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「…まあ私が言いたいのは、隼くんはやっぱり魅力的だってこと。私以外にも隼くんに恋してる子がいるってことは、少なくとも2人からは好かれてるんだから。そうでしょう?」
菜摘さんはまるで自信を持てない子供を諭す親のように僕に話した。
菜摘さんは、僕が自分に自信を持てていないことを普段から気にかけてくれているのだろう。
こうして時々褒めてくれるのだ。
「ありがとう菜摘さん……。」
僕は菜摘さんのそういう厚意に気づきながらも、こんな無難な返事しかできなかった。
「それにしても、一体誰なんだろうね~」
公園にずっといるのが寒くなってきたため、僕たちは菜摘さんのアパートの部屋へ入ることにした。
外で芯まで冷えた体は、暖かい室内に入ると、まるで体の表面に少しずつ湯をかけられているような心地よさに包まれた。
菜摘さんが暖かいココアを出してくれて、二人で何気なくテレビを見ながらくつろいでいた時に、ふと思い出したかのように菜摘さんは呟いたのだった。
「僕には本当に心当たりがなくって……最近仲良くしてる女子もいないし、そもそも長い時間話した記憶もないし…」
「うーん。じゃあ、話さなくても遠目で隼くんを追いかけてたってことよね。」
「そうなるのかな…。」
「まあ、わからなくもないわ。隼くんは、そこまで親しくならなくても一見して優しくていい子だってことが分かるもの。」
「ええ……そんなことないよ。」
「そんなことあるの!だって、そもそもいじめられてるのだって、友達の身代わりになったのがきっかけでしょ?その経緯を知ってるなら、それだけで惚れちゃう子もいるかもしれないわよ。」
「うーん……」
「でもその子も、隼くんがいじめられてるからどうしても普段は近づけなくて…それどころか、好きなことすら周りに言えないんだろうね。だからバレンタインを上手く使って気持ちを伝えに来たんでしょう。」
長い睫毛を伏せながら、両手で包むようにして持っているマグカップを覗く菜摘さん。
彼女の言葉は、マグカップの中のココアに吸い込まれるようにして落ちていく。
そして落ちた言葉たちは、まるで甘さと円やかさによって脳を溶かされたような感覚の中に混ざり込んでいく…。
考えても答えの出ない問題が、迷宮入りするように…
この問題は、芳醇な迷路に迷い込んだような気がした。
菜摘さんはまるで自信を持てない子供を諭す親のように僕に話した。
菜摘さんは、僕が自分に自信を持てていないことを普段から気にかけてくれているのだろう。
こうして時々褒めてくれるのだ。
「ありがとう菜摘さん……。」
僕は菜摘さんのそういう厚意に気づきながらも、こんな無難な返事しかできなかった。
「それにしても、一体誰なんだろうね~」
公園にずっといるのが寒くなってきたため、僕たちは菜摘さんのアパートの部屋へ入ることにした。
外で芯まで冷えた体は、暖かい室内に入ると、まるで体の表面に少しずつ湯をかけられているような心地よさに包まれた。
菜摘さんが暖かいココアを出してくれて、二人で何気なくテレビを見ながらくつろいでいた時に、ふと思い出したかのように菜摘さんは呟いたのだった。
「僕には本当に心当たりがなくって……最近仲良くしてる女子もいないし、そもそも長い時間話した記憶もないし…」
「うーん。じゃあ、話さなくても遠目で隼くんを追いかけてたってことよね。」
「そうなるのかな…。」
「まあ、わからなくもないわ。隼くんは、そこまで親しくならなくても一見して優しくていい子だってことが分かるもの。」
「ええ……そんなことないよ。」
「そんなことあるの!だって、そもそもいじめられてるのだって、友達の身代わりになったのがきっかけでしょ?その経緯を知ってるなら、それだけで惚れちゃう子もいるかもしれないわよ。」
「うーん……」
「でもその子も、隼くんがいじめられてるからどうしても普段は近づけなくて…それどころか、好きなことすら周りに言えないんだろうね。だからバレンタインを上手く使って気持ちを伝えに来たんでしょう。」
長い睫毛を伏せながら、両手で包むようにして持っているマグカップを覗く菜摘さん。
彼女の言葉は、マグカップの中のココアに吸い込まれるようにして落ちていく。
そして落ちた言葉たちは、まるで甘さと円やかさによって脳を溶かされたような感覚の中に混ざり込んでいく…。
考えても答えの出ない問題が、迷宮入りするように…
この問題は、芳醇な迷路に迷い込んだような気がした。
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