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昭恵さんと教室で話したとき、僕は「仮に自分が菜摘さんの一番になれなくても、自分の気持ちが菜摘さんにちゃんと届いて、それが彼女の自信や糧になればいい」って、そう言った。

そしてその気持ちは、僕が片想いをしていた頃からずっと抱いてきた気持ちだった。


それなのに……

僕の気持ちが届かないばかりに、菜摘さんは自信を失い半ば自暴自棄になっていたなんて……。

そしてその自暴自棄が、僕以外の男性に抱かれるという行為に繋がるなんて……。


自分がこれまでしてきたことが一体何だったのか、最早分からなくなってきた。


「…菜摘さんは…僕が菜摘さんを捨てないっていう確信を持てるまでは…ずっとそうやって生きていくの…?」

半分放心状態の僕の前で泣きじゃくる菜摘さんに問いかけると、彼女は顔を上げ、涙でいっぱいの目を僕に向けた。


「どうしたら菜摘さんを捨てないって…一生思い続けるって信じてくれるの?それさえ信じてくれれば、もう他の人と深い関係になったりしないんだよね?」

闇。

それはもう、真っ暗でとても深くて、抜け出す術も助け出す術も簡単には見つからない漆黒の闇だ。


僕は菜摘さんの中に、そんな闇を見た。

きっと彼女の心は、僕の知らない過去の中で何度も傷つき抉られヒビ割れてるんだ。

だけど僕は今の彼女しか見てこなかったから、それに気がつけなかったんだ…。

だから、彼女が抱える不安や闇を、こんなに近くにいながらも見つけられなかったんだ…。


考えれば考えるほど、自分を責める気持ちになる。

菜摘さんはさっきの僕の問いかけに、ゆっくりと頷いた。

「ねえ菜摘さん……。僕は、これからも菜摘さんと付き合っていきたい。ずっと大好きだし捨てようなんて思わないしむしろ何があっても離れたくないよ。だけど、今まで菜摘さんが不安に思ってたことを何も気付なかったんだよね…?知らない間に不安にさせてたんだよね?それなら…これからはそんなことがないように、菜摘さんを心から安心させるようにしていきたい。僕が本気で菜摘さんだけを好きなんだってことを、ちゃんとわかってもらいたい。だから……今菜摘さんが感じてる不安や不満を、全部僕にぶつけてよ。ちゃんと全部聞くから…。」


僕はこれまでの自分への戒めの意味も込めて、菜摘さんの心の闇を全て聞こうと思った。

だけど菜摘さんはなかなか決心できずにいるのか、しばらく黙ったまま涙を流し、鼻をすするばかりだ。

僕はまだ菜摘さんの"本当の隠し事"に気づけていないのだろうかと不安になってきた。
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