかった?」
「・・・見てない」
ロンが言うのだから間違いない。先に食卓に着いたロイズも見ていない。
「イスカちゃんがどうしたの?」
山盛りのトーストを運んできたリトアが心配そうに尋ねる。
「今朝から見ぃひんの。先にこっち来たと思ったんやけど」
「それはない」
「どういうことやろか?」
「そうだな。今までの行動パターンでも思い出してみろ」
今までの朝。レイカの方が早起きなので大半はイスカを揺すり起こしていた。レイカよりも先に起きていた数回は、目の前に顔があって跳び起きたのを覚えている。あれは、心臓に悪いと何度言っても直らなかった。
「せやな、それはあらへんかった」
何だかんだ言ってイスカが先に行ってしまうことはなかった。
「なら、失踪どすな」
「誘拐の可能性もあるのでは?」
「それなら身代金要求の連絡が来る。身内に行ったんなら確認の電話が学園に、な」
「・・・報連相大事」
「お前が言うか?まぁ、ともかく、金や地位目的なら尚更命に別状はないだろう」
そう言うと新聞を片手にロイズは朝食を食べだした。ユーキがいたら止めさせただろう。レイカも最初は注意したが、止めてはくれなかった。
「問題はだ」
何だかんだでイスカの心配をしてくれるんどすな、とレイカは思った。
「今日が試験日だってことくらいか」
「「「あ」」」
「試験開始は10時。それまでにあのバカが見つかるといいな」
「せや、頭殴られてへんとええんやけれど・・・・・・折角あれだけ詰め込めはったのに」
「お前、何気に辛辣だよな」
「まぁまぁ、それだけ仲が良いということなのでしょう」
「・・・訳がわからない」
「ロンはん、探す手伝いか探索技能の教授をお願いします」
「・・・・・・」
漂っていた低級地属性精霊を吸収して怪力を得たレイカによってロンは連れ去らわれた。
「あいつ、上手くなりやがったな」
「短期間で凄いですね」
諦めを含めてロイズはトーストを口に運ぶ。香ばしい焼き立てパンにとろけるイチゴジャムがよく合った。
「念のため、私もイスカ探索に回りましょうか?」
「いや、別に頼みたいことがある」
「薬の試飲以外なら聞くよ」
「そこまで嫌わないでもいいではないか?」
「5年生にそれは通じないかな」
学年崩壊になりかけたのを思い出し、リトアは苦笑した。本人も被害者の一人なのだが、この様子だともうほとんど許していそうだ。5年生全員が全員許してくれるとは思えない。現に5年の担任と副担任は今でもロイズを警戒している。毛嫌いしている。
「あの事件、根本は俺の仕業ではないのだが、まあ良い。今回の頼み事とは別のことだ」
「話を聞きましょう」
「その様子ではレイカの手伝いではなさそうですね」
「いや、全力でバックアップをする」
ティーカップを置くと、ロイズはリトアに一枚の手紙を渡した。それを読んだリトアは難しい顔をしたが、台所に行って紙を焼いた。
続く
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。
10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。
婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。
その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。
それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー?
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。
平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。
家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。
愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない
あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。
久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。
いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。
ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。
わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言?
もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方!
そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして────
※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。
※設定は相変わらずゆるんゆるん。
※シャティエル王国シリーズ4作目!
※過去の拙作
『相互理解は難しい(略)』の29年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、
『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。
上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。
※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)>
※ちょくちょく修正します。誤字撲滅!
※全9話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる