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「つーかさ、お前らってキスしたの?」

「えっ!!?」

「バカ!声デケえよお前」

「ごめん……だって…いきなりそんな質問…」

「いいから。したんだろ?」

「し、してないよ……」

「へぇ~。」

「???」

「だったら俺が先に菜摘さんとキスすることになりそうだな。残念でした。」

「だめ!それはだめだよ」

「じゃあお前が早くすればー?」

「………っそれは…」


実は、キスどころかそれ以上も……

村上くんにそう言って自慢したい気持ちでいっぱいになったが、こればかりはどうしても言えない…

言ってしまい、もし広まったりしたら菜摘さんの立場が危なくなることくらい僕も分かっている。

中学教師としての、大人としての立場が…

僕はここでまた、不思議な優越感と共に歯がゆさを感じた。

早く僕も大人になって、堂々と菜摘さんの彼氏であることを周りに言いたい……。

そうすれば村上くんのように菜摘さんに想いを寄せる多くの男性に対して、余裕を持って対応できるのに…。

「……確かに村上くんは僕よりずっとカッコイイし男らしいし大人っぽいけどさ。それでも僕は、菜摘さんのことを誰にも取られたくないよ……」

思わず口をついて出る言葉。

自分にどれだけ自信がないのかということを改めて実感させられる。

僕の歯がゆさの正体はきっと、年齢的な問題だけでない。

僕自身の不甲斐なさや幼さ、情けなさや自信の無さも追い打ちをかけているのだろう。


「まー確かにお前は普段からいじめられててもヘラヘラして何も言い返さねえし。自信なさそうに一人でひっそり生きてる感じするし。男気とか勇気とかそんな言葉とは真逆だけどさ。」

「う、うん……」

「けど、菜摘さんの隣にいれるくせにそんな弱気なこと言ってていいのかよ?菜摘さんが選んだお前よりも俺のほうがいいとか、絶対菜摘さんの前では言うなよ。」

「……わかってるよ……」

村上くんの言葉があまりにも鋭く突き刺さった。
一字一句が正論だからだ。

僕のこの自信のなさを、菜摘さんの前では出してはいけない。
増してや、他の男性と比べて卑下するような内容のことなんて……

「どうしたら自信…持てるようになるのかなぁ…」

僕のそんな情けない呟きは、小さな溜息と共に二人の間に響く。

それが何となく余計に恥ずかしかった。
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