28 / 213
4人目:彼女の話
6
しおりを挟む
春馬が暴れて警察沙汰になってから数ヶ月。
春馬はあの後、殺人未遂で現行犯逮捕された。
もちろんこのことは大きなニュースになり、被害者である私も春馬と同じくらい世間から注目された。
この事件が特に騒がれたのは、春馬が中学校の教諭だったこともある。
公務員がこういうことをすると、世間は放って置かない。
しかも動機が痴情のもつれであることもすぐに報道され、いろんな意味の好奇の目が私に向けられた。
ただ、隼くんのことについては……
春馬が勤める学校の生徒に一方的な想いを募らせた、としか表現されなかった。
相手が男子生徒であることや、部活の教え子だったことなども報道にはなかった。
それは、隼くんがまだ未成年で間接的な被害者であるというから、プライバシーを守るために厳重に徹底されていた。
しかしそれでも、やっぱり今の時代はネットがあるので、中学校内部の人間の暴露や根も葉もない噂などが独り歩きして隼くんと春馬を結びつけることは起こっていたみたいだった。
私も隼くんとはあの事件の日以来会ってないが、色んな情報が飛び交う中で新しく知ったこともある。
隼くんは元々あの中学校の中でもとびきりの人気者で…それもただの人気者ではなく、関わった人を尽く狂わせてしまう魅力の持ち主だという噂があったということ。
隼くんと2人きりになると、相手が変な気を起こして危ないとか…
長期間接すると男女問わず好きになるとか…
実際に隼くんに手を出して実質クビになった教諭もいたようだ。
春馬の事といい、あの学校はどうなってるんだろう……
そんな私の感想と世間の感想は同じだった。
世間では専ら、あの名門有名私立中学校の教員の質についての議論が盛り上がっている。
ただ、あくまで噂の範疇を超えないものもあった。
だから私は、話半分で報道やネットの情報を見ていた。
元々、根拠のない話や論理的じゃない話は嫌いだ。
こういう時こそ冷静に判断するべきだと思ってる。
だけどそんな私も、やっぱりあの後隼くんがどうなったのかがとても気になっていた。
世間では私と春馬の話が大きく取り沙汰される中で、実は最も渦中にいる存在なのだから。
信頼していたであろう部活の顧問の変わり果てた姿。
隠されていた自分への邪な感情。
そして、被害者の私と最後に目が合ったこと…
私はあの時の隼くんの目が忘れられない。
だけどもしかしたら、それは彼も同じなのかもしれないと思った。
事件の熱りが冷めるまで、私は彼に会いに行くことは出来なかった。
警察に話を聞いても、当然の様に何も教えては貰えない。
勿論あの学校の生徒は、春馬の元彼女ということで私を知っている。
だから私は、前みたいに気軽に隼くんの学校に行って話をすることなどできない。
その為に私は今、あるホテルに泊まっている。
春馬が担当していた部活では、毎年春休みと夏休み中に大型遠征を行うという彼の話を思い出し、夏の遠征先に来ていた。
春休みの遠征は行き先が毎年変わるそうだが、夏休みの遠征は必ず宿も決まっていると言っていた。
もしかしたら、その時期にその宿付近に行けば……隼くんと話ができるかもしれない。
そんな思いで私は数日間の有給を貰って、春馬たちが毎年泊まりに行くと言っていたホテルに滞在している。
春馬はあの後、殺人未遂で現行犯逮捕された。
もちろんこのことは大きなニュースになり、被害者である私も春馬と同じくらい世間から注目された。
この事件が特に騒がれたのは、春馬が中学校の教諭だったこともある。
公務員がこういうことをすると、世間は放って置かない。
しかも動機が痴情のもつれであることもすぐに報道され、いろんな意味の好奇の目が私に向けられた。
ただ、隼くんのことについては……
春馬が勤める学校の生徒に一方的な想いを募らせた、としか表現されなかった。
相手が男子生徒であることや、部活の教え子だったことなども報道にはなかった。
それは、隼くんがまだ未成年で間接的な被害者であるというから、プライバシーを守るために厳重に徹底されていた。
しかしそれでも、やっぱり今の時代はネットがあるので、中学校内部の人間の暴露や根も葉もない噂などが独り歩きして隼くんと春馬を結びつけることは起こっていたみたいだった。
私も隼くんとはあの事件の日以来会ってないが、色んな情報が飛び交う中で新しく知ったこともある。
隼くんは元々あの中学校の中でもとびきりの人気者で…それもただの人気者ではなく、関わった人を尽く狂わせてしまう魅力の持ち主だという噂があったということ。
隼くんと2人きりになると、相手が変な気を起こして危ないとか…
長期間接すると男女問わず好きになるとか…
実際に隼くんに手を出して実質クビになった教諭もいたようだ。
春馬の事といい、あの学校はどうなってるんだろう……
そんな私の感想と世間の感想は同じだった。
世間では専ら、あの名門有名私立中学校の教員の質についての議論が盛り上がっている。
ただ、あくまで噂の範疇を超えないものもあった。
だから私は、話半分で報道やネットの情報を見ていた。
元々、根拠のない話や論理的じゃない話は嫌いだ。
こういう時こそ冷静に判断するべきだと思ってる。
だけどそんな私も、やっぱりあの後隼くんがどうなったのかがとても気になっていた。
世間では私と春馬の話が大きく取り沙汰される中で、実は最も渦中にいる存在なのだから。
信頼していたであろう部活の顧問の変わり果てた姿。
隠されていた自分への邪な感情。
そして、被害者の私と最後に目が合ったこと…
私はあの時の隼くんの目が忘れられない。
だけどもしかしたら、それは彼も同じなのかもしれないと思った。
事件の熱りが冷めるまで、私は彼に会いに行くことは出来なかった。
警察に話を聞いても、当然の様に何も教えては貰えない。
勿論あの学校の生徒は、春馬の元彼女ということで私を知っている。
だから私は、前みたいに気軽に隼くんの学校に行って話をすることなどできない。
その為に私は今、あるホテルに泊まっている。
春馬が担当していた部活では、毎年春休みと夏休み中に大型遠征を行うという彼の話を思い出し、夏の遠征先に来ていた。
春休みの遠征は行き先が毎年変わるそうだが、夏休みの遠征は必ず宿も決まっていると言っていた。
もしかしたら、その時期にその宿付近に行けば……隼くんと話ができるかもしれない。
そんな思いで私は数日間の有給を貰って、春馬たちが毎年泊まりに行くと言っていたホテルに滞在している。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
何かを諦めて。
代わりに得たもの。
色部誉にとってそれは、『サンバ』という音楽で使用する打楽器、『スルド』だった。
大学進学を機に入ったサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』で、入会早々に大きな企画を成功させた誉。
かつて、心血を注ぎ、寝食を忘れて取り組んでいたバレエの世界では、一度たりとも届くことのなかった栄光。
どれだけの人に支えられていても。
コンクールの舞台上ではひとり。
ひとりで戦い、他者を押し退け、限られた席に座る。
そのような世界には適性のなかった誉は、サンバの世界で知ることになる。
誉は多くの人に支えられていることを。
多くの人が、誉のやろうとしている企画を助けに来てくれた。
成功を収めた企画の発起人という栄誉を手に入れた誉。
誉の周りには、新たに人が集まってくる。
それは、誉の世界を広げるはずだ。
広がる世界が、良いか悪いかはともかくとして。
眠れない夜の雲をくぐって
ほしのことば
恋愛
♡完結まで毎日投稿♡
女子高生のアカネと29歳社会人のウミは、とある喫茶店のバイトと常連客。
一目惚れをしてウミに思いを寄せるアカネはある日、ウミと高校生活を共にするという不思議な夢をみる。
最初はただの幸せな夢だと思っていたアカネだが、段々とそれが現実とリンクしているのではないだろうかと疑うようになる。
アカネが高校を卒業するタイミングで2人は、やっと夢で繋がっていたことを確かめ合う。夢で繋がっていた時間は、現実では初めて話す2人の距離をすぐに縮めてくれた。
現実で繋がってから2人が紡いで行く時間と思い。お互いの幸せを願い合う2人が選ぶ、切ない『ハッピーエンド』とは。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる