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わざと3

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……何だ?」

俺は隼にしか聞こえないように小さな声で言う。


コンコン!


再びノックが聞こえる。


「はーい」

俺はベッドの上から返事をする。


「お前らもうとっくに夕食の時間が過ぎてるぞ。何をしている」

「五郎っ!」


ドアの外から聞こえる声に隼は驚いたように声を発する。

五郎は俺と隼のチームメイトかつクラスメイトで、俺の幼馴染の男でもある。


「ああすまない。すぐに行くから先に行っててくれ」


俺はまだベッドの上から動かず、ドアへ向かって言う。


「早くするんだぞ。全く……」

五郎はそう言いながら、ドアの前から離れ、廊下を歩く足音が聞こえた。


「………聞こえてたかな…?」

隼は焦ったように俺に尋ねる。

「ベッドからドアまでは割と距離があるし、壁もそこまで薄くはないだろう。」

「そうかな…」

「まあ仮に聞こえていたとしても、五郎は何も言うまい。気にするな」


五郎は幼馴染だから、俺の隼に対する気持ちを昔から知っている。


「そっか……とりあえず早く行かないとね」


隼は起き上がり、脱ぎ捨てられた下着とズボンを履く。

俺も自分の服を着る。



あと少しだったのに………

ふとそう思いながら、ノックが聞こえた途端驚きのあまり縮んでしまった自分のモノを見て溜息をつく。


隼は先程俺が口つけてしまった自分のペットボトルの水を一口飲み、鏡で自分の姿を確認し、ドアへと向かう。


隼は2年生の中でもリーダー的な立場だ。
恐らく来年、部のキャプテンになるだろう。

その自覚はこいつも常にある。

そんな自分が決められている夕食の時間に遅れるということにかなり焦っているようだ。

最早完全に意識が切り替えられている。


「隼、悪かったな俺のせいで」


俺は隼にそう声かけながら二人で部屋を出てエレベーターに向かう。


「優のせいじゃないよ!?俺も時間を忘れてああなっちゃってたから……」

さっきまでの自分を思い出したのか、隼は少し恥ずかしそうに笑う。

エレベーターに乗り込み二人きりの空間になった時、俺は思わず隼のトレーナーから覗くキスマークに目が行った。

ギリギリ見えないが…気づかれれば厄介だな


そんなことを思いつつも、自分が付けたその痕に少し興奮したのは言うまでもない。



隼はこの痕のことなど忘れたかのように普通にしている。


普段はこいつのリーダーとしての心構えはとても頼もしいが、こういう時は少し寂しいものだな……

そう思いながら夕食会場に付くと、既に皆夕飯を食べていた。
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