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「菜摘さん……」

「ごめんね隼くん。私、だめな大人だ。隼くんのことが大好きすぎて……。隼くんのことを、考えられなくなってるわ。」

「…どうしてだめ、なんですか?」

「だって私と付き合ったりしたら、隼くんは後悔するよ。」

「そんなの……するわけないです。僕は菜摘さんが好きなんです。…一緒にいたいです…。」

「でも……隼くんはまだまだこれからでしょう?今は分からないけど…中学に入って色んな出会いが待ってるのに…私となんて…」

「それでも僕は、菜摘さんと一緒になりたいです。中学生になろうが、その気持ちは変わらないです。」

「隼くん………」

「むしろ……僕の方こそ、菜摘さんにとっては子供ですよ。だから釣り合ってないのは分かってます。でも…」

「そんなことない。そんなことないわ…!隼くんは、私が今までで一番好きになったひと。」

「菜摘さん……」

「ほんとに後悔しない?」

「しないです!菜摘さんとお付き合いできたら、僕はとても幸せです。」

「私も…。隼くんの彼女になれたら、本当に嬉しい。」

「じゃあ……僕の彼女になって下さい。大好きです。菜摘さん…僕と、付き合って欲しいです。」

「隼くん……私も、隼くんの彼女になりたい。大好きよ隼くん…!」


菜摘さんの言葉を全部聞く前に、今度は僕の方から菜摘さんに抱きついた。

それはさっきまでの二度の抱擁どちらとも意味の違う、愛し合う者同士の行為。

手繰り合う体温は確かなのに、心はまだどこか夢のようだった。

フワフワと浮足立つ感覚とクラクラするような脳天の痺れが、成就した僕の気持ちが現実であることを思わせる唯一かつ皮肉な結果だった。



こうして25歳の菜摘さんと、11歳になりたての僕との恋愛が始まった。
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