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最終章

6-4

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「…602…602……」

思わず病室から飛び出した時、私とすれ違った30代くらいの女性が、隼くんの部屋番号を呟きながらあの部屋に向かっていた。


「あ…あの、すみません!」


私は思わず振り向き、その女性に声をかけた。

「…私ですか?」

「はい。…すみません、602の患者さんは今、先生による問診が行われています。…もう少し時間を空けてお見舞したほうがよろしいかと……」


私に呼び止められ振り向いた女性に、私は咄嗟にこんなことを言っていた。


「そうなのね……それってどのくらいかかるの?」

「あ……えと、恐らく2~30分はかかるかと…」

「そんなにかかるのね……」

その女性は私の言葉に少し残念そうに言う。


「よろしければ、こちらでお待ち下さい」


私はそう言って、その女性を待合室に案内した。

だって…恐らくこの女性の旦那さんは…今現在進行系で、隼くんと………



「ありがとう看護師さん。…今、少し時間あるかしら?」

その女性は待合室から出ていこうとした私を何やら深刻そうな顔で呼び止めた。


「少しだけなら…」

私はそう言って女性の隣に座った。


その女性は、恐らく30代半ばくらいで、隼くんと同室の男性の奥さんだという。

旦那さんは右腕が自由に動かないらしく、数日前に入院したそうだ。


だけど…


「私が初めてお見舞いに行ったのは、入院した次の日よ?それなのに……」


既にその旦那さんは、隼くんの上に跨がっていたというのだ。


「あの同室の男の子…本当に恐ろしいわね」

目の前の女性が震える肩を抱くように言う。

「あの子……私が来たのを分かってても、私の旦那に抱かれてた…そして旦那も…私には目もくれずにその子に腰を振ってたわ」

その話を聞いて、私はさっきの自分を思い出した。

確かに二人とも…何も動じずにコトを続けていた。

もしかしたらさっきも、隼くんは本当は気づいていたのか……?



「もっと怖いのがね、あの子…私の旦那の友達までその彼女さんから奪ったのよ…」


女性の話の意味が瞬時に掴めず、私は頭の中を必死で整理した。
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