103 / 213
隠し事JKの話
8
しおりを挟む
「あれ……麻友?なんでここにいるの?」
海吏くんが自転車に跨ろうとした瞬間、部室棟から出てきた私は彼に見つかった。
「……はぁー……あのさあ……」
冷たい目をして溜息をつきながら、海吏くんが自転車から降りて私に近づいてきた。
「いや……違うんだよこれは……」
「違くないだろ。残念だけど今日は隼先輩はしばらく来ないよ。コーチたちとインドア大会について話してるから、かなり長くなると思う。…早く帰れよ」
私は海吏くんにここまでストーカーとして来ていたことをすぐに察せられ、怒ったように帰れと言われてしまった。
「例のストーカーは?一緒じゃないの?」
若干軽蔑するような目を向けながら聞いてきた。
「なんか、部室にいる2年生の中に知り合いがいるから話してくるって」
「へー。それ、俺に頼んだみたいなことをそいつにも頼むつもりなんじゃないの?」
「私もそう思ったからそれだけはヤメてって約束してきた」
「約束して聞くような奴なら部室まで忍び込んだりしないだろ……」
海吏くんの呆れたような溜息混じりの声が私に届く。
…やっぱり耳が痛いほど正論しか言わない……
「そんなに心配なら見てきたら?」
「はあ?なんで俺が。行くとしたら麻友の方だろ」
「私はもう帰りたいの!数時間もこんな寒いところにいたら流石に風邪ひくわ」
「当たり前だろ。そんなこと言うならその友達止めろよな」
「私だって止めてるんだよ??なのに…」
「てか、なんでわざわざ麻友も同行してんの?同じストーカーだと思われるよ?」
「それは……」
海吏くんの追究に答えることが出来ず、黙ってしまった。
確かに、私は何でわざわざここまでして愛莉に付き合ってるんだっけ…?
「それは……私があの子を止めることで、隼くんや海吏くんに実害が及ばないようにするためだよ」
今まではこの理由で納得できたけど、今日は自分で言いながらも、どこか引っかかるものがあった。
なぜなら……
「1人で背負い込みすぎ。もっと大人とかに頼ったほういいんじゃないの?」
私は、海吏くんの言葉と全く同じ疑問を持っていたからだった。
愛莉を止めるのは、私一人でやるべきことなのか……
だけど周りの大人に相談したら、愛莉との友情が崩れてしまうかもしれない……
そんな葛藤を抱えながらも、見ないふりしてきたのだった。
「……そんなことで崩れる友情なら、俺はいらないけどな。……結局友達より男を取ってるみたいなもんじゃん」
何も言ってないのに、海吏くんがまるで私の心を見透かしたかのように言う。
「…なんで友情崩したくないって思ってることまで分かったの?」
「話聞いてりゃ何となく分かるだろ。」
海吏くんは、昔からそうだ。
他人を見ていないようでよく見ている。
人の気持ちを察するのが得意で、いつも先回りされてしまう。
そして……
「まあ、俺もできるだけ隼先輩のことは守るから。あんまり麻友一人でなんとかしようとか思わないでな」
背が伸びた海吏くんを見上げると、優しい顔で私を見つめていた。
やっぱり海吏くんは、頼りになる……
海吏くんは、中学に入ってから、周りが優秀過ぎて自分がカスにしか思えないとずっと言っていた。
自分よりずっとかっこよくて頭が良くてテニスがうまくて性格も良くてしっかりしてる人たちしかいない、と。
だけど……
私からしたら海吏くんも、十分全部に当てはまっている。
海吏くんの場合、周りのレベルが高すぎて感覚が壊れているだけなんだと思う。
仮に、周りが本当にすごい人たちだらけだとしても……
私に対してたまに見せてくれる優しさは昔と変わらないということが分かっただけで、私は充分嬉しかった。
「ありがとう海吏くん」
私が素直にお礼を言うと、海吏くんは少し照れたように微笑んだ。
海吏くんが自転車に跨ろうとした瞬間、部室棟から出てきた私は彼に見つかった。
「……はぁー……あのさあ……」
冷たい目をして溜息をつきながら、海吏くんが自転車から降りて私に近づいてきた。
「いや……違うんだよこれは……」
「違くないだろ。残念だけど今日は隼先輩はしばらく来ないよ。コーチたちとインドア大会について話してるから、かなり長くなると思う。…早く帰れよ」
私は海吏くんにここまでストーカーとして来ていたことをすぐに察せられ、怒ったように帰れと言われてしまった。
「例のストーカーは?一緒じゃないの?」
若干軽蔑するような目を向けながら聞いてきた。
「なんか、部室にいる2年生の中に知り合いがいるから話してくるって」
「へー。それ、俺に頼んだみたいなことをそいつにも頼むつもりなんじゃないの?」
「私もそう思ったからそれだけはヤメてって約束してきた」
「約束して聞くような奴なら部室まで忍び込んだりしないだろ……」
海吏くんの呆れたような溜息混じりの声が私に届く。
…やっぱり耳が痛いほど正論しか言わない……
「そんなに心配なら見てきたら?」
「はあ?なんで俺が。行くとしたら麻友の方だろ」
「私はもう帰りたいの!数時間もこんな寒いところにいたら流石に風邪ひくわ」
「当たり前だろ。そんなこと言うならその友達止めろよな」
「私だって止めてるんだよ??なのに…」
「てか、なんでわざわざ麻友も同行してんの?同じストーカーだと思われるよ?」
「それは……」
海吏くんの追究に答えることが出来ず、黙ってしまった。
確かに、私は何でわざわざここまでして愛莉に付き合ってるんだっけ…?
「それは……私があの子を止めることで、隼くんや海吏くんに実害が及ばないようにするためだよ」
今まではこの理由で納得できたけど、今日は自分で言いながらも、どこか引っかかるものがあった。
なぜなら……
「1人で背負い込みすぎ。もっと大人とかに頼ったほういいんじゃないの?」
私は、海吏くんの言葉と全く同じ疑問を持っていたからだった。
愛莉を止めるのは、私一人でやるべきことなのか……
だけど周りの大人に相談したら、愛莉との友情が崩れてしまうかもしれない……
そんな葛藤を抱えながらも、見ないふりしてきたのだった。
「……そんなことで崩れる友情なら、俺はいらないけどな。……結局友達より男を取ってるみたいなもんじゃん」
何も言ってないのに、海吏くんがまるで私の心を見透かしたかのように言う。
「…なんで友情崩したくないって思ってることまで分かったの?」
「話聞いてりゃ何となく分かるだろ。」
海吏くんは、昔からそうだ。
他人を見ていないようでよく見ている。
人の気持ちを察するのが得意で、いつも先回りされてしまう。
そして……
「まあ、俺もできるだけ隼先輩のことは守るから。あんまり麻友一人でなんとかしようとか思わないでな」
背が伸びた海吏くんを見上げると、優しい顔で私を見つめていた。
やっぱり海吏くんは、頼りになる……
海吏くんは、中学に入ってから、周りが優秀過ぎて自分がカスにしか思えないとずっと言っていた。
自分よりずっとかっこよくて頭が良くてテニスがうまくて性格も良くてしっかりしてる人たちしかいない、と。
だけど……
私からしたら海吏くんも、十分全部に当てはまっている。
海吏くんの場合、周りのレベルが高すぎて感覚が壊れているだけなんだと思う。
仮に、周りが本当にすごい人たちだらけだとしても……
私に対してたまに見せてくれる優しさは昔と変わらないということが分かっただけで、私は充分嬉しかった。
「ありがとう海吏くん」
私が素直にお礼を言うと、海吏くんは少し照れたように微笑んだ。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる