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7人目:とある刑事の話

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「…なるほど…」

俺は部下からの連絡を受けて、取り敢えず署に向かった。

そこで直接、醍醐隼と佐々木麻友から話を聞いた。



「それで……君たちはどうしてほしいの?」



部下が俺の隣でメモを取る。

俺は醍醐たちに向かって聞いてみた。



「ちゃんともう一度調べてほしいです…」


佐々木の方が少し緊張気味にそう答えた。


「だけど、藤井海吏本人は罪を認めている。それにとっくに裁判も終わってるよ。供述調書の中でもそれは証拠として残されている。一度罪を認めてしまったらそう簡単には覆らないよ。……せめて、彼が犯人じゃないという証拠が無いと」


もし仮にこいつらの話に証拠や信憑性があって、それが事実となれば大変なことだ。

だが、未成年の供述をそう簡単に受け入れるわけには行かない。


「……わかりました。取り敢えず弁護士と相談してきます」



何も言えなくなった佐々木に代わって答えたのが醍醐だった。


「弁護士って……そんなに簡単に雇えるのかね?」

「はい。宛てはあります。僕たちが証拠も無くただ単に話をするだけでは、再捜査や再審とかの話にはならないですもんね?」



醍醐は落ち着いた雰囲気のまま、大人びた口調で話しながら俺らを見る。


「確かに海吏が自白したことや調書の内容を認めたことによって、無罪を取り返すのはかなり難しくなってるんだとは思います。……けど、証拠を集めつつ海吏に本当の事を話してもらいたいと思います。そのためには僕達だけの力じゃ限界があるので…然るべき方法で対応します」


いくつかの刑事事件に絡んでいる醍醐隼とは、何度か取り調べの際に話をしたことがある。

しかし、今日ほど強い圧を感じたのは初めてだ。

いつものような柔らかさが消えた、鋭い眼差しが俺の目を貫いていた。



「やってみるといい。かなりハードルは高いけどな」



俺は醍醐を睨み返しながら答えた。

物々しい雰囲気に、部下と佐々木は黙りこくっている。



「……仮に海吏がやっていないことを分かっていたとしても……それを認めさせるのは、かなり骨が折れるんでしょうね」



醍醐が俺の目の奥を覗いてくる。

その言葉に、俺の目が揺らいだのが分かったのだろうか……

「え……?」

隣の部下が怪訝そうに俺を見る。


それでも俺は、部下の方は一切見ずに、醍醐から目を離さなかった。



「ちゃんと捜査してれば、犯人が誰かだなんてすぐに分かることですもんね」

「後輩を庇いたい気持ちは分かるが、根拠のないことを並べ立てるのは君たちにとって不利にならないかな?」

「どうして僕たちにとって不利になるんです?」

「君は今、大人に向かって何を言ってるのか分かってるのか?」

「分かってますよ。だから、ここから先は専門性のある人と連携しながらやっていくって言ってるんです。僕らだけだとその姿勢は変えないんでしょう?……それとも、ちゃんとこの件について向き合ってくれるんですか?」


醍醐の言葉と真剣な眼差しに思わず目を逸らしてしまった。


「……いいから今日はもう帰りなさい。もっとしっかりとした証拠を持ってきて、色々と覆せるようになってからまた来るといい。」



俺の言葉を合図に、部下が立ち上がり2人の帰宅を促した。

何も言えずにいる佐々木の隣で、醍醐はまるで怒りを必死に鎮めているような表情をしていた。


醍醐に対しては、普通の高校生のような対応では通用しない……



署から出るときにもう一度俺の方を振り向いた醍醐を見て、そう思わずにはいられなかった。






「畠山さん。さっきの醍醐隼の言葉、あれって……」

「気にすることではない。あいつはああやって我々大人を困らせたいだけだ。」



俺の顔色を伺うように話しかけてる部下に、顔を見もせずに答える。


あの事件に関して、俺が知っていること……





それは、あいつらが話していたこととほぼ一致していたのだ。
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