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5人目:平凡後輩の話

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「海吏、昨日の最後の高松戦の時のドロップボレーすごいよかったよ」


俺は今、隼先輩と2人で食事に来ている。

昨日は練習試合で、今日は部活がオフの日だ。

貴重なオフを使って俺と会ってくれるのなんて、隼先輩くらいだろう。


「ありがとうございます!少しずつできる技が増えてきて、前よりは部活も楽しくなりました」

「おお!それはよかった!海吏が楽しそうにしてくれてるのが俺はすごい嬉しいよ」

「でも俺、隼先輩がいなければ絶対辞めてましたよー…無理なんすよあの空間…」


俺は隼先輩と会うと、だいたい何かを愚痴ったり悩みごとを相談したりしている。

今回も、こうして二人きりで会うのは2ヶ月ぶりなこともあり、俺の口からは自然と日頃抱えている不満や不安がどんどん出てくる。

「同輩たちといるときはいいけど、先輩やコーチたちがいる時のコートとか……立ってるだけで心臓がギュッと掴まれてる感じがするんですよね。…プレッシャーが半端ないです」

「そっか…そんな風に感じてたんだ。そこまで思い詰めてるとは思わなくて…気づかなくてごめん…」

「いや!隼先輩はいいんすよ!隼先輩と話してるときだけなんです…ノープレッシャーで心を落ち着かせられるのは」



これは入部直後から思っていたことで、俺は基本的に何をしても怒られるから、学校でも部活でも、常にリラックスできない。

だけど隼先輩といる時だけは、心も頭もリラックスできる。


「嬉しいな、海吏にそう言ってもらえるのは。ありがと」


目の前で優しく微笑む隼先輩を見て、俺の心はまた癒える。


この人の口癖は「ありがとう」だ。

誰に対しても感謝を忘れなくて、常に人のいいところを見つけられる。

そしてこんな俺にもありがとうの言葉をくれるし、たくさん褒めてくれる。
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