上 下
102 / 214
13頁

11

しおりを挟む
「隼くん……すごくよかったよ……。ありがとね」

僕と菜摘さんは、大体一度ではお互いの体が満足しない。
数回に渡って共に快楽を分け合いながら、愛を感じ合うことになる。

行為が終わると僕と菜摘さんは二人向かい合うような形で体を横にして寝転ぶ。

そして仄かに色づく体の火照りを眺め合いながら、お互いに思ったことなどを囁き合うのだった。

「…僕、ちゃんとできてたかな…?」

「できてたよ!隼くんがあんなに必死になって私のことを気持ちよくさせようとしてくれてるのを見て、それだけで興奮しちゃったもの。」

「……恥ずかしい…」

「可愛いわね隼くんは。ちゃんと私が好きな触り方とか場所とかも分かってたし……それに、挿れる時のタイミングや言葉攻めも……ずるいって…」

「え…言葉攻め…?そんなこと、してた…?」

「してたよ~…まあ、自覚が無いのなら尚更萌えるわね。」

「え?」

「なんでもない!とりあえず、隼くんもやっぱり男の子なんだなーって思ったよ。」

「そりゃあ……そうだよ。」

「そうよね。それを感じられて、なんか余計に私も興奮しちゃった。」


ニコニコと悪戯っぽく笑う菜摘さん。

話の内容や表情は小悪魔のような漆黒の色気を含むのに、その目はどこか純粋な子供のように澄んでいた。

菜摘さんの言っているように、僕も自分の中に初めて認める色んな要素を見つけることができた。

僕は男としてはもちろん、一人の人間としての自信など持てたことはなかった。

だけど目の前で菜摘さんが可愛くなって、好きな気持ちが加速して、ついつい愛欲に塗れて気持ちの昂るままに彼女に触れたことは、これまでの僕には無かったと思われていた行為だった。

そしてまるで獣のように自由かつ奔放に彼女を愛し感じさせまくっている間は、僕がこれまで付き合ってきた自分とはまた別の自分に出会っていたような気がした。

菜摘さんが相談したときに提案してくれた、菜摘さんとの行為を通して自信を付けるということは、当初の期待以上に大きな効果があったように思われる。

僕は菜摘さんに対して素直になっている時の自分は、どうやら比較的好きになれているらしかった。

そして大好きな菜摘さんが僕のせいで顔をしかめ余裕を無くして快楽と愛の海に溺れたという事実は、紛れもなく僕への自信として身につき、そして菜摘さんへの気持ちがまた更に大きくなることにも繋がったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
 前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。  悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。  逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位 2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位 2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位 2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位 2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位 2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位 2024/08/14……連載開始

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

愛する人が姉を妊娠させました

杉本凪咲
恋愛
婚約破棄してほしい、そう告げたのは私の最愛の人。 彼は私の姉を妊娠させたようで……

仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

糾弾された直後に幸せになるのは 構いませんよね?だって私もう用済み悪役令嬢ですから

無味無臭(不定期更新)
恋愛
男爵令嬢リリーを虐めた罪で糾弾された公爵令嬢レジーナ。 しかしその直後に隣国の王子と結婚する。 「どうして貴女が幸せ掴んでるの?!」 焦る男爵令嬢と驚く攻略対象達にレジーナは言い放つ。 「役目を果たしたんだから幸せになっても構いませんよね?」

教師と生徒の恋愛

霧雨颯
恋愛
ある1人の生徒の願いにより新しく来た新人教師との間に始まる。素晴らしい恋のお話。

処理中です...