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最終章

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「残念だが、放火犯は自ら火に飛び込んでいったそうだ。」


俺と醍醐隼のいるところに、先輩の警察官が声をかけてきた。

「……えっ……!?」


俺よりも大きな声で驚いたのは、醍醐隼の方だった。

「我々の制止も聞かず、一目散に火の方へ走って行ったそうだ。全く、何がしたいのかが分からんが…もう本人へは聞けない。……一気に捜査が難航するな…。」

苦虫を噛み潰したような表情で彼は言う。


「畠山さん…。飛び込んで……なんで…」


先輩警察官の話を聞いて、醍醐隼が驚きながら呟いている。


無理もない。

放火犯は自分の命を狙っていたのにも関わらず、何故自ら火の中に飛び込んだのか、全く持って意味不明だからだ。




「話は後でゆっくり聞きますし、我々も調査します。とりあえず今は、ご自身の体調を一番に心配なさって下さい。」


俺は放心気味になっている醍醐隼に声をかけた。

醍醐隼はその声に、ゆっくりと顔を上げ、俺を捕えた。



「あの………」


虚ろな目が今起こっていることへの恐怖と驚きを隠せていない。

黒く煤《すす》けた顔は、今にも泣きそうだ。



「なんか…普通の警察官の方よりも優しいですよね……。どうしてそんなに優しく声をかけてくれるんですか…?」


醍醐隼が、真っ直ぐな瞳で俺に問いかけた。

その声は震えていて、突然起こった色んな出来事をまだ整理できていないのが丸分かりだ。

「あ、いや…すみません突然。実は…その、あまり警察官の方に対していい思い出がなくて……」

醍醐隼は申し訳なさそうにしながらも、恐らくまさに今火に飛び込んだであろう人を思い出しながら話していた。

そうだ。

奴が刑事だったから、俺は今この職に就いているのだ。

「……そんな事はないですよ。これが普通です。」

俺のそんな事情を察せられることのないよう、俺は醍醐隼へと微笑みかける。


……だけど俺はさっきから期待した反応がまだ返ってこないことに、一抹の寂しさを感じていた。

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