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2、魔獣飼育と新しい命
カメ、絡まれる
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あの事件から1週間も経たないある日の午後。魔法を教えるために建設された学校、魔法学園は何事もなかったかのように事件前と変わることのない平穏な日々を送っていた。
「あ、あの、本を・・・・・・」
しかし、その平穏も普通の一般生徒に関してのようだ。
「本をなんだよ、優等生ちゃん」
「そうそう、ちょっと前まで文字すら読めなかったくせに」
「それなのに何故か実技免除の特待生だしな。生意気通り越してすげー」
「「感心すな!」」
「イテッ」
ただ例の山積み宿題の消化のために借りていた本を返しに来ただけだったのにいじめの首謀グループである3人組に出会ってしまった事は学年1小さな少女、レイカにとって運が悪かったとしかいいようがなかった。
なんせこの図書室、4階建て校舎1つ丸ごと使用している本の館、その中で場所指定しないで出会うとしたら入り口かカウンターぐらいしかない。それなのに最も利用者が少ない2階奥の本棚で出会うとなれば相当運が悪いとしか言いようがないだろう。
「ですから、本を」
「どれどれ、どんな本を読んでんだ」
横から取られたとレイカがわかった時にはすでに本は男子生徒の手の中にあった。
「こ、これは・・・一見するとただの絵本だが・・・・・・」
「くぅ、この僕に読めない書物があるとは」
「てか、どこの言葉だ、これ」
それはそうだろう。彼が取った本は返却するために持って来た本ではなく、この後友達に貸すための本で、異界カーレントの実家から持ってきた日本昔話だった。子供向けで字が大きく平仮名が多い絵本だが、日本語で書かれている。エターナニルの共通語で書かれていないから普通の学生が読めなくても別だって不思議ではない。
むしろ、この世界ではレイカの方が異端な存在なのだ。本来触れられるはずのない時界の文化の文字など読めなくて当たり前である。
「おまえ、これが読めるのか?」
「は、はい」
カーレントの日本出身のレイカにとって日本語は母国語。教育制度がかなり発達している国なので9割の国民が読み書き計算ができる。もちろん、そこで学生をやっていたレイカもマスターしている。幼少の頃から日本舞踊をも習得していることもあって、同年齢の高校生よりは礼儀作法ができる。寧ろ、大人顔負けだ。その超消極的な性格故にカーレントの現代社会には馴染めなかっただけなのだ。
もちろん、こちらの世界でも未だに馴染めていない。
「ふ~ん、どんなことが書いてあるんだ?」
「えっと、花咲か爺さんとかかぐや姫とか、です」
そもそもこの本はメジャーな日本昔話を集めた童話集である。
「端鎖か示威酸と家具屋姫?ずいぶんけったいな話だな」
投げ返された本を受け取ろうとして他の本を落とし、それに慌てて本を見失い、頭で受け取ってしまい、痛みでレイカはその場にしゃがみこんだ。ちょっと悪いことをしたかなと思ったのか明後日の方向に顔を背けながらも男子生徒は手を差し出した。
「くぉおおらぁぁあああー――――!」
その直後、後ろからの跳び蹴りを喰らい、男子生徒は後ろの本棚3つと共に倒れた。
「あんた達、またレイカをいじめてるな!」
「げ、あいつは」
「炎の申し子、炎獄の喧嘩野ろぅッ」
「誰が野郎よ。こんな巨乳美少女を前にして!」
回し蹴りで撃沈させた2人を足踏みにして見下ろす赤髪紅眼の生徒こそ薄茶髪灰眼の少女レイカが本を渡そうとした本人、イスカである。前回より胸周りが大きいのは目の錯覚ではない。虚栄心の暴走である。
「まったく、何度叩いても全然懲りないんだから」
イスカのメイン攻撃は蹴りで拳はほとんど使わないので、この場合は何度蹴ってもが正しい。
「レイカ、大丈夫?」
何時までも俯いているので手を差し伸べる。先程の男子生徒のように。
続く
「あ、あの、本を・・・・・・」
しかし、その平穏も普通の一般生徒に関してのようだ。
「本をなんだよ、優等生ちゃん」
「そうそう、ちょっと前まで文字すら読めなかったくせに」
「それなのに何故か実技免除の特待生だしな。生意気通り越してすげー」
「「感心すな!」」
「イテッ」
ただ例の山積み宿題の消化のために借りていた本を返しに来ただけだったのにいじめの首謀グループである3人組に出会ってしまった事は学年1小さな少女、レイカにとって運が悪かったとしかいいようがなかった。
なんせこの図書室、4階建て校舎1つ丸ごと使用している本の館、その中で場所指定しないで出会うとしたら入り口かカウンターぐらいしかない。それなのに最も利用者が少ない2階奥の本棚で出会うとなれば相当運が悪いとしか言いようがないだろう。
「ですから、本を」
「どれどれ、どんな本を読んでんだ」
横から取られたとレイカがわかった時にはすでに本は男子生徒の手の中にあった。
「こ、これは・・・一見するとただの絵本だが・・・・・・」
「くぅ、この僕に読めない書物があるとは」
「てか、どこの言葉だ、これ」
それはそうだろう。彼が取った本は返却するために持って来た本ではなく、この後友達に貸すための本で、異界カーレントの実家から持ってきた日本昔話だった。子供向けで字が大きく平仮名が多い絵本だが、日本語で書かれている。エターナニルの共通語で書かれていないから普通の学生が読めなくても別だって不思議ではない。
むしろ、この世界ではレイカの方が異端な存在なのだ。本来触れられるはずのない時界の文化の文字など読めなくて当たり前である。
「おまえ、これが読めるのか?」
「は、はい」
カーレントの日本出身のレイカにとって日本語は母国語。教育制度がかなり発達している国なので9割の国民が読み書き計算ができる。もちろん、そこで学生をやっていたレイカもマスターしている。幼少の頃から日本舞踊をも習得していることもあって、同年齢の高校生よりは礼儀作法ができる。寧ろ、大人顔負けだ。その超消極的な性格故にカーレントの現代社会には馴染めなかっただけなのだ。
もちろん、こちらの世界でも未だに馴染めていない。
「ふ~ん、どんなことが書いてあるんだ?」
「えっと、花咲か爺さんとかかぐや姫とか、です」
そもそもこの本はメジャーな日本昔話を集めた童話集である。
「端鎖か示威酸と家具屋姫?ずいぶんけったいな話だな」
投げ返された本を受け取ろうとして他の本を落とし、それに慌てて本を見失い、頭で受け取ってしまい、痛みでレイカはその場にしゃがみこんだ。ちょっと悪いことをしたかなと思ったのか明後日の方向に顔を背けながらも男子生徒は手を差し出した。
「くぉおおらぁぁあああー――――!」
その直後、後ろからの跳び蹴りを喰らい、男子生徒は後ろの本棚3つと共に倒れた。
「あんた達、またレイカをいじめてるな!」
「げ、あいつは」
「炎の申し子、炎獄の喧嘩野ろぅッ」
「誰が野郎よ。こんな巨乳美少女を前にして!」
回し蹴りで撃沈させた2人を足踏みにして見下ろす赤髪紅眼の生徒こそ薄茶髪灰眼の少女レイカが本を渡そうとした本人、イスカである。前回より胸周りが大きいのは目の錯覚ではない。虚栄心の暴走である。
「まったく、何度叩いても全然懲りないんだから」
イスカのメイン攻撃は蹴りで拳はほとんど使わないので、この場合は何度蹴ってもが正しい。
「レイカ、大丈夫?」
何時までも俯いているので手を差し伸べる。先程の男子生徒のように。
続く
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