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冤罪少年の話

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「なーなー隼先輩って、ああ見えて小学生の時イジメられてたんだぜ?知ってた?」

部員の一人が面白がるように言い出す。

「マジで!?意外だわー」

「だろ?そんでさ、俺とこいつ、昔近所の悪い高校生とつるんでた時期があってさ。そんとき、よく隼先輩が通ってた学校の小学生いじめて遊んでたんだよww」

「うわーまじか、お前ら元ヤンかよw引くわー」

「ヤンキーじゃねえよww俺らだってあの高校生たちが怖くて仕方なく付き合ってただけだしw」

「そーそ。んで、ある日その学校の女が歩いてたんだけさ、その女がチョー可愛くて!」


隼先輩の話で盛り上がるあいつらは、きっと徐々に声が大きくなっているのを自覚していなかったのだろう。


「その女を脱がせようとしたらさ、隼先輩、後ろから『その子を離せー!』って叫んだんだぜ?」

「うっわまじか!隼先輩ならやりそうだわw」

「だろ?んでさ、当然高校生たちもはぁ?ってなるじゃん?そんでみんなして隼先輩を殴ろうとした隙にさ、その女に逃げられたんだよw」

「はぁー?なにそれダッサww」

「いやしかたねーじゃん!あの女、メチャクソ足速かったんだから。俺らのグループ、喧嘩は強くても体重すぎて走れるタイプいなかったしw」

「それなー。今なら俺らでつかまえられるのになw」


ギャハギャハと下品な笑い声をあげながら話すそいつらの続きを、俺は無意識に待っていた。

「んでさ?結局女に逃げられた腹いせで、隼先輩ボッコボコよww」

「な!俺らは下っ端だったから少し離れて見てただけだけどよ」

「一切抵抗してこなかったな。」

「流石だわ~。隼先輩、今と全然変わんねーじゃん」

「だろー?女守るために体張るとか、ヒーローだよなあ」


俺はそんな隼先輩の知られざる過去を聞いて、率直にこいつらと同じ感想を抱いた。

隼先輩は、やっぱり昔からカッコイイ…

弱い者や傷ついた者を迷わず助けられる人なんだ……

そう思って、憧れの気持ちを強めた時、またあいつらの会話が再開した。
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